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一滴の波紋【原文】・1巻の1  作者: 藤田幸人(ペンネーム)
13/41

ある日の日記・13

   13


【8月30日】つづき



このままで、そのような結果で終わらせている方が、僕にとってはまことに都合がいいことばかりなんですが、そうもいきません。



声→『なんという奴だ。 恐ろしい奴だなぁ。 とんでもない奴をしょいこんだもんだ!』


‥などと、僕への評価は高まっていることと思います?


また、『藤田さんは、かわいいとゆうことを鼻にかけるような人じゃないわ。 あくまで弱い者の味方よ。 かえってモタイさんの方が鼻にかけてるわ』


‥と、これも自分にとっては都合の良いことです。



アァ~‥‥時間が経ってしまいます。


本当に今日は飲みに行こうと思っていたのに、これじゃ行けないよ!


もし彼女が来ていて、読んでいないものだったら、まったく馬鹿げたことをしているものだと思います。


しかしここまで書いた以上、最後まで書き終わるしかありません。


こう御期待を!




本当に一度会ってくれて、話をしてくれさえすれば自分の気持ちもサッパリして踏ん切りがつくというのに、まだその望みは叶えられません。


それで仕方なくこういうことをするしかないのです。


どこに居るんだろうと思いますが、僕にはそれを突き止める気になれませんし


また、もう呼び出しをする気も今はなくなっています。


また気が変わって、ズウズウしくノロ~リと行くかもしれませんが、今はなし。


それで、もう君の方から来るしかないのです!


または手紙ででもいいし、(それがなければ、もうこれで終わりになるものと思います)

とにかくまだ踏ん切りがつかないのです。


これを片付けなければ、身動きも出来ないのです。


どの道を進むことになろうとも、この事をハッキリさせなければならないのです!




僕の気持ちも不思議な程コロッコロッと変わります。


昨日は正真正銘、本当にその気持ちだけしかなかったのです。


昨日書いたことは嘘偽りのない、ありのままの気持ちだったのです。


何の企ても計算もないことです。


とにかく昨日までの自分の気持ちはウソ偽りのないものなんです。


しかし今はそれに一つ加わるものが出来ました。


つまり皆のうわさどうりに、サチ子とゆう娘と同棲でもするかということ。


先に断っておきますが、まだ彼女とは何の関係も結んでいないことです。


ただ彼女が僕のことを好きで一所に暮らしたいと思い詰めているようだから‥※(ボクの妄想の範囲でのことです、笑っ)


君とダメだったら、そうでもしてみようかなとゆう程度の気持ちなんです。


昨日と今日とで、コロッと気持ちが変わった点は、君とダメだったら100% 田舎へ帰るつもりでいました。


僕には、このような所で仕事をバリバリやって出世することも、安泰になることも、今の自分の心を満たしてくれるものの何の助けにもならないということが分かっているからです。


