それでも私は人間でありたい
僕は彼女を引き連れて彼女の侍女達を放置している廊下に出た。
「これがボク達の食事だよ、もしかしたら王女様に馴染みのある人物達だったのかもしれないけど……僕達には関係無いよね」
僕はそう言って元王女様を彼女たちの前に立たせた……これが僕達の食事だと言って。
「これが私達の……食事……う…そ……だって、これは私の……私の侍女達ではないですか!」
侍女達の前に立ったお姫様は僕の言葉に拒絶の色を見せた。分かってた事なんだけどね、お姫様はまだ人間の感覚を捨て切れてないみたいだから……これは仕方のない事ではある、でもね……
「違うよ、この娘達が使えてたのは人間の王女様だよ、君に……僕のお姫様に使えてた訳じゃないんだよ?」
お姫様、その人間性は僕等にはいらないものだよ……だって僕等はヒューマンイーターなのだから僕達には人間の感性は邪魔なものにしかならないよ。
「でも私は彼女たちを知って……」
「そうだね、知ってるかもね。でもそれ僕等には関係無いよね、どんなに知り合いだったとしても人間は僕等から見れば食べ物だ、それだけの存在だよ……それに食べたくないのお姫様は、余計な汚れを落としたら多分我慢なんて出来ないよ?……廃人なのが少し残念だけどきっと美味しいよ?」
「私は人をそんな風には見れません!!まして知り合いをそんな風に扱うなんて……」
「……はぁ、分かったよ。お姫様は上の部屋にある人間の食べ物を食べたらいい、別に僕等はヒューマンイーターだからと言って人間しか食べられないわけじゃないからね」
「ヒューマンイーターは人間以外を食べれるのですか!?」
「寧ろ食べられる物の種類としては人間より遥に豊富だからね、人間を食べなくても生きていけるよ……でも人間を食べ無いという選択を取るなら後悔しないでね?」
「人を食べなくて済むのなら私は食べません。私は人間でありたいから」
「ふーん……まぁいいやそれならそれでがんばって見ればいいよ僕はそんなの気にしないから食べるけどね」
……お姫様はあくまで人間と言うものに拘るようだ……その頑張りが続けられればいいけどね。
「その事なのですが彼女達は見逃して欲しいのです……どんなになっていようと大切な侍女達なのです」
まぁ人間を食べる必要が無いと分かれば僕を止めに来るよね……何たってお姫様にとっては大切な人達だったみたいだしね……雰囲気的に僕の返答次第で僕と戦うつもりみたい。
ふぅ……正直言えばお姫様自身がどうしようが僕には関係無いから気にしないけど……でもね、僕の行動を強要する言葉はいただけない。
だからそんなお姫様にはお仕置きしなくちゃいけなくなるじゃない……残酷な方法でね。
「ふーん……いいよ、条件付きで今回は見逃してあげてもいいよ?」
僕はお姫様に譲歩する形をとった……最も本当に形だけ……きっとお姫様は自分から壊れていくから、でも僕が何を考えてるか分からないお姫様はその言葉に食いついた。
「その条件を飲めば……諦めてくれるのですか?」
「お姫様次第だけどね……別に無茶を言うわけじゃない、お姫様が今後人間を食べ無いならその侍女達だけは僕は見逃してあげる」
僕の言葉にお姫様は凄くキョトンとしていた、そんなに簡単な事とでいいのかといった感じだろう……それが本当に簡単な事かどうかは身を以て知る事になるのだろうけど。
「本当にそんな事で見逃してもらえるのですか?」
「そうだよ、そんな事が出来たらその侍女達は見逃されるだろうね」
「なら大丈夫ですね……私は絶対人間は食べませんもの」
……だといいね、まぁ無理だと思うんだけどね。自分から約束を破るとき……お姫様はどう変わるんだろうね?
「なら僕は食事の為に他の人間を確保しないとね……でもその前にせっかくお風呂作ってこの娘たちを綺麗にしようとしたんだから先に洗っていくか……お姫様もそれは手伝うよね?」
準備はしておかないとね……じゃないとこのまま食べる事になっちゃいそうだしそれは御免被りたい。
「そうですね、彼女達をこのままにはしておけませんし……」
こうして僕とお姫様は彼女達の身体を洗い出した……最初は人助けみたいな感じでがんばっていたんだろうけど段々顔が虚ろになっていくお姫様、一体何を考えているんだろうね?大体検討はつくんだけどね。
「お姫様、お腹空いたんなら先に上で食事でもしてきたらどう?」
「え!?…あ、はい……そうですね…ではそうしますわ…………食べなくてよかった」
最後のは本当に聞こえるか聞こえ無いかくらいのつぶやきだった……最も僕にははっきりと聞こえてるんだけどね。