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10  可哀想な原田さん

車の中にて、です。礼一視点です。

あと、携帯の人は、わかりにくいかもしれません。すいません。


 あ……、雨が止んでる。

一体いつの間に? そういえば、誠二が原田さんを連れてきたときには、もう止んでいたな。


 雨が止んでいても、まだ地面はベチャベチャで、ちょっと気を抜いたら大変だ。

まぁ、俺にかかればこの程度のぬかるみは、余裕だけど。


 嗚呼、来たくても、来る機会がなくてなかなか来れない池田。


 言ったって、無理だろうなぁ……。


 いや、やる前に諦めるのは、やっぱりよくない!

男なら、全力疾走で当たって砕けようじゃないか!!


「なぁ、そこの――」

「だめだ。」


 まだ、何も言ってないのに、誠二の言葉は返ってきた。


「まだ何も――」

「だめだ。」

「いやだか――」

「だめだ。」


 クッ、折角砕ける覚悟で話そうとしているのに、言い切る前に誠二に止められてしまう……。

これじゃ、不完全燃焼じゃないか! 悔しい……。


「さっきから何言ってんっすか?」

「訊いてくれるか、朝河! 実は――」

「黙れ。」

「え? 何なんすか?」


 クソッ、誠二の声が重なって俺の声が届かない……、いや、負けないぞ!!


「そこの――」

「黙れ。」

「小道――」

「黙れ。」

「きたい――」

「だ・ま・れ!」


 くっそ〜! でかい声で言ってみたけど、負けないように頑張ってみたけど、誠二の声がことごとく俺の邪魔してきやがる〜!!! 悔しい!!


「ちょっともう! 何言ってんのか、わっかんねぇよ!」


 その気持ちはわかるぞ、朝河! でも、俺だって伝えたいんだよ、でも誠二が邪魔して来るんだ〜!! 


「わからなくていいんだよ! 聞いたら最後、兄貴は諦めが悪いんだ!」

「まぁ、聞くだけ聞きましょうよ!」


 ああ、なんていいヤツなんだ、朝河! 誠二のヤツ、なんて酷いやつなんだ!! 


「……チッ、聞くだけだからな。多分兄貴の意見は却下だから。」


 舌打ちなんて……、地味に傷つくじゃないか……。いや、でも負けないぞ!!


「多分って何だよ? ハッキリしろ!」


 俺はちょっときつめに言ってみた。


「ハッキリしたら、それを逆手にとって、自分の都合のいいようにしようとするだろ。

お前の魂胆は見え見えなんだよ!」


 クソ、本当に勘がいいヤツだな。あぁそうさ! 確かに俺は、お前が絶対に却下って言ったら、『寄り道するのは止めようか。え? 俺の意見は却下? 仕方ないなぁ、じゃ、寄り道するか!!』 って言おうと思ったさ! 別にいいじゃないか!!


 クッソ、ジロっと見てくるなよ、誠二!! なんか恐いから、ごめんなさいって!!

はぁ、もう飾らずに言うしかないか。


「実はな、そこのクネクネした小道を通って行きたいんだ。」

 

 ふぅ、言えたぜ。

ん? でも、なぜか朝河が驚いてる……。 何故に?


「あ、あんな小道に、こんな地面がぬかるんでる時に行ったら、車がひっくり返るんじゃないの!? しかも、どこにつながってるかわかんねぇし……」

「それが楽しいんじゃないか!

ここを通っていくと、どこに着くんだろう? とか、この難易度の高い道を、俺は突破できるのか? とか、色々とドキドキするだろ!?」


 このドキドキが、たまらないんだよな〜♪

この、自然がなくなっていって、探検する場所がないこのご時勢に、こんなにドキドキできるようなものはないだろう! そう思うぐらい、俺は探検が大好きなんだ!!


「ドキドキってぇか、冷や冷やするよ!

俺、早く帰らねぇとダメなんだって!!」


 そんなに慌てて言わなくても……。


「そうそう。こいつの家には、中学生の妹が1人で待ってるんだよ。

だから、寄り道はナシだ! 早く帰してやらねぇと、可哀想だろ? 兄貴もちゃんと大人になれよ」


 ムッ? それは、俺を子供扱いしてるのか?


「俺はお前よりも大人だ!!」

「身体は、な。 精神年齢は小学生並みだろ」


 なんて失礼なことを言うんだ!? さっきから誠二は俺に失礼すぎやしないか!? 

確かに早く朝河を送り届けないといけない理由はわかったよ? でも、俺の精神は大人だ!!!


「失礼な! じゃ聞くが、お前はなんであんなに通いづらいとこでバイトしてるんだ!?

俺に車で送り迎えしてもらえる、とか思ってるんじゃないのか!? そっちの方が子供じゃないか!! 俺以下だ!!」


 さっき車の中でこう考えてたんだけど、流石にないだろうと思って考えるのをやめたが、よく考えたら誠二の心精神年齢は低いんだ!! こんな理由に決まってる!!


 俺は留めの一言を言うぞ!! これを言ったら絶対にムカつくはずだ!!!



「や〜いや〜い、精神年齢幼稚園児並み野朗!!」


 よし、言ってやったぞ!