しかし、もし、君がそれを望めば、それをやることもいとわない事だと思っていました。


今の自分には、少しくらい力はありますが、まだまだ足りません。


君一人さえも自分一人の力で獲得出来ないくらいの自分です。


他の面でも力およばない事が一杯あります。

しかし僕には可能性があるのです。


まだ身は熟していないのです。


今からいくらでも力をつけていくことも出来ますし、大きくなることもできる器をぞうしているものと確信しています。


もしここで君を失うことになろうとも、その悲しみを乗り越えて、もっと大きくなって


自分一人の力で、彼女の一人もものに出来るほどに大きく成長している時が必ず来るものと思います。


本当はうぬぼれていることかもしれませんが


今ここで君を失った方が、かえって自分を強く成長させることが出来るのかもしれません。


しかしまだ簡単には諦めきれないのです。


僕には実際の所、もし君と一緒になっても今すぐに生計を立てていける資金がないのです。


月賦と飲み代の借金を返済したら、また今後1ヶ月間は細々と暮らしていかなければならない有り様なんです。


だから事が決してから準備していかなければならないことで、その間は当分交際という形で通すしかないのです。


しかしもしどうしてもという事にでもなれば、田舎の兄貴達に援助をこうて資金の準備を整えることは出来ますが、それは成り行きしだいです。



昼間の事に戻ります。


君が僕を振ったので、他の人が『藤田、腹をたててるぞと言ってやれ』と伝言があったことと思います。


僕の方は、さして腹を立ててはいませんでしたが、それで君は『あの人が腹を立てても、チッとも怖くないわ』


というのを聞いてから

『あのやろう、俺のことをなめてかかってるな』と思い、チョッと脅かしてやろうかなという気にもなりました。


やろうと思えば君をメチャクチャにイタメつける手段は、いくらでもあるのです。


自分の力ででも、またはママさんや、その店の娘達を使ってでも。


しかしそんな卑怯なことはしたくありません。


また、話はもとに戻ります。


その後、また君は気が変わって、僕を好きになったと言い出したと思います。


そしてエレベーターの中で、浅田さんに引っ張り出されようとしたと思います。※(この時は、偶然にもエレベーターの中で彼女と鉢合わせになりました。)



しかし君は出て来なかったし、僕の方でもその時は最終的な結論のままですませておこうと思い決めている時でしたから


『今さら来たって、もう遅いよ』と、相手にしない素振りをしてしまいました。


もしその時、僕の方から出向いて意を告げていたなら、また違った出来事が起こったかもしれません。


今頃、こんなに辛い気持ちで日記をつけていることもなく、意をとげてサッパリした気分でいられたかもしれません。


しかし、そこが人生の魔術の不思議な所なんですね。


人生なんて自分の思い通りには、なかなかいかないものてす。



もう君はまた気分が変わりつつあるような気がします。


ここまで書いてきたら、白けた気持ちにもなるだろうと思うから。


しかしそれも仕方のないことなんです。僕にはウソをつくことが一番嫌いな性分ですから。


前にも言ったように、相手を選ぶのは君の意思の自由なんです。


本当は、男たるもの自分が好きであったらどんなことをしてでも強引にものにすべきものなんですが


生来せいらい、自分には欲を出すということに欠けているようですので、相手がそうなんじゃしょうがないじゃないかと、すぐに諦めの気持ちになってしまいます。


今までも、その性格の悪さでどれ程の損と恥と苦しみを受けてきたかしれません。


しかし反面それによる懐かしい思い出、自己満足、プライド、信念というものも強くかたまってもきましたが。


その性格で、ある事に関してはものすごく神経質なほど気を使う(思い詰める)面もあります。


それが済んだらアザヤかにサッパリとした気分にもなれる楽天的な性格も生まれてくるのです。


今は君の事で思い詰めていますから、まったく気分がすぐれず沈んでいます。


もしこれの決着がついたら、アザヤカに変身することができるのに……


などと自己肯定をしてしまいます。


本当はサッパリした気分になっても、さほどそれを表にあらわさない静かな自分なんです。


それがどんなに良いか(それとも人によっては悪いか)は、実際自分のそばに来てみなければ分からないことなんです。


もしママさんから、自分の事を少しでも聞いているとしたら、その事が分かるものと思います。


アァ~っ!! 飲みに行きたい!


皆の顔を見たい!


しかし君は『今日、飲みにいかなかったら、付き合ってもいいわ』と言ったみたいな感じを受けましたので


まぁ、とにかく日記を書き始めたのです。


しかしやっぱり寂しいなぁ…。


行くべき日に行けないなんてことが、こんなにも辛いものだとは思わなかった。


すべて君がいけないのだ!


このような無駄な仕事を僕に押し付けるもんだから、どうしても君を諦めることができない以上‥



しかし本当に君はここに来ているんだろうか?


そうでなく、全て妄想だとしたら、もういよいよ僕は病院にでも入らなければならない。


精神の異常をきたしていると思います。


いい加減に姿を現してくれ!


そんなことでもないと、本当に僕はそう思い込み、田舎へ帰って気を休めなければならないはめになってしまう。


もう今日は遅いし、いつでもいいから、その存在を少しでもいいから、その存在の少しでも示してほしい!


・・・・・・・・・

田舎へ帰ることは当分よして、とにかく今度のボーナスまで居るようになるかもしれません。


君とダメになったら、本当にサチ子って娘と同棲することになるかもしれません。


そのようなことをするのは、もし君とのことがダメだったら、この会社でやる全ての望みが消え失せるからです。


それで今、田舎へ帰ったら何の意味もないし、女でも知ってから帰ってもいいかなと思うからです。


ボーナスまで何にもしないで過ごすのも無意味な事ですから……。


同棲というのはあまり良い評価はされませんが、キチンと所帯を持ちたいという娘がいない以上、それをするのも仕方のないことだと思います。




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