18 ナレーの苦悩
私はナレー。
ナレーションのナレー。
説明界を創造した神であるシンに陰ながら馬鹿にされ、この礼一たちの世界――基礎世界を創造した神であるゼンに雇われ、解雇するぞと脅されている可哀想なナレーション。
私は今不条理を感じている。あれだけ話を進めろ、進めろと言っていた神たちが本題に入る寸前にコーラとポップコーンを取りに行くため、少し待ってくれと言ってきたのだ。
おかげで私のいる説明界から見える、触れられない基礎世界は時が止まっている。止めておかないと怒られるからな。説明界の特権だ、必要とあらば停止、再生、巻き戻しができるんだ。早送りはできないがな。
当然だ、物事を飛ばすなんてことはしてはいけない。どんなに辛いことも面倒くさいことも嫌なことだって、説明する立場である私たち、ナレーションが見逃して良い筈がない。見逃したって礼一たちの苦労はなくなったりしないのだから。
創造した神たちも同じだ。創った者、見守る者として最後まで見届ける義務があるんだ。
私たちはナレーション、第三者であり、見ることはできても決して干渉はできない者だ。だが、神は違う、神は運命こそ決められないものの、身体能力や魔術など様々な能力を使いこなせる。
主な力は世界を創り出す力と強い志を持つ者の志を力に変換することだ。
まぁ、そこまで強い志の持ち主は稀にしかいないがな。
と、少し説明してみたが、シンとゼンはまだ戻って来ないようであるのだが、どうすればいいのだろう、検討もつかないな。結構時間も稼いだつもりではあるのだが、そろそろ言うことも思いつかな――
バシュッ
か、神か!? 矢文が来たぞ!
中を開けてみると……
『時間稼ぎご苦労! 遅くなってすまん、ポップコーンが一度全部弾け飛んじまったんだ、まぁ安心しろ、上手く出来たからからな。 シン&ゼンより』
ポップコーンを作っていたのか!? しかもそのせいで遅れたのか!? 弾けることなんてわかっているのに、何故ちゃんと対策を練らなかったんだ!?
ま、まぁいい……コホン
私は厳かに咳払いをし、喉を整える。
さぁ、今度こそ始めよう。 準備はいいな?
これからが物語の始まりであり、序章の終わりでもある。つまり前置きから本編へのバトンパスだと思ってくれ。
長かった序章もこれで最後、私も嬉しいよ。では【時間よ進め】
――時は再び進み、忠彦たちは話し始める。
「それで、お前は何をそんなに俺に言いたがってたんだ? 何か訊くことがあるのか?」
忠彦が、蛍光灯に照らされている病室の窓際にあるベットの左隣に立って、ベットの上に座っている隆弘に訊いた。
なんだろう。童謡の「やぎさんゆうびん」を思い出すな。
「白やぎさんたら読まずに食べた〜♪」というヤツだ。まさに「さっきの手紙のご用事なあに♪」だな。ただ、読めなかった理由は達筆な字が読めなかった、ということだがな。
なんとも情けない理由だ。
まぁそれはいいとして、重要なのはここからだ。隆弘の質問とはなんだ?
「俺と忠彦の高校生の時からの夢を覚えているか?」
「宅配便……か?」
忠彦は思い出しながら、自信がなさそうに答えた。
「そうだ。約束も覚えているか?」
「約束って……、お前まさかあの約束をマジで守ろうとしてたのか?」
「あぁ、勿論だ。少し遅くなってしまったが舞台は整った。俺の会社は軌道に乗った、社員には理解を得た、お得意先もできたし人脈もある。そして社長は俺、自由に動けるよ。だから、お前としつこく連絡を取ろうとした。無理強いはするつもりはないよ。だが俺の努力も少しは考えてくれないか? 改めて訊こう、俺と一緒に宅配便の社長になってくれないか?」
隆弘は忠彦に手を差し出しながら誘っている。そうか、宅配便をやるのが二人の夢だったのか。約束が何なのかはまだあやふやだが、大人になったら一緒にやろう、という約束だったのかもしれないな。
「……ふ、フザケンじゃねぇ!」
ガタン
「何勝手に一人で動いてんだ!? お前は俺を何だと思ってる? 1人で突っ走るなよ! 友達だろ? 俺のことを忘れてたのか!?」
ベッドを思い切り叩きながら叫ぶように言う忠彦。どうやら忠彦は一緒に頑張りたかったらしいな。しかし、ここは病院なのに、大丈夫なのか? 看護婦さんに怒られたらどうするつもりなんだ?
「忠彦……、お前そんなに……」
隆弘は申し訳なさそうだが、どこか嬉しそうな声を出す。
「当たり前だろ!? 会社作るとかそんな挑戦的なこと、お前1人でやるのなんてズルすぎだ! 俺が挑戦的なことが好きなことは知ってるだろ!? 友達なのに、なんで俺を混ぜてくれなかったんだ!?」
「え? そこか?」
「ずるいずるい、酷いじゃないか! なんで俺を混ぜてくれないんだよ!? 俺だって会社作るのやってみたいのに……。1人で社長か? あぁ? 約束破ってんじゃねぇか!」
「待て待て待て、落ち着け」
激しく怒っている忠彦を両手でリズムを作りながら制止し、落ち着かせる隆弘。
「とりあえず、落ち着け。お前、昔を思い出してみろ。約束したときのことを覚えているか?」
忠彦が落ち着いた頃を見計らって隆弘が問う。
「あぁ? 二人で電車に乗って遠出したときのことだろ?」
「あぁ、そうだ」
「覚えてるに決まってるだろ?」
さも当たり前のように言う忠彦。しかし先ほどから呆れた様子の隆弘を見る限り、おそらく何かがおかしいのだろう。
「じゃぁ、よ〜く思い出してみろ。俺たちは何を約束した?」
「はぁ? 何をって――」
バシュッ
!? なんだ!? 私は忠彦の言葉に集中して耳を傾けていたというのに、突如私の目の前に矢文が飛んできた。
なんだろうと思いながら取り合えず手紙をほどき、読んでみる。
『何を約束したのか、聞いてるだけじゃつまらねぇから昔に戻ってナレーションしてくれ。尚、お前がこれを読んだ瞬間に忠彦と隆弘が約束したって時にタイムスリップするからよろしく。byシン』
か、勝手だ! つまらなくなんてないじゃないか! 私は常に真剣にナレーションして――
カッ
う、突然私の周りを真っ白な光が包み込み、堪らず目を覆ってしまう。そして目を開けると、玉虫色の異次元空間が広がっていた。一応、玉虫色とは、車の周りの水溜りに見えるような、見る角度から赤や黄や青や紫に変化する色彩のことだ。石鹸で手を洗っているときに、一度はシャボン玉を作った事があるだろう? そのシャボン玉にも見えるものだ。私自身最近知ったことなので一応説明を入れておく。
それも束の間、次の瞬間何かに押しつぶされるような圧力と共に、田んぼのど真ん中に私ははじき出された。
更新遅くなってすいません! 気づいたらもう1ヶ月ですか!? 長すぎたCMでした(汗
話は過去の話が終わればやっと本編、予定です!
やっぱりいきさつが要ると思いまして……(汗




