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9   異常なのは……?

誠二に引っ張られて来た、男の心情からの始まりです。

 こいつは一体何なんだ?

一体なぜ俺を車から連れ出して猛ダッシュしているんだ?


「おい、お前何考えてるんだ? 泥棒か!?」

「……」


 無視!? 図星なのか!? 問いかけても何も答えてくれないなんて……。

というか、足が速すぎる! 俺の足が付いていけない……ぬぁ!? つまずいた! こける! 


 ドザッ


 ぬあぁぁぁぁ!!?? 痛ぇぇぇぇぇぇ!!

引きずってる! 引きずってるって!!

 こけても尚、この男は俺のことを引きずっていく。本当に痛いんだけど!?


「ち、ちょっと待って……、こけたから、引きずってるから!!」


 止まってくれぇぇぇぇ!! 


「……」


 また無視ぃぃぃ!? 俺、こんなに頑張ってるのに、こんなに頑張って叫んでるのに!! 俺の魂の叫びを聞いてくれ!!!!


「ちょっと待ってって!! 本当頼むから止まってくれぇぇぇぇ!!!」

「今は余裕がねぇんだよ! 我慢してくれ!」


 やっと返事を返してくれた!!! って、え? 嘘だろ!? いんの? こんなヤツ?

引っ張ってるヤツがこけても引きずって走り続けるヤツなんて……。しかも、何の余裕が無いんだよ? え? これってもしかして誘拐? え? 俺、もう既に22歳だよ? 

えぇ!? ありえないよ! なんでこの歳で誘拐!? カッコ悪すぎるよ!!!!

あと、この人の声、ガラガラで恐いよ!!!


「この、人でなしぃぃぃぃ!!!」


 ここまで言っても止まってくれない……、俺の魂の叫びは、残念ながらこの男には届かなかったようだ。


 つか、マジ痛ぇ!! あ! 俺のジーパン破けてる!!

あぁ、俺ジーパン2本しか持ってねぇのに……、買いに行かねえと、うああああぁぁぁぁ!!! ここ、ギザギザの石がいっぱい落ちてるぅうぅうぅうぅ……


「よし! 着いた!」


 あ、止まった。よかったぁ、本当よかったぁ。悪夢のようだった……。

俺は足全体をさすりながら起き上がる。あぁ、生きているって素晴らしいな!  


 コンコン、コンコン


「……」


 男が窓を叩いてるけど、中の奴らは気づいていない。なにやら爆笑しているようだ。

なにがそんなに可笑しいんだ? 俺なんてこんなに痛いのに……。


「兄貴のヤツ、何やってんだよ!?」


 ゴンゴン、ゴンゴン


「……」


 男はちょっと怒りながら窓を叩いている。

 少し強い力で叩いたようだ。手が痛そう……。しかも、男の顔がさらに恐くなってきている。


「ああ!! もう、何してんだよ!?? 俺もう限界に近づきつつあるよ!! どうしてくれんだ!?」


 ガンガンガンガン


 こ、恐い! まさに鬼の形相だ!!

何がそんなに不満なんだ、って、あ! ドアが開かないことか。

 男の顔にビビッてか、中の奴らはやっと気づいて慌ててロックを解いた。


「おう、誠二! お疲れ! どうした? そんな恐い顔して?」


 全く恐がってない!!

どういうことだ? 中の男は全然恐がってない! 俺的に、目の前にいるだけホラーよりも恐いんだが……。


「なんでもいいだろ!! それよかお前、早く乗れよ!! 余裕がねぇんだって!!」


 ああ、なんか矛先がこっちに向いてきた!!


「早く!!」

「お、おう」


 恐ぇよぉ……。乗るのヤダ。

でも、そんなことを言ったら何されるかわからない!

そう思わせるほどに、男の顔は恐かった。


 そして俺は車に乗り込んだ。男も前の助手席に乗った。


 よかったぁ、本当に、よかった。

隣に来たらどうしよう、と内心恐かったんだよなぁ……。


 ブロロロロロロロロ・・・・・・


 車が出た。俺は一体どこに連れて行かれるんだろう……。本当に誘拐なの? 身代金要求されるの!? えぇ〜? 絶望だ……。


「なぁ、あんたは誰っすか?」


 ん、妙に敬語だなぁ。それに、車の中をよく見てみると、助手席の男以外、あんまり恐くない。もしかしたら誘拐のつもりじゃないのかも……。


「……、なんで何も言わねぇんっすか? あ、そうか。人に名を尋ねるときは、まず自分から名乗りましょうっていう言葉があるっすもんね。俺は朝河宗也(あさかわそうや)っす。あんたは?」


 おぉ、礼儀正しい。俺はただ、この現状が恐かっただけなんだが……。でも、この青年の反応からして、やっぱり誘拐じゃないのか!