「……はぁ。や〜いや〜いって……マジでガキだな」


 なんか、呆れられてしまった……。しかも、なんか大人っぽい対応されてしまった。……悔しい。しかも引き下がれない。


「な、なんだと!? ど、どうせお前なんか、今日だって無理やり後輩に傘を押し付けたんじゃないのか!?」

「フン……」


 否定しない!?


「図星!? 図星なのか!?」


 やっぱりコイツの精神年齢は低かったんだ!! 俺は勝ったぞー!!!

『何に』かは、とりあえず考えないことにしておこう。


「後輩に傘を押し付けるなんて、なんてお前は横暴な先輩なんだ!? もっと後輩の気持ちを考えろ!!!」


 フッ、兄貴らしく説教したぞ♪ なんかそれっぽくて嬉しいな〜♪


「いやいや、誠二先輩は後輩の気持ちをよく考えてくれる先輩っすよ。傘を貸したのはですね。後輩ってか、俺と同期の矢吹ってのがいるんすけど――」

「朝河、敬語になってるぞ!」

「どうでもいいだろ? そんなこと」


 いや、確かにそうなんだけど、やっぱり気になるじゃないか。俺は敬語が嫌いなんだよ。


「矢吹ってのがいるんだけど、そいつの家は歩いて10分なんだ」


 お! 口調が戻った!


「で、急ぎの用事で帰らねぇといけなくなって、でも傘を忘れてたんだよ。

しかも何考えてたんだか……、いや、バイトに遅れそうで焦ってたらしいけど、ノートパソコンを袋に入れずに持ってきてたんだよ」


 本当に何を考えてたんだ!?


「雨に濡れたら大変だろ? だから、誠二先輩が矢吹に傘を貸したんだよ。

でも、それじゃ誠二先輩が濡れるだろ? だから矢吹は断ったんだ、でも、誠二先輩は押し付けるかのように貸したんだ。確かに押し付けてるけど、善意があるだろ?」

「そうか。助手席のあんた、本当にいいヤツだったんだな」

「う、うわ!?」


 な、なんだ!? 今の声は一体誰なんだ!?

……あ! 原田さんか! はぁ、ビックリした。


「!? ど、どうしたんだ?」

「い、いや……」


 なんかすっごく心配されてるけど、原田さんの存在を忘れてた、とか言えないよな……。


「黙ってたらわからねぇだろ?」

「……」


 言うしかないのか? でも、こ、こんな事を言って、酷くないだろうか?


「どうしたんだよ!?」


 ……言うしかないか。

俺はもう、腹をくくったぞ!!


「実は、原田さんが乗ってるってことを忘れてたんだ……」

「……」


 あぁ、いやな沈黙だ。


「いや、だって、さっきから何にも話してないじゃないか……?」


 やっぱり失礼だったか……。

 

「……そ、そうか。俺のことを忘れていたのか……」


 あぁ、どうしよう? すっごく落ち込んでしまったよ。


「いや、気にしないでくれ。ハッキリ言ってもらって、俺も清々しいさ。」


 そういう原田さんからは、暗いオーラが発生している。


「すいません、俺も原田さんのこと、忘れてました! え!? お前も!?」

「すいません、俺も原田さんのこと、忘れてたっす! え!? 誠二先輩も!?」


「うわ、すっげハモッてる!   うっわ偶然、つーかハモリすぎ! アッハッハッハ」

「うわ、すっげハモッてるっす! うっわ偶然、てぇかハモリすぎ! アッハッハッハ」


「ブハッ、お前等ハモリすぎ!」


 微妙に口調は違うが、言ってることが見事にハモッてる。息ピッタリじゃないか!


「……流石に酷い」


 ぬぁ!? 原田さんがさらに落ち込んでしまった! 謝らなければ!


「すいません! いや、影が薄いとかじゃないんだ、いやだなぁ   そんな目で見ないでくれ!」

「すいません! いや、影が薄いとかじゃないですよ、いやだなぁ  そんな目で見ないでください!」

「すいません! いや、影が薄いとかじゃないっすよ、いやっすねぇ そんな目で見ないでくださいっす!」


 おお!? これまた見事に言いたいことがハモってる!! なんかすっげぇ、楽しくなってきた!!!


「……それは、ダイレクトに影が薄いって言っているのか?」


 ああ! 原田さんがさらに暗くなってしまった! フォローだ!!!



「そんなことは断じてない!」   

「そんなことは断じてないです!」 

「そんなことは断じてないっす!」 


 おお! また!? これはもうすごい!! これは、アレだ。え〜っと……。


「……ミラクル?  ブハッ、ビィャッハッハッハ」

「……ミラクル?  ブハッ、ギャッハッハッハッハ」

「……ミラクル?  ブヘッ、ナッハッハッハッハ」


 ビュェャッハッハッハッハッハ……

ハモリすぎだ! すごいミラクルだ! 笑いが止まらない! 


 俺等3人の笑い声は、車の中に五月蝿く響いたのだった。


「……もう、勝手にしてくれ、……はぁ」


 ミラー越しに、俺等の笑い声はもう止まらない、と諦めた原田さんの目からこぼれた涙を見た、

というのは、この際なかったことにしよう。

ちょっとありえない、ですかね?

いやでも、よくありますよね!!

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