伏線
「さて、♂オーガ君の結果が出るまでの間に火事を何とかしなきゃね~」
僕は今回はちょっと特殊な仕様にして♂オーガ君にヒューマンイーター化の仕込をした後井戸の外に出た、そこは相変わらず火の海……いや、さっきより火力上がってない?
ついでに言うならこれだけの炎を維持できるような酸素濃度じゃない、にも拘らず火力が上がっているのだ……つまりこの炎は燃え続けるのに酸素を必要としないということか。
「流石魔法の炎と言うべきなのかな……」
この段階でこの火事を消すには……正確にはこの炎を消すには通常の消化方法は使え無いということだ、本来炎、つまり燃えるとはどういうことか、科学的に言えば例外を除き「燃焼」、物質が熱と光を出して酸素と激しく化合する事だ。
簡単に言うと「酸素供給源」「可燃物」「点火源」の3つが無いと燃えない、まぁさっきも言ったけど例外はあって塩素と水素の混合気体に火をつけると燃えるなどあるけど……うまく調整しないと爆発するし今回に関しては関係ないかな。
取り合えず火を消す方法は基本「酸素供給源」「可燃物」「点火源」の三つのうちどれかを断ってしまえば消えるわけだ。
なので当初この火事を消す方法に考えていたものは以前水路堀に使った土魔法で地面を隆起させその後火事現場を全部覆い尽くし「酸素供給源」を断って消化しようと思っていたのだけどどうやらこの方法は使え無いようだ。
酸素が無くても燃え続けるみたいだしねどうやってなのかこれ魔力を内包していて魔力が尽きるまで燃え続けるんじゃないかな……て事は覆い尽くしちゃうと火は消え無いわ覆い尽くしたが為に内部温度は加熱して上昇していくわ多分とても大変な状態になる。
最悪の事態を想定すると覆い尽くした内部が加熱に加熱を続け溶岩状態になる可能性もある、そうなってくると火事現場の井戸の中に放置してきた♂オーガ君が此方側になっていると御陀仏してしまう……いや、オーガのままでも熔岩熱の蒸し焼きは流石に死ぬか。
そこまでならなかったとしても問題が色々出てきそうなので方法を変えようか。
魔法で魔力を吹き飛ばして消していくのも広がる速度が早いから消しきれ無いしねぇ……と言うわけで非常にめんどくさい方法を取らざるを得ない。
その方法は「可燃物」を取り除くと言う方法……まぁ昔ながらの方法だね、ほら時代劇とかで「火消し屋」みたいなものみた事ない?あれは火事が起こった場合周囲の建物を取り除きそれ以上火事が広がらないようにしていたものだよ。
つまりやろうとしていることは火事が拡大しないように火事周辺の木々を取り除くと言う方法をとります。
普通森……山火事の様なものを消す時一人で何て広範囲に燃え広がったらどうする事もできないだろうけどこの体のスペックなら何とかなりそう……大概化け物だよね〜
「と言うわけで、やりたくないけどやるか」
さて、何故やりたくないのか……それは偏に方法の所為だ、どうやって木を取り除くのかもう気が付いているかもしれないけど『食べる』事です。
木を引っこ抜いてもよかったんだけど、問題は引っこ抜いた木をどうするかだ。その辺に置いておいたら取り除いた意味無いし木を移動させてる時間は無い。投げて遠くに飛ばす事も考えたけどそんな目立つパフォーマンスなどしたくはない。そうなると『食べる』が一番効率がよかったのだ、ある一点に目を瞑れば……
目を瞑るある一点、それは滅茶苦茶不味いということ……幾ら僕が不味いものを食べられるからといって進んで食べるなんて事は断じて無い!!無いったら無い!!
そんな不味いものを東京ドーム数個分はあるであろう広さにある木を永遠と食べ続けるのだ……これどんな苦行何ですかね?
― バクバクバク…… ―
……ウップ、流石に吐きそう、でもまぁ可燃物は取り除けたのでよしとしよう。むこう一週間は野菜食べたくないけどね〜……え、野菜と一緒にするなって?植物には違いないから気にしちゃ駄目さ♩
さて、後は待つだけという時変化が起こった。
火が消えた……それも突然に不自然に消えた、今までの炎はまるで幻だったのではないかと思うほどに、しかし焼け跡そのものは残っているので今まで見ていたものが幻覚だったとかそんなのではない。
「……何ぞこれ?」
正に何ぞこれである、僕が苦い思いして食べ続けた事は結局無意味に終わった……いや、結果としては無駄に森が無くなったので環境破壊の跡だけが残ったのか?
「よし、気にしない事にしよう」
事実を受け入れよう、そして受け入れた上で今までやっていた事は考えないようにしよう。
「……さて、やる事なくなったし♂オーガ君の様子でも観に行こうかそろそろ変化が成功していれば終わる頃かもしれないし」
取り敢えずわからないことは全部投げ出して井戸に行きますか。
そして♂オーガ君を放置した井戸に戻ってきました。
そこにあったのはメイリーの時みたいな巨大な水球では無かった、そこにあったのは巨大な水の蕾だった。
そしてその蕾は僕が到着すると同時にゆっくりと開いていった。
蕾の中には元オーガ君がいた、そしてその蕾は開き切っても変化が止まらず水の花びらが服に形成されていった。
変化が終わるとそこには水のドレスを着た麗人こと元オーガ君が目を瞑って立っていた。
スタイルはスレンダーな感じで水のドレスなので当然スケスケなのだけどいやらしさは感じ無い……なんと言うんだろう、スライム娘って言うよりウンディーネって感じと言った方が近いかもしれないそんな元オーガ君が目を開くといきなりお辞儀をしてきた。
「おはようございます母上様」
…………いやー、もう突っ込んでもいいよね?大抵の事ならスルーできるけど流石に突っ込んでいいよね?
「何で服を着ている!?」
流石の僕もこれには突っ込まないといけないと思ったんだよ。
「服なんて着てませんよ母上様」
「スケスケで意味は無いけどそれが服以外の何なんだ!?」
「これ全てからだの一部なのですが?」
可愛らしく首を傾げられた、うん可愛いよ可愛いんだけどね……どうして僕がここまで突っ込みに回らなければいけないんだ?僕ってボケじゃなかったっけ!?
何とも元の♂オーガ君の面影が全く無いよく分からないものが誕生した……これ本当に元♂オーガ君だよね?




