13 みんなで出発
朝河を送り届けて……大体35分ぐらいかな? 家に着いたんだけど、誠二と原田さんは眠っている。それはもう、見ているこっちまで安心するほど安らかに。
しかし、少々ムカつくのが、俺が説明している最中に2人が寝てしまったということだ。人が折角頭について教えてやってたってのに、……つーか、人が話している最中に寝るなよな……。
まぁ、取りあえず起こそうかな。
「誠二! 原田さん! 着いたぞ、起きろ!!」
「クー、クー」
声をかけるが全然起きない……。う〜ん……、よし! 揺さぶってみよう!!
「せ〜い〜じ〜、は〜ら〜だ〜さ〜ん〜……」
一文字ごとに3回ぐらい揺さぶってみたが起きない。
カァー! キェァー!!
「うわ!? ビックリした!!」
不吉な着メロが鳴り、俺は思わずビックリしたと口に出してしまった。
「……ん? けーたい? ……ふぁ。」
お? 原田さんが起きた!! よっし!! でも、誠二はまだ起きない。俺はさらに誠二を揺さぶった。
後部座席で原田さんは電話に出ているから、俺は声を出さずに揺さぶっている。
「ふぁ……、もしもし? 俺だけど?」
眠そうに応えるなぁ、相手に失礼じゃないのか!? それにしても誠二はまだ起きない。
「…うん……うん・・・・・・え!?」
「ぬあ!? どうしたんだ!?」
「んぇ? もう家に着いたの?」
原田さんが突然大声を出したので、また俺は驚いてしまった。そして誠二も起きたようだ。ひとりおっとりとした寝ぼけた声で問いかけてくる。俺は……、どうしても誠二がワンテンポズレてるような気がしてならない。こいつは将来大丈夫なのか?
「あぁ・・・・・・あぁ、わかった。もうすぐ手紙を渡せると思うから、渡し次第すぐに病院に向かうよ。じゃ」
原田さんが電話を切ったのを確認して、俺は話しかけた。
「病院? 何かあったのか?」
「ん? ま、まぁ、色々な。それより、もうお前の家には着いたのか?」
「あぁ、着いたぞ。そういえば、家に何のようなんだ?」
我ながら今更な気がするけど……、まぁいい!
「俺の親父が親友の、……浅生忠彦さんに手紙を届けてくれって頼んできたんだ。」
原田さんはメモ帳で名前を確認しながら言った。
「親父に用があるんだな? よし、わかった。じゃぁ、早速親父に渡すといい。先に家の前まで行っといてくれ。誠二も、早く車から出ろ。」
2人が車を降りたのを確かめてから、俺は車のキーでロックした。
それから家の前まで行き、ポケットから家の鍵を出し、ドアを開けた。
!? ドアを開けると、玄関で親父と母さんが待っていた。
「「お帰り〜♪」」
なんでこんなにご機嫌なんだ??
「ただいま。なんでそんなに機嫌がいいの?」
誠二が2人に訊く。もっともだ。さっきまであんなに暗かっ――しまった!!!
「ごめん! 親父、母さん! 饅頭とたい焼きを買って帰るの忘れてた!!」
しまった、すっかり忘れてた・・・・・・。クッ、2人の冷たい視線が痛い……。
俺は下げていた頭を上げて、2人の顔を見てみた。
!? こ、恐い!! なんか鬼の形相だ!!
「え? なんて? 俺、最近老化が始まってるから聞こえなかったなぁ。」
そう言う親父の顔は、まるで般若が笑っているかのような、恐い笑顔だ。止めてくれ、そんなに恐い笑顔をしないでくれ!! というより、絶対聞こえていたじゃないか!!!
「あれ? 母さんにも老化が始まっちゃったのかしら? なんかぁ、忘れてた、なんて聞こえたような気がするんだけどぉ?」
ああ! 語尾が伸びている!! 誠二と一緒で、母さんも怒ると語尾が伸びるんだ。ヤバイ、まずいぞ!!
「ホンットごめん!! たい焼き、饅頭と合わせて、親父にビール、母さんには……」
何か他にも買うことで許してもらおうと思ったが、母さんには何を買えばいいんだ?
「ん? 礼一? 母さんには、なぁに?」
う! なんか微妙に雰囲気は柔らかくなったけど、顔と口調がそのままで、雰囲気とのミスマッチがさらに俺の恐怖心を煽っていく。何にしよう……、よし!
「母さんには、次に美容院に行くときの、代金を払う! だから許してくれ!!!」
母さんはいつも美容院に行くときの金が高いと嘆いているから……大丈夫かもしれない。
「よっし♪」
「あなた!」
「「大成功♪」」
パァン!!
2人は満足げな顔をして、綺麗なハイタッチの音が……って、え!? 怒っていたんじゃないのか!?
