ある日の日記・2
2
ここに彼女に宛てた?…と思われる手紙の下書きなるものが残っているので、それを転載する。
当時の状態や、彼女への思いなどがジンワリとにじみ出てくるかもしれないので。
文章がかなり長いので、面白くない人は飛ばし読みしても構わない!
たいした事は書いていないので。
・・・・・・・・・
【手紙】
とにかく書いていくしかないんです!
何かを解決せんが為に・・・・
何かにふんぎりをつけんが為に、とにかく書いていくしかないのです……
男児として最も恥ずべき最低の方法だと解っていながら
それでもその方法にすがらずには解決出来そうもない
現在の重い苦悩を自覚して
とにかく打ち明けるしかありません。
今の自分の心は、みじめな敗北者の思いで一杯です。
ただ一つ、言葉や態度で打ち明けることが出来たなら、
こんな手間のかかる仕事もしなくて済むでしょうに!
それをする勇気もありません。
ただ、今となっては、つのる貴女への思いに屈服してどのような恥をもしのぐ覚悟でおります。
どうかこの悩める子羊の為に、貴女の許せる最大の思いやりと、
ご慈悲をもって、この一凡夫の苦悩を解決せんが為にご協力下さい!
思えば貴女が僕の心にすみつくようになったのは、
すみつくと言ったら悪い言い方だけど、この際、勘弁して下さい!
昨年の暮れ頃でした。
それまでは、ただうちの会社に居るのにはもったいないくらいのいい感じをした女性だなぁ~というだけの存在でしかありませんでした。
それが現在の狂おしいほどの思いにまで発展した事については、
それを説明するのに遠回り的に、
まず貴女とは全然別の女性の事について語らなければなりません。
身勝手な事ですが……
その女性は僕を暗黒の世界から、まっとうな世界へ引きづり上げてくれた貴重な存在でした。
彼女なしには現在の自分は存在しなかった事でしょう!
その彼女に出会うまでの僕の生活といったら、すでに終わりを告げた人生の敗北者のごとく、
酒に酔いしれ、苦悩と絶望を忘れんが為にと、
乱れ果てた生活でした。
日払いアルバイト、週払いアルバイト、新聞配達などといった
まっとうな職にも就かず、
肩身のせまい思いをしながらも、それからのわずかな収入を飲み代にかえて
世間から白い目で見られ、何の希望も目的もない生活を繰り返していました。
そうしなければ、とても傷ついた自分の心を癒すことが出来なかったからです。
自分を産み育ててくれたお袋の恩もかえりみずに………
こんな言い方をすれば貴女はきっとビックリなさるでしょう。
まだそんなに若々しくて、これからが前途洋々に人生を我が物顔にと凱歌すべき若者の言う言葉ではないと…
しかしそれほどまでに落ち込むのには、それなりに
その落ち込んだ深さ以上に、高い希望と理想を追っていた時期があったからです。
それらが微塵もなく崩れ去った時、僕は途方にくれました。
同じ時期に同じ世代の若者達が、青春を我が物顔にと発散している美しい姿をよそ目に、
僕は深い絶望と挫折感にうちひしがれていました。
そこは暗い暗い想像もつかない世界でした。
今思えばまるで悪夢をみているかのようです……
それらの一つ一つは紙面の都合上省略しますが
とにかくそんなに苦しむほどまでに、僕は人生とゆうものを
人が生きること…
生きていること…
死ぬこと…
果ては性にまつわることまで、
真剣すぎるほど真剣に考えてきました。
元来がそういった性分なので、これからも一生つきまとって、それらの苦しみから逃れられないと思いますが。
とにかく、そういった真っ暗な世界をさ迷い歩いていた時に、かすかに光明の小粒が前方に見えました。
その光のもとに突き進んでいけば、きっとこの暗黒の世界から脱け出せる扉が見つかると思わんばかりに…
突き進んで行きました。
つまりその時の自分の身柄も考えずに、彼女に恋心を抱いてしまったのです。