お腹いっぱい食べたい
木々の隙間からの光がまぶしくて、寝ていられなくて起きてしまった。
……あれ、何でこんな所で寝てるんだっけ?
……ああ、そうだったそうだった僕は親に森の中に捨てられたんだっけ、それでその後ヒューマンイーターに襲われて……なんで生きてるんだ?
確か僕はヒューマンイーターに食べられてR18のようなスプラッタ状態になって死んだんじゃないんだっけ?……おかしいな手足の感覚がある、どういうことだ?
手を顔の前まで持ってきた……はい?
確かに手はあった……しかしその手は半透明でその色はシャンパンゴールドだった。
つまり死んで幽霊になったってことか?……まぁ前世持っての転生とかしてるわけだしそういう事があっても不思議ではない?
……いや、でもおかしいような気がする、地面とかに触れてる気がする……幽霊って物とか触れたっけ?
視線を下に向ける……なんじゃこりゃあぁぁぁ!!?
これ幽霊じゃない……これからだが液状化してる……それもスライムみたいに……そして問題はですね、裸なんです。
いや、裸そのものは問題だけど問題じゃない……問題は半透明の液状化してる体であって更にその体はどう見ても女性の形何ですよね〜……状況が全く理解できない。
……一つだけわかる事がある、それはー
―オナカヘッタ―
それだけだった。それ以外はよくわからない……でもそれだけ分かればいいや、何か食べ物探そう。
裸じゃなかったかって?別に寒くないから問題無いよ。それにこっちに転生してからはボロい布しか着てなかったしあってもなくても問題無いよ。
性別?気にしたらお腹いっぱいになるの?ならないよね、だからもうどうでもいい。
そんな風に考えて僕は食べ物さがしに歩き出した……自分に何が起こっているのか何も分からないままに……
しばらく歩いているとすごく不快な臭いがしてきた……古い血の臭いと……腐臭?
ただ思ったのが臭いから不快なんじゃない……食べ物を粗末にされた事に対して不快感がでていた。
あれ、何で勿体無いとか思うんだ?辺りに漂っているのは人間の血の臭いだってのに……
自分で自分の感覚に疑問を持ちながらも歩き続けるとその臭いの発生源に到着した。
あれは馬車の残骸かな大仰なエンブレムが付いて……ああ、これ王家の紋章だっけ?
そして馬車の残骸の周りには護衛と思われる兵士たちの屍が所狭しと転がっていた……そしてこれが不快感の原因か……全部腐ってる、とても勿体無い……すごく残念、生きてる人間はいないのか。
でも屍の中には身なりの良さそうなのや女性はいなかった……つまりこれを起こした連中に連れ去られたりとかしたのかな?
ふむ……この付近にいたりするのかな?血の臭いがずっと続いてる……これを辿っていけば生きた人間はあるのかな?
僕はこの血の臭いの道を辿っていった、生きた人間を求めて……あれ、僕はなんで人間をエサと思ったのかな?……まぁいいや気にしない。
更に暫く歩くと洞窟みたいなものが見つかった。
見張りは二人……装いは盗賊なんだけどやけにきっちりしてる、まるで軍隊のような……ん?軍というより騎士なのかこの世界だと、もしくは密偵とかスパイとか?
まぁ関係無いか、あれがなんであれ僕にとってエサでしかない、見た瞬間に食べようと思った。
ただあたりに漂っている匂いは一人二人の匂いではない……もっと大勢……少なくとも30人以上は居そう。
そうなってくるとこの二人を食べている時に騒がれて残りの人数に気づかれたくない……気が付かれない様に食べるには……丸呑みか?
その考えにいたった時何故か残念と感じた、じっくりゆっくり……味わうように食べる事が出来ない事にすごく残念と思ってしまった。
しかしここにいる人間を一人も逃がさないように食べ尽くすには最初で躓くわけには行かない、仕方無しにこの二人は丸呑みにすることに決めた。
気が付かれない様に私は洞窟の頭上に移動する、丁度二人の真上に位置するところだ。
そして位置に付く……うん、気付かれて無いね、それではいただきまーす。
僕は見張り二人に向かって頭上から奇襲を掛けた。
両手がいつの間にか巨大な口に変化していた……へー今の僕ってこんな事も出来るのかなどと人事のようにその都合のよい変化に感心していた……それでは~
― バクン!! ―
一瞬の出来事……きっと見張りの二人は何が起きたのか分からなかっただろう、だって丸呑みの即消化コンボ、つまり即死だし……踊り食いでもすればよかった?
まぁ気にしない、逃げられることもなく終わらせれたし……それにしてもこうなってからの初めての食事、食べたものは人間。
抵抗無く、嫌悪感無く人間を食べた……そしてその味に歓喜に震えた……言い表せ無いほど美味だった。
記憶に残る一番美味しかったものは死ぬと思って食べたヒューマンイーターであったがそんな物とは比べられ無いほど人間は美味だった。
これを丸呑みしてしまったなんて何てもったいない……味わって味わって食べなければもったいない。
……ああ、だからか……だからヒューマンイーターは人間を少しずつ少しずつ捕食していくのか……妙に納得できてしまった。
ヒューマンイーターは人間しか食べれないのではない、人間しか食べたくないのだ……こんなに美味しいものを知ってしまったヒューマンイーターは人間だけを食べていたいのだろう。
……ふと思った、これ女の子や子供だともっとおいしいのかな?
洞窟の中からは人間の匂いがいっぱいしてる……ああ、ああ、とてもとてもおいしそう……ここにはご馳走がいっぱい居る……こんな事を考えてしまう僕はもう完全に人間では無いのだろう、しかしそんなことはこの感覚の前では些細な事としか思えない。
もっともっともっともっともっとおいしい物が食べたい……おいしい人間が食べたい……
僕は洞窟の奥へ進んでいった……ここにいる人間を食べつくすために……待ってて、僕のご馳走……