「俺は、原田政俊(はらだまさとし)だ。その、訊きたい事があるんだが……」

「へ? なんすか?」

「なんで、俺をこの車に乗せたんだ?」

「……」


 なぜ何も応えないんだ!?


 沈黙が、俺と朝河を包む。つか、この変な沈黙嫌だ!!



「おい?」


 堪らず俺は、もう一度答えを促した。


「……さぁ?」

「へ?」


 『さぁ』? どういう意味の言葉なんだ? え? もしかして、わからないって言う意味!? まっさか〜!!


「は、はは……、俺にもわからねぇっす……へへッ」


 へへッって……、え!? 嘘!? い、意味がわからない……。


「礼一? なんで誠二先輩は原田さんを連れてきたんだ?」

「え? …………ハハッ」


 横に座っている朝河は、運転席の男に問いかけるが、運転席の男は笑ってごまかしてしまった。 

 なんでこの2人は誤魔化しでこんなに笑うんだ?


「……礼一、もしかして、意味わからないのに適当に誠二先輩に合わせてたのか?」

「……合わせるっつーか、誠二を信じてたんだよ。まぁ、隣にいるんだから、本人に訊いたらいいだろ?」


 一体どういう状況だったら俺を連れて行こう、てことになるんだよ!? 想像つかねぇよ!!


「だって、なんか恐ぇし……」


 やっぱり朝河ってヤツも恐いんだな!? 俺も同感だ!! 



「何がそんなに恐いんだよ!? 俺のどこが!?」


 助手席の男が訊いてくるが、そんなのわかりきっているだろう?


「顔だ」


 と運転席の男。まぁ、それも同感だけどな。


「顔でしょう」


 と朝河という男。いや、そうなんだけど、それだけじゃないだろう?

俺は自信を持って言うぞ!! なんせ、おそらくこれは犯罪に巻き込まれてるわけじゃないみたいだしな!!


「顔と行動!!」


 やっぱり一番恐いのは行動だろう!!

だって、引きずられたし……。止まってくれなかったし……。


「……誠二、初対面の人に行動が恐いって言われるなんて、お前一体何したんだ?」

「へ? ……何だろう? ……う〜ん、わからねぇ」

「わからないだって!? 散々人のことを引きずっておいて!?」


 信じられない……。あんなに酷いことをしておいて忘れるなんて……。


「あぁ、そのことか! 悪かったよ、俺も無我夢中だったんだ」

「な、なんでそんなに無我夢中だったんだ?」


 何がアンタをそんなに切羽詰らせたんだ!?



「あと、俺からも質問! 何でそんなに声がガラガラなんだ?」

「あ! それ俺も気になってたっす! 何でなんすか?」


 ほう、声もガラガラで本当に恐いな、と思っていたんだが、この2人のリアクションからして、普段はもっといい声なんだな?


「そんなの、笑いすぎて声が嗄れたに決まってるだろ? なんでそんなこと訊くんだ?」


 そんな理由で声がガラガラだったのか!? いや、そんな、常識のように言われても……。俺は笑って声を嗄らす人をはじめて見たよ? 


「マジっすか!? 笑いすぎて声が嗄れるなんて……、信じらんねぇ……」


 よかったぁ。朝河も俺と同じ意見のようだ。もしかして、俺だけがおかしいのかと思ってしまった。


「また笑いすぎて声が嗄れたのか? はぁ、全く、お前の笑い上戸にはいつも驚かされるよ」

「また!? またって、いつも誠二先輩は笑って声を嗄らしてるんすか!?」

「普通だろ?」

「……」


 いや、絶対普通じゃないだろう……。運転席の人も、少しは驚こうよ。その反応、どうみても驚いてないよ? それは呆れたって言うんだよ?


「そ、そんなことより!! なぜ、お前はそんなに無我夢中だったんだ?」


 いかんいかん。このままだったら俺の質問がスルーになるところだった……。


「なぜって、そりゃあれ以上あの場にいれば、みんなつられて笑っちまって声が嗄れて、明日声がでなくなるだろ?」

「……」


 それはお前だけだろう……。

面と向かって言うのは恐いから言わないが。


「それはお前だけだろう。そればっかりはお前を信じない! 俺は20年間生きてきて、笑って声を嗄らしたってヤツは見たことがない!!」


 おお! 運転席の男、よくぞ言ってくれた!! 勇気があるヤツだな!!