あっけにとられた俺の顔を見て、笑いながら母さんが言う。
「エヘへ、ごめんねー♪ 本当はあんまり怒ってない、というか買って帰ってくるとは期待してなかったのー♪」
「え!? それは……、酷すぎないか?」
心外だ。まさか期待されてなかったなんて……。
次は親父が返してくる。
「だってよ? お前、何かを頼んだとき、いつもいつも忘れて帰ってくるだろ? な、誠二?」
誠二にまで話を振った。でもまさか誠二がそんなことを思っているなんてことはないだろう。
「うんうん。兄貴が忘れなかったことなんて・・・・・・今までに、5回あったかどうかだよな!!」
「何!? 酷い!! 酷すぎる!!! 俺はそんなに責任感の無い男じゃない!!!」
信じていたのに、誠二の馬鹿野郎!!!
「本当のことだろ? で、いつも責任を感じてか、他にも何か買ってくれるんだよな♪」
誠二・・・・・・、そんな風に俺のことを見ていたのか? 俺は……、兄ちゃんは悲しいよ。
「あの……、楽しそうに話している最中に悪いんだが……」
「楽しそう!? どこがそんな風に見えるんだ!? あんたの目は節穴か!?」
原田さんめ、控え気味に割り込んでいるが、・・・・・・どうやったら楽しそうなんだ!? 俺が可哀想だとは思わないのか!?
「礼一、お前のことを可哀想って思うやつはいないと思う。」
え!? なんで親父は俺の考えていることがわかったんだ!?
「ん? 顔に書いてあるぞ?」
さも当然のように返事するな!!!
「ところで、この人は誰だ? 新しい友達か?」
親父の問いかけに、原田さんは自己紹介をした。
「夜分遅くにすいません。原田政俊といいます。父から手紙を預かってきたんですが……、浅生忠彦さんですか?」
!? さっきとは打って変わって礼儀正しく感じるのは俺だけだろうか!?
「ん? 原田? ……手紙?」
ん? 親父の顔が厳しくなった。何故? 親友じゃないのか?
「あ、あぁ、俺は浅生忠彦だが、あんたは隆弘の息子か?」
原田さんの視線に気づいて、親父は思い出したように返事をした。
「はい。」
「妙だな。何故、隆弘はわざわざ手紙を届けさせたんだ? 今までは電話だったのに……」
ん? なんだろう、親父の目が本格的にマジだ……。それに、「今までは電話」って、もしや、親父の悩みって、原田さんに関係しているのか!?
「実は、今朝、父が倒れて、今病院にいるんです。ちょっと意識を取り戻したときに、この手紙を渡してくれ、と言われて・・・・・・。」
思い出したからか、原田さんは苦しそうに顔を歪めた。
それにしても、親父さんが倒れたって!? 大変じゃないか!! じゃぁ、さっきの「病院」っていうのは、親父さんがいる病院なのか・・・・・・。
「何!? 隆弘が倒れたのか!?」
「はい。」
ん? もしかして、これはシリアスな展開になっているのか?
いや、いやいや、落ち着いて考えてみよう。
1.原田さんの親父さんは倒れた。
2.親父はそれを聞いて心配している。
3.場の雰囲気は張り詰めている。
結果・・・・・・シリアスだ。うん、言うまでも、考えるまでも無く、シリアスだ。
え!? え!? どうしよう? 俺、シリアスなのすっごく苦手なんだって!! マジで!!
「隆弘は、今もまだ起きたりはしていないのか?」
「いえ、一度は意識を取り戻したんですけど、ついさっき電話があって、親父のヤツ、また倒れたらしいんです。」
なんかマジで深刻だ! なんか俺、場違いだ!!
「おい、礼一! 車出してくれ! 病院に行くぞ! 俺はビール飲んじまったから、運転できねぇ!!」
……やるしか、ないよな。シリアスだなんて言っている場合じゃない!!
「おい、親父! でも、兄貴がいると、緊迫した雰囲気が台無しになるぞ!?」
そうなんだよなぁ。昔からそうだ。どれだけシリアスな雰囲気になっても、俺が焦りすぎてしまうせいで、どうしても場の空気が変わるんだよ・・・・・・。今まで、「礼一がいると、緊張感が無くなる」と何回言われたことだろう・・・・・・。だからシリアスは苦手なんだよなぁ。
「あぁ? そんなの、別にいいだろ?」
あっけらかんと親父は言うが、……いらないのか? 緊迫した雰囲気は、いらないのか? 俺は、行ってもいいのか?
「親父、もしかすると、俺が行ってしまうせいで、涙を流すところを、くしゃみとかで台無しにしてしまうかもしれないぞ? それでもいいのか?」
ダメなんじゃないのか? みんながしんみりとしている時に、雰囲気を滅茶苦茶にするのは、やはり最低なことなんじゃないのか?
