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一滴の波紋【原文】・1巻の1  作者: 藤田幸人(ペンネーム)
12/41

ある日の日記・12

    12


【8月30日】



【 独り言】


俺の超能力とやらも、あてにならないものだ。


声はすれども姿が見えぬ。


透視能力とやらはないゆえに、君がどこに居るのか分からない。


まだ、ここに居るのだろうか?


そして、このふみを読んでいるのだろうか?



勝手に、幻聴かも分からないものをうのみにして、君の事について色々思いめぐらしてきた。


もう余裕がないので、ありのままをザックバランに喋ります。



これを言ったら、たいそう白ける事となりますが、もう仕方がありません。


とにかく疲れます。



周囲の出来事に全精神を集中していることは、そうしなければ超能力とやらは生まれてこないのです。


もう、こんなに疲れる事はしたくありません。


もし君に、何の関心もなければ、こういう事はする必要もないし、まったく馬鹿げたことだと思います。



今日、会社においては、最終的な結果が出たことになっています。


午前中に…、ある一つの…、僕にとっては辛い評判がたちました。


昨日書いておいた日記のことで。


ママさんが来て援助をしたこと…、それによって本当の僕はやはりおもしろくて、朗らかな人間であるということを知ったことと思います。


しかしその後がいけません。


声→『あいつはママさんと両戦線をくんでやがる、卑怯な奴だ!』


『本当に好きなら自分一人の力でやるはづだ』


『あれじゃ一緒になったって、やっていけるはづがないよ!』


『ママさんが来ることを知っててやってたんだ』



‥と、そのうわさを聞いた時に、僕は血の気がサッとひいてしまいました…気が抜けてしまいました。


俺はママさんが来ることなど予定に入れてなかったし、この日記だけで充分最後の結果が出せるものと思っていたのです。


その後はしばらく絶望の悲しみにひたっていました。


「もうダメだ、これで全てが終わったんだ」と、苦しく思い詰めました。


しかし僕には()()()()があります。


すぐにその弱い気持ちは乗り越えることができました!


「そんならしめしてみようじゃないか、俺がうまく出来ないかどうか!? うまくやってその悪評を吹き飛ばしてやる!」と思いました。


「俺にそんなことが出来ないだと! 馬鹿にするな!」と憮然となりました。


しかし半面「イヤ!この罠にはまってしまったら、俺は意地でもこの会社の奴等を見返すために全力を出してやっていかなければいけないし、一生この会社にしばられることになる。 それも窮屈だ!」


「しかしここまで来た以上、とにかく話し合って片付けなければならない」と思い、会社に行くことの決心をかためていました。



そしてその決戦の時刻はやって来ました。


今思えば、食事前にあそこに居ることさえなければ、うまく会えたのかもしれません。


しかしその時、僕は素通りしてしまいました。


後で考えたら、まさか外に出るためにあそこに居たなんて思ってもいませんでした。


食事をすませてから会いに行こうと思っていましたから!


そして扉をたたいて呼び出しをしました。


しかし君はいないというし、いったいどうなってるんだろうと、唖然となってしまいました。


もう今日、会わなければ、どうしようもなくなると思い、とにかく、その時まで信じていた“関谷さんと連絡があるものと思い”(食事の用意、掃除をしてくれている寮のおばさん )※この日記の存在を女の子に教えたと思い込んでいる人。



もう真相をハッキリさせるしかないので、相談しに行きました。


しかしそれはまったく予想もしない事になりました。


関谷さんは何にもこの事を知っていなかったのです。


もしここに来ているとしたら、管理人に断っておかなければならないし、それがないということは、今までここに来ていたということは、まったくの自分勝手な妄想だったのかと、さっぱり分からなくなりました。



もしかしたら今までの事も全て妄想だったんじゃないかと、途方に暮れました。


まさか今までの事が全て妄想だったなんて、そんな馬鹿なはづはない。


もしそうだとしたら、えらいことだと思いました。


「こりゃ~ 病院行きでもしなければならなくなるぞ!」


妄想ばかり抱いていたので、気が狂っているんじゃないかと思いました。


やはりこんなせせこましい東京に居るから、何の楽しみもなく 妄想にふけって気がおかしくなるんだ!。


田舎へ帰って気を休める必要があると思いました。


その時までのことは、これで終わり――




午後になると、またその結果のことで話題にのぼっている感じを受けました。


声→『藤田、ふられたんだ。 かわいそうに』


『逃げるなんて卑怯だよなぁ~』


『藤田、田舎へ帰るかもしれないだって』


『分からない?』


『あんなに良い奴なのに、どうしてあんなに嫌うんだ』


上川 『あいつは可愛いということを鼻にかけてるんだ!早く田舎へ帰れ!』



‥その後、しばらく静かになりました。


そして僕にとって天の助けともいうべき、最終的な結果が導き出されました。



『違うのよ!藤田さんは芝居を打ってきたのよ。モタイさんがあんまりのぼせあがっているので、それに腹をたてて、モタイさんの化けの皮をはごうとしていたのよ。これでモタイさんにも彼氏がいて出来ているということが分って、もう今までのように良い気になっていられなくなったわ。』


『藤田さんも、もう他の娘達から相手にされなくなったけど、藤田さんには他に彼女がいるのよ。サチ子って娘と同棲するんだって。これで藤田さんも気がねなく一緒になれる。なったって悲しむ娘もいなくなってるし、全て藤田さんの筋書きどうりになったのよ。完璧な筋書きね』

※サチ子というのは、ママさんの所でアルバイトしている娘です。当時はそこまで発展していませんでした。その後も発展していません。



それを聞くと、そう言えば本当はそうだったのかもしれないなと思いました。


とにかくやっている内は(僕)本人にもその意図がハッキリ分からないのですから。


今までのことも、全てそういうふうにして結果が生まれて来ましたし、本当にそうだったのかもしれないなと思い込みました。


それから、そういうことにしておくのも良いなと思い、そのような振る舞いをして来ました。


いかにもやる気充分で本当にその目的でやってきて、その筋書きどうりにいって満足だといわんばかりに安らかな顔をして……





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