「そうっすよ! そんなヤツ、俺見たことないっすから!! しかも、笑うとこ可笑しすぎるでしょう、笑いのツボがズレてるっす!!」


 おお!! 朝河も勇気があるじゃないか!! しかも、笑いのツボの指摘までするなんて……。


 にしても、酷い言われようだ……。でも、2人とも本当に正論だな。


「お前ら……、見たことない見たことないって言ってるけど、目の前にいるだろ!? 現実を受け止めろよ!!」

「お、俺の目の前には、……窓しかないモンッ」

「兄貴が『モンッ』とか似合わねぇ、つーかキモい。やっべぇ、吐き気してきた……、おぇ」


 いや、確かに、確かに運転席の男に『モンッ』は似合わない。それは認めよう。だが、吐き気は流石に酷いと思う。


「先輩、酷すぎっすよ……」

「いや、マジで気持ち悪い、悪い、ちょっと車を止めてくれ。」

「オレハ ソンナニ キモチ ワルカッタノカ……」


 何故突然そんなに片言になるんだ? 何があったんだ? アンタの悲しみは舌に来るのか!? そんな人は見たこと無いよ!!!


 あぁ、なんだ? この変な3人組は?

俺はもう疲れたよ。今日は色々あった。


 朝起きたら親父は倒れてるし、病院へ運んで、やっと意識が回復した、と思ったら

『お、れの……、俺のし、んゆうに……、カハッ……』


 親父が必死で話そうとしてて、見ているこっちも辛かったよ。

 

『なんだよ? なんだよ!? 親父!? あんまり喋んなよ!! 死ぬぞ、マジで!!』

『俺の親友に、こ、これを……』


 ドサッ


『原田さん!? 原田さん!? しっかりしてください!!』


 親父は俺に手紙を渡すだけ渡すと、すぐに倒れてオペ室へ入っていった。


 そして、渡された封筒には、『市城町88−56番地』と書かれていた。

しょうがねぇから市城町に行こうとしてるのに、道に迷って……、土産屋の前で止まってたら周りの奴らは笑い始めるし……、しかも、もう200メートルは離れた今でもうっすらと笑い声が聞こえてる……。

信じられねぇ……、どんな声量だよ?


 しかも、しかもしかも、ぼーっとしていたら、助手席に座ってるヤツが俺を引っ張って、引きずって……、俺のジーパンは破けた……、はぁ。


 今日は本当に、やな日だなぁ……。

親父はもう、意識を取り戻したんだろうか?



 カァー!! キェァー!!


「「「!? な、なんだ!?」」」

「うわ!? 悪い、俺の着メロだ」


 そんなに驚かなくてもいいのに……、ピ


「もしもし?」

『あ、政俊?』

「おう。どうした母さん? 何かあったのか? まさか、親父が?」

『えぇ、父さんがね、意識を取り戻したの!! 容態も安定してて、もう命の心配は要らないんだって!!』

「本当か!? はぁ、よかった。」

『でもね? もう、仕事はできそうにもないんだって……』

「そ、そうなのか? ん、でもま、生きてるだけでもよかったじゃねぇか。」

『えぇ。じゃぁ、母さんそろそろお父さんの病室に帰るわね。』

「あぁ。」


 ピ、ツー、ツー、ツー・・・・・・


 ふぅ、これで一番の心配事は、なくなったな。


「お、おい?」


 ん? なんだ? なんか運転してるヤツが怪訝そうに話しかけてきた。


「なんだ?」

「な、なんであんたの着メロは、そんなに不吉な音なんだ?」

「いや、だって……、う〜ん……、なんか、電話の声聞いたときの安心感が、半端じゃねぇし……かな?」

「いや、聞かれても……」

「原田さんも、普通じゃねぇっすね。」

「失礼な!! 俺はいたって普通だ!!!」


 最低でも、この3人よりは、絶対に!!! いいじゃないか! 着メロは個人の自由なんだ!!


「う〜ん、まぁ、本人にはわからないだろうし、な!」

「そうだよな、兄貴も自分の異常なとこに気づいてないみたいだし。」

「何を言うか!! 一番変なのは、お前の笑いのツボだ!!」

「いや、礼一の笑い声だと思う!!」

「俺は、あんたの行動の恐ろしさが、異常だと思う。」


 もちろん、これは助手席のヤツに言っていることだ。


「いや、本当に悪かったって……」

「そういえば、なんでそんなに恐い顔してるんっすか?」


 おぉ、それは俺も気になっていたんだ!! 


「そんなの、決まってるだろ? 笑いをこらえ続けてるからだよ!! だって、いまだに加賀崎の笑い声が聞こえてるし……」


 アハハハハハハハ


た、確かに……。


「……俺、前言撤回するっす。やっぱり、一番異常なのは加賀崎の人たちっす。」

「「「俺も賛成。」」」


 今、車の中が、ひとつになった。



今回は、今までに比べて、すごく長くなってしまいました・・・・・・。

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