「馬鹿だな、明るい雰囲気が悪いときなんて、この世にはねぇんだよ! 緊迫した雰囲気なんて、糞くらえだ! いらねぇんだよ、そんなもん。特に、本当に大変な時にはな……。礼一! 取りあえず行くぞ!!」
いや、でも俺は今までに雰囲気を壊したことで、何度も怒られたんだけど……、やっぱりダメじゃないのか?
俺が動かないから、親父はさらに言う。
「何そんなに悩んでんだ!? 考えてもみろ、例えばお前が事故にあったとする。お前は大怪我をしてみんなが悲しんだ。お前の周りにはどんなやつがいる?」
・・・・・・そんなことになったとしたら……、どうなるんだ? 俺にはよくわからない。そんな経験をしたことが無いから。
俺が応えられずにいると、親父は我慢が出来なくなって、俺の答えをまたずに続けた。
「だぁ、もう! お前の周りは十中八九みんな泣いているだろう。お前、そうなったらどう思う?」
「周りがみんな泣いていたら、俺だったら、……なんか困るし、泣き止ませようと思う。」
多分、いや、絶対元気を出させようとするだろう。だって、そんな雰囲気が苦手だから!
「だろ? それで泣いているやつに紛れて、笑いを起こすヤツが、場を和ませるヤツがいるとする、助からないか?」
「有り難い!!」
次は即答できた! 親父は満足げに頷いている。
「わかったか? そういうことなんだよ、よし! 早速行くぞ!」
「俺も行くよ!」
「私も!」
こうして、結局みんなで病院へ行くことになった。
こういうときは流石親父だな。俺の20年の悩みを意図も簡単に解消してくれるとは……。
俺は、家から出て車の運転席に乗った。俺は勿論運転席、誠二はまたもや助手席で、あとの3人は後部座席だ。みんなも乗ったことを確認して言う。
「よし、出すからな!」
「あ! ちょっと待って!!」
「え? 母さん、どうしたんだ?」
「鍵かけるの忘れてたの!! ちょっと待っててね!」
……このタイミングで? いや、まぁしょうがないか、防犯のためだし……。
しばらくすると、母さんが戻ってきた。
「よし、もういいよな?」
もう一度確認する。
「ああ!! わりぃ、ラーメンゆがいてる途中だったんだ! ヤベぇ! ちょっととめてくる!!」
……また? なんて緊迫感が無いんだ? いや、緊迫感なんていらないんだよな!
親父は母さんから家の鍵を預かり、家の中に入っていった。原田さんが驚いたように訊いてくる。
「おい、お前の家は、いつもこんな感じなのか?」
「いや、いつもは普通――」
「じゃねぇよ、いつもこんな感じだよ。」
俺が応えているのに、誠二が上から被せてきた。
「誠二、いくらなんでも、いつもこんなに落ち着きが無いわけないじゃないか!」
いつもはもっとマシだと思う。しかし、誠二の意見は変わらない。
「いや、いつもこうだろ? 兄貴はいつも落ち着きが無いからわからないだけだよ!!」
「失礼な! 俺は落ち着いているぞ!!」
「い〜や! 下手したら親父よりも落ち着き無いね!」
「クッソ〜! なんてふてぶてしいヤツだ! 親父よりはマシだ!!」
「いや、俺は礼一よりはマシだ。」
「え!? いつの間に!?」
気づいたら親父が後部座席に乗っていた。いつの間にだ? ドアが開く音もしなかったぞ?
「お前等なぁ、ちょっとの間ぐらい大人しくできねぇのか? 母さんを見ろ! お前等が兄弟喧嘩始めるから寝ちまっただろ!?」
後ろを見てみると、確かに母さんは寝ていた。それにしても、何故あんなに五月蝿かったのに寝れるんだ? 我が母ながら図太いな。
「よし、今度こそは行くぞ?」
もう流石に何も無いだろう。
「す、すまん!」
「え!? 原田さん!?」
意外な声の出所に、寝ている母さん以外はみんな原田さんに注目している。
「どうしたんだ!?」
「すまんが、トイレを貸してくれないか? さっきから我慢していたんだ。」
それならもっと早く言えばよかったのに……。
親父は原田さんに家の鍵を渡した。
「誠二、トイレの場所がわからないだろうから付いて行って来い!」
親父が原田さんに気を利かせた。という訳で、次は誠二と原田さんが戻っていった。つくづく緊張感が無いな。
すぐに2人は戻ってきた。よし、今度こそは大丈夫だ! よな? 不安に思いながらも確認する。
「行くぞ?」
「「「おぅ!」」」
ふぅ、寝ている母さん以外の、元気な返答で、俺は安心してやっと車を出した。
文章を、直したつもりなんですが、どうでしょうか? 変わってませんか? 教えていただけたら嬉しいです!!
あと、不自然な会話があったら教えてください! お願いします!!!




