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一滴の波紋【原文】・1巻の1  作者: 藤田幸人(ペンネーム)
25/41

ある日の日記・25

二十五


【九月八日】



 これから病院へ行こうと思ったが保険証がない。


もし、会社の人が持っているというんだったら、もとの所に返しておいてくれるようにお願いします。


 とにかく、一度行かなければならないから。


・ ・ ・ ・ ・ ・


 ここまで来て、まだ俺の方から来なければならないのだろうか!?‥


 本当に居場所さえハッキリ分かっていれば、行くのはたやすいことなのに。


それが分からず・・・


“本当に分からないんだよ!! ”


それでそれが出来ず、皆からまた気が小さいなどというふうに誤解を受けている。


 確かに、会話が時々聴こえてきて、居るのではないかと思うのだが…? 


本当に分からない!? 


 昨日は、俺が戸をたたいた時に、確かに居たと思うのだが・・・


君は開けなかったと言うし、


本当に俺は自分を肯定したいために、このように同じことを何度も言い訳しているのではない。


本当に居場所さえハッキリ分かっていれば、今すぐにでも行きたい気持ちなのに、


もしこのまま、俺が行かなかったら、どういう事になるのだろうか?


君の方から言ってくれるのだろうか? 


それとも人の手によって、言ってくれるのだろうか? 


それともこのまま、この状態がづっと続くのだろうか? 


ここまで来て、まだこれ以上、このようなことが必要なのだろうか?


もうしばらくは良いと思うが、もういつまでもこのような事を繰り返していることは、無意味になってくるし、


本当に所帯を持つ気があるんだったら、田舎の兄貴達に連絡して、資金面、その他の事を相談しなければならないし、


とにかく、もう早くけじめをつけてほしい。


意を決して欲しい!? 


もう自分の方には何の迷いもない! 


ただ、君が来てスタートをすることだけを思っている! 



 僕が、君に対して不満を持っていることが一つある。


前にもさいさん言ったように、君には人情味がないのではないか?‥ ということである。


弱い者の苦しみ、弱さを思いやる心があるかということだ!


彼の場合、どうも男らしい、強いということをはきちがえているようだ。


いや! 


確かにそれらは男にとって必要なことかもしれない。


これで、彼が言っているように、僕が気が小さいと思ってもかまわないが


何も、強いということは、相手を倒せたら良いという事ではない。


僕は生来、物心ついた頃から、人を倒すということは考えもおよばなかったし、(相手の事を思いやって)


そのすべをまったく知らない。


相手を倒したところで、それで自分が強くなる訳でもないし、


たとえそれで、はばをきかせることになれようとも、上には上が居るし、とてもおっつけるものではない。


僕は、今、このような世界にとどまっているけれども、自分の血筋は、まったくこの世界には合わない。


似ても似つかぬ世界から生まれてきたのです。


 君は、僕の兄貴達の素性を知っていますか!?・・・


彼等は決して真の悪人ではないと思う。


幅広く恵まれた娯楽、レジャー(パチンコ、スマートボール、その他)を経営していた父が、良すぎる人間性の為に、友達からだまされて、一瞬の内に無一文になってしまった。

※友達の連帯保証人になった為に、経営が破綻してしまった。


 僕が生まれる頃まで、父の経営もうまくいっていて裕福な家庭であったのです。


その中で、坊っちゃん、坊っちゃんと周囲の人達からはやしたてられ、ぬくぬくと育てられていた子供が、一瞬の内に貧乏のドン底に叩き落とされた時に、どのような事になるか?‥

君達に想像がつくだろうか?‥


また、母の方も君のように美しくて、なよなよしく、苦労というものを知りませんでした。


その手で、父が立ち直ろうとしている間に、母は五人の子供を一人で養っていかなければならなくなったのです。


とてもまともな暮らしは出来るわけがありません。


【お断り】

あまり言葉も知りませんし、詳しく書いているのも根気がいりますので 簡単に書いていきたいと思います。

※ここは当時の、ささやく相手に言っているものですが、あわせて現在の読者様にも、お断りしたいことでもありますので、よろしくお願いします。




 父は、六尺男と言われるくらいにがらが大きく腕力もたけて、男の世界では、おしもおされもせぬ親分格だったのです。


僕を除いて、他の兄貴達も父に似て柄が大きく、怖い人達ばかりなのです。


僕だけどうして、このように女の腐ったような態度をとっているかというと‥‥


イヤ! 自分も彼等と同じ血を持っているのです。


 それが自分と彼等と、どうしてこのように違ったのかというと、


やはり世間の冷たさ、苦しさを受ける度合いが、極端に違いすぎたからだと思います。


もし僕が、彼等と同じ仕打ちを味わっていたなら、こんなメメシイ自分にはならなかったと思うのですが。


 イヤ‥、このことは後に記しますが、


メメシイ姿をしているようで、実は真の人間としての強さ、大切さを、兄貴達の生き方、姿から知らされたのです。

 この先、どのように書いていこうか‥‥? 


このまま、この筋を続けていくか? 


それとも、お袋の苦労話しでもしようか? 


 しかし、まあ、話しは飛び飛びになってもかまわないではないか。


ひとまず、お袋のことは置いといて‥‥


真の男の世界の事でも書いてみたいと思います。


 そのような状態に叩き落とされて、兄貴達は一瞬の内にまったく世間の人達から受ける感じが違ったのです。


お袋の手一つなので、収入の方はごくわずかなもので、


したがって、三度三度の食事にもまともにありつけません。


メシがある時にはおかずがない。


おかずがある時には、飯がないというくらいで、随分とひもじい(空腹な)思いをしてきたのです。


またメシといっても、いい時で、ムギに少量の白米を混ぜたものや、


またイモを混ぜたメシ、


それがない時には、安いウドン粉(小麦粉)をねってダゴ汁を作って、


それで食事を済ませなければなりません。


またそのようなメシがあっても、おかずといえば、ダイコンの葉を漬けたオコモジだけとか、


悪いときには味噌みそに砂糖をまぜたものだけとか、


塩をふりかけて事を済ます有り様です。





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