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14  目的地は何処なんだ!?

 ふぅ、今は車の中なんだが、流石にいつもと違って、雰囲気がピリピリしている。


 ミラーで見える後ろの状態は、母さんは寝てるけど、親父は無言で原田さんから受け取った手紙を読んでるし、窓に映った原田さんの顔は無表情だけど、心中穏やかじゃないようだ。右手の人差し指が絶え間なく、トントン……と動き続けている。


 隣をチラッと見ると、誠二は……



「兄貴、前見て運転しろよ。危ねぇだろ?」


 ……残念ながら、何をしているのかわからなかった。


 意外だな、後ろのほうが見えにくそうなんだけど、助手席のほうが見るのは難しかったんだな……。


 まぁ、取り合えず、雰囲気はシリアスだ。 


 シリアスな雰囲気ってのは、当然と言っちゃぁ当然なんだけどな?

 でも、シリアスな雰囲気は苦手なんだよ。過去にいくつかのトラウマが……、いや、いくつかというより、トラウマがトラウマを呼ぶ、と言う形でどんどん増えていったんだ。


 そのせいか? 無意識になのか、シリアスな雰囲気になると、俺は必ず何かヘマするんだ。

くしゃみをしたり、声が裏返ったり、言葉の意味をはきちがえたり……。


 例えば、高校3年の時の体育祭の優勝決定戦で、クラスで一丸となって円陣を組んだとき、みんな真剣だったからシリアスなムードになってしまったんだ。


 俺は勿論、そのムードに慌てた。しかし、俺は学級委員長だったから、掛け声は俺に任されてしまったんだ。


 みんなの顔は真剣で、目を見ると熱く燃えているようだった。


 俺は「みんな、気合入れて頑張ろう!!!」って言うつもりだったんだ。

でも、実際は……



「みんな、き、きあ、・・は・・・は・・・・・・はっくしゅ!!!」


 ……ハハッ、笑うしかないだろ? 俺は、クラスの雰囲気を見事にぶち壊しちまったんだよ……。みんなは見事にズッコけていた。


 すかさず、隣にいたヤツが言ってきたんだ。


 そいつは、春日彰人(かすがあきと)っていって、俺の幼馴染なんだ。

 言うことは全部信用できるし、頭もいいし、運動神経もいいし、カッコいいし……、本当にすごいヤツなんだ。今は一流大学に通っているんだ。


 そして、ハッキリと物事を言うヤツだったんだ。


 彰人は本当にハッキリと言った。



「お前、空気ぶち壊しすぎ。みんなの気が抜けるだろ? お前ってホンット空気よまねよな?」


 ははははは、傷ついた。この言葉には傷ついたよ。悲しすぎて、空笑いが込み上げてくるほどに……。


 だから、俺は本当にシリアスは大嫌いなんだ、本当に……。


 シリアスが大好きだ、という人はあまりいないだろう、でも、少なくともシリアスな雰囲気になるときには、何か大切なことがあるときなんだ。 そんなときに雰囲気をぶち壊してしまう自分が、本当に情けないし、みんなにも申し訳ない……。


 俺は本当に見舞いをしてもいいのか? さっき、親父は良いと言ってくれたが、俺は本当に雰囲気をぶち壊してしまうぞ?

 ……思い切って、腹が痛くなったふりをして、病室の外で待っていようかな?


 うん。 その方が良い、俺はシリアスな雰囲気にはいらないヤツなんだ……。



 …………さて、どうしようか? 今、俺が運転している車は、自信があるかのように前へ、前へと進んでいるが、よくよく考えてみると、運転手である礼一、つまり俺は目的地がわからない。いや、病院ってことはよくわかっているんだ。でも、どこの病院なのかはわからない……。原田さんに聞くのを忘れてたよ……。つーか自分で言えよな! 俺、すごく冷静な口調だけど、心の中はパニクってるんだぜ? は、ハハハハ、口調だってなんだか普段と違うような気がするような、しないような、いや、する? いや、今はそんなことよりもどうしよう!!? 今ここで聞くと、絶対俺はカッコ悪い! しかし、訊かないと、どこへ行けばいいのかがわからない!!


 ……悩むこと、約5分! 俺はいい作戦を思いついた! 誘導尋問だ!!!


 そうと決まれば、俺は早速原田さんに平静を装って問いかける。



「そういえば、親父さんが入院しているところは、ここから結構離れてたっけ? どれぐらい時間がかかるだろうな?」


 ……ハッキリ言って、運転手である俺がこんな事を訊くのはおかしいが……、原田さん、気づくなよ?



「え? あ、あぁ、沖津のほうだから、大体……1時間半ぐらいかな?」


 お? 思ったよりも有力な情報が手に入ったぞ!!

沖津か……、よし! 今進んでる方向が運よく沖津方面だ!! 俺の日頃の行いが良いおかげかな? 

よし! 次は病院の新旧を確かめてやる!!



「結構綺麗な病院だったっけ?」


 沖津の辺りにある病院は5つ。その中で5年以内に建った病院は2つだ、あとの3つは中々長い間人々を助け続けている。

綺麗なら2つに、そうでもなければ3つに分かれるな。



「まぁ……、4年ぐらい前にできたばかりだから、結構綺麗なはずだが……、それがどうかしたか?」

「いや、ちょっと気になっただけだよ。」


 ふー! 焦った!! 平静を装って応えたけど、予想外にも質問が来たからマジ焦った!!

