井戸の中の……
「誰かいないの?誰でもいいから助けてー!!」
僕はこんな所で時間を無駄にするわけにはいかないんだ!!何でもいい、この状況を打破出来るのなら悪魔にだって縋ってやる……そんな思いのその声が届いたのだろうか、確かに誰かが来た……来たと言うよりも井戸の中に落ちてきた。
- ドポン -
……イヤイヤイヤ、入ってきちゃ駄目でしょ!?これ救助対象が二人に増えただけだよね!?そんな事を思い入ってきた何かが浮かび上がって来るのを待っていたが一向に上がってくる気配が無い、何だったんだと思ったら突然水位が下がっていき足が着くようになった。はぁ!?何が起こってるんだ!?そう思っていたら水位が下がっていくにつれて何かが現れてきた。
現れたものは暗くてよくわから無いがシルエットだけなら……裸の女性!?これ一体どういう事!?水位はその女性の腰が出るか出ないかで止まった……何故そこだし!?
「いや、ここら辺で止めとかないと色々まずいかな〜と思って」
そしてその女性の第一声はそんな言葉だった……と言うか何に対してまずいのか分かりません、胸が丸出しな時点でアウトだと思います!!……と言うか心を読まれた!?
「それはそれ、これはこれ、まぁそれにしても驚いた……この体水に沈んだら浮かばないでやんの!しょうがないから頭が出るくらい水飲もうとしたら飲みすぎちゃった♪」
……意味が分からない、一体何を言ってるんだこの人は、人間がそんな事出来るはずないじゃないか、そもそもそのオッパイなら浮くんじゃないのか?……あれ、違うそうじゃない!!何で此処に人間がいるんだ?こいつ等は……こいつらの所為で……
「さてさてさて、僕の名前はユウ、人間じゃなくヒューマンイーターですよ~睨まれる様な事をした覚えは無いんだけどな……むしろ僕が君の所為で若干不機嫌で睨み付けたいかな~?」
「人間じゃなくヒューマンイーターねぇ……ありえないよ!そんな姿をしたヒューマンイーターがいてたまるか!!後お前が不機嫌なことこそ謂れが無い!!」
「あるんだな~……僕の期待を裏切りました!だから憂さ晴らしをしま〜す♪」
「何だその理屈は!?大体お前のような……うっオエ!!?」
何だ?何が起きた!?いきなり口の中に何かを突っ込まれた!?オエ……無理やり入ってくる……気持ち悪い、息が出来ない……苦しい、何で突然こんな目に……
「今君の体の中に突っ込んだのは僕の腕、つまりヒューマンイーターを君の体の中に入れました……ちょっと量が多くて体の外も顔まで覆われちゃって大変な事になっちゃってるけど問題ないでしょ♪……そろそろ始まるよ~」
この女が意味のわから無い事を言う、俺の体の中に……と言うかさっき口に突っ込まれたのは腕?よく見ると目の前の女は右腕がなくなっていた……そして再生していった……オイオイオイ!?何打その爆発的な治癒力は!?これがヒューマンイーターかどうかは置いておいて、目の前の存在が規格外の化け物と言う事……がっ……いががががが!?
(何!?何!?何!?イタイイタイイタイイタイイタイ!!?)
形容しがたい痛みがお腹から……お腹からだけじゃ無いこのネバネバした物がついてる場所、つまり内も外も全身が激痛に襲われた!
(ああああぁあぁぁぁああぁぁあぁ!!)
声を出す事も出来ずに痛みを紛らわせる事もできない……このまま俺は殺されるのだろうか?何でこんな事になってるのか理解できなかった。
「さて、余裕もないから事実だけ伝えるね〜今君はヒューマンイーターに体を食べられています。その激痛はその所為だね、このままなら君は全部食べられて終わりだよ〜♪」
(何を言ってるのか……ヒューマンイーターが食べる物は人間だけだ……俺のようなオーガ族……つまり人間が亜人と呼ぶ存在はヒューマンイーターの捕食対象外何だ……俺がヒューマンイーターに食べられる理由なんて……え?)
その時俺の右目に激痛が走り……気が付けば右の視界がなくなっていた……
(え?え?え?何だこれ……俺の目が無い……目がない……無い……ナイ……あ…ああ……アアアアアアアアァァァァ!!?)
「もう一度言うよ、君はヒューマンイーターに食べられてます♪ヒューマンイーターはね……人間しか食べられ無いわけじゃなく、人間を好んで食べてるに過ぎ無いんだよ〜つまり〜人間じゃ無いものも食べられるんだよ〜」
(嘘だ嘘だ嘘だ!!?何なんだそれ!!何なんだ他所の事実は……もしそうなら俺は……俺は食われてる!?)
目の前の女の言葉と今起きた現実が俺に絶望を突きつけてきた…
「でもそんな貴方に朗報です♪貴方が助かる方法をお教えしましょう〜それは~……」
― 君を食べてるヒューマンイーターを食べることです♪ ―
何を言われたのか分からなかった……理解できなかった……ヒューマンイーターを食べる?
そう言うとその女は井戸をするすると登っていきいなくなった……そして俺の体はすごい速さで崩壊し続けていく腕が、足が、お腹も既に無い……食べろ?こんな状態でどうしろと……何にしろこれで終わりなのか……助けなければいけない者を残したまま?
― ガブ……ガツガツガツ ―
いつの間にか俺はこのよく分からないものを食べ始めていた生きるために……死にたくないからもあるがそれ以上にまだ死ぬわけにはいかなかったから。
俺は一縷の望みに賭けあの女の言葉通りに食べ始めた……食べて食べて……食べ続けた