う〜ん、これ以上は流石に変だよな……、既に変に思っているみたいだし……。


 ま、取り合えず、新旧はわかった! 新しいんだから、2つにしぼれる、沖津第三病院か、沖津総合病院だな!


 これが最後の質問だ! 今まで以上に慎重に訊かないと、目的地をわかってないってことがばれてしまうから、失敗は出来ないぞ!!


 さぁて、何を訊こうか……。病院の違いがわかる上に、しかも俺が訊いても違和感のない質問、いや、質問じゃないほうが良いかもしれないな…… ……! 閃いた♪



「おい、車をもし停められなかったら、先に病院に入ってろよ?」


 俺は気を使ってるかのように言う。が、これは作戦だ。沖津第三病院は、規模の小さい病院だから、車はあまり駐車できない。しかし、沖津総合病院は、名前の通り総合で、規模もでかいから、当然車もたくさん駐車できる!!

 つまり、高い確率で原田さんの応え方によって、どちらの病院かを特定できるって訳だ!!


 原田さんよ、どう答える!?



「有り難う。だが、あれだけたくさん駐車場があるんだから、停めれないということはないだろう、大丈夫だ。」


 よし! これでわかったぞ! 目的地は沖津総合病院だ!!

一応、間違ってたら困るし、確かめてみようか。……もし、間違ってたら、俺の苦労は水の泡だな……。



「確かに、規模のでかい沖津総合病院なら、いくらでも駐車できるよな!」


 当たりか? ハズれか? ……クソッ動悸が激しくなってきたぜ……。



「あぁ、余裕で50台は停められるだろう!」


 よっし! 大当たりだ!! ナイスだ、俺! 俺は自分で自分を誉めたいよ!! いや、もう既に誉めてたな♪


 え? 何故こんなに俺が病院に詳しいか、だって? そりゃ、車で探検してて、いろんなとこで迷ってるうちに覚えちまったんだよ♪ まさかこんなとこで役に立つなんてな♪



「へぇ、沖津総合病院に向かってたんだなぁ。」


 !? せ、誠二!? 余計なことを言うなよ!?

 隣で誠二が感心したように声を出した。そんなにしみじみと言うなよ!! 俺が行き先をわかってなかったことがバレたらどうするんだよ!? カッコ悪いじゃないか!!!



「つーかさ、いつ原田さんは病院の場所を言ってたんだ? 俺、聞いてなかったんだけど?」


 止めてくれ!! そんなことを訊かないでくれよ誠二!! マジでバレるから!!


 

「ん!? 確かに、俺は目的地を言っていなかった! 忘れてたよ。……あれ? じゃぁ、どうしてアンタは沖津総合病院だってわかったんだ?」


 どうする? どうやって言い逃れする? ……考えろ、考えるんだ!! どこかに道があるはずだ!! 落ち着け俺!!


 ……よし! こうなったら、思い込ませてやる!!



「何言ってんだよ? さっき車の中で言ってただろ?」


 本当は言ってなかったけど、そんなにハッキリと言ったかどうかを覚えていることはないだろう。

ここは、さらに信憑性を高めるために、具体的に言ってみる。



「ほら、原田さんが親父に用があるって言ったときだよ。」


 ちょっと余裕を見せるために、俺は微笑みながら言っている。

しかし、勿論俺の中には余裕なんて全くない!!



「え? ……う〜ん、言ったっけな?」


 え!? 騙されてない!? え、どうしよう? 俺もう全力を出し切ったぞ? ……いや、あともう一言頑張ろうじゃないか!! 次で騙しきるぞ!!



「言ってた言ってた、忘れたのか?」


 少し引きつってるかもしれないが、俺は出来る限り微笑んで言った。



「……いや! やっぱり言ってない! だって、俺は車の中の雰囲気を暗くしたくなかったから、言わないでおこうと決めていたんだから!!」


 何!? え〜? そんなところで気を使うなよ!! 俺の嘘がバレるじゃ――いや、もうバレてるかぁ。



「……やっぱり言ってなかったよな? おかしいと思ったんだよ、つーかさ、土地勘のある兄貴が、病院までどれぐらいある? なんてこと、場所がわからない限り言うわけないんだよな! ハハッ」


 そんなに爽やかに笑いながら言うな!! ムカつくヤツめ!! 嗚呼、俺の苦労が、俺の努力が水の泡だ……。



「ちょっと待て! じゃぁ、なんでアンタは沖津総合病院だってわかったんだ?」


 原田さん、まだそんなことを気にしているんだな。アハハッ、まるで名探偵の推理を聞いた後に、抵抗する犯人みたいな感じで訊いているよ……。

悪いが俺に、答える気力はない!



「兄貴の質問に対して『沖津』、と答えたのは原田さんだろ? そんな感じで病院を絞っていった、だよな兄貴?」


 追い討ち!? そんなに暴露しなくたっていいじゃないか!!

クッ、悔しいからふてぶてしい声で俺は答える。



「……あぁ。」

「……兄貴のヤツ、拗ねちゃったみたいだな。はぁ、20歳も過ぎてなに拗ねてるんだよ?」


 誠二が呆れた声で言ってくるが、拗ねさせた本人に言われたくはない!!



「五月蝿い! とにかく沖津総合病院に行けばいいんだろ!? ちゃんと行くんだからいいじゃないか、放っといてくれ!!!」


 俺は悔しい思いを喚くことで発散した。あ〜、スッキリだ!

 

矛盾があったら是非教えてください!!

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