本能
「うえ……ヒック……うわ~ん」
― グーグー ―
…………幼児退行か?いや、見た目7歳位だから見た目相応とも言えるんだけど……お姫様、あんた元々はあの王女様だったでしょうに何でそうなった?
んーでも両腕もげててボロボロの状態で泣いてるだけなんだからむしろ強いのか?
「……はぁ、色々言いたい事あるんだけどお姫様、どうしてそうなってるの?」
「ヒック……使ったら……手が溶けて……痛いし……ご飯……でもでもでも」
― グーグー ―
……えーっと、これは僕に青狸位の理解力を示せと申すのか!?いやさ、確かに今は色んな事出来ますがチート道具なんか持ってないよ、と言うか今の僕等は巨人アンに襲われても撃退できるだけの戦闘能力はありまっせ?……そのお姫様はこんだけボロボロになるって何をした!?
「分からん……取り合えずお姫様落ち着け、そんな状態でも僕等は死ぬ事ないから。はい、意味無いけど深呼吸!!」
「っ!!?スー……ハー……スー……ハー……好い匂いがする!」
― グーグー ―
……会話できてるのに会話できてないこの感覚は何なのだろうか……いかんなぁ、僕もまだ大概人間の感覚が残ってるってことなんかね。と言うかお姫様の雰囲気が変わった?
「そうだ、ユウ私の手が無くなっちゃったの元に戻んないの、元に戻して」
― グーグー ―
考えていたらお姫様は落ち着いたのか好き勝手言い出した……何だか突然変わりすぎじゃない?まぁいいけどさぁ~取り合えずお姫様の腕を元に戻す方法でも探しますか。
「いきなりそんなこと言われてもそうなった経緯がわからないと直しようがないよ、普通は簡単に直せる物だし……と言うか基本勝手に治るし」
「え~私ずっとこのままだったりするの……」
― グーグー ―
「……ねぇ、さっきからお姫様からしてる音何?」
定期的にお姫様の体から聞こえてくる音が気になって聞いてみることにした……そしたら突然お姫様はもじもじしだした、もし顔色が変わっていたのならきっと真っ赤になっているであろう感じに……
「私の……お腹の音……」
それは本来なら聞き取れない位小さな呟きだった……まぁそれは人間ならの話だけど、存外便利すぎるねこの体!!でだ、その一言で大体分かってしまった。
「腕のことはこの際置いておいて、空腹ってことは上で何も食べなかったの?」
「あんなの食べ物じゃない!!無理!!」
「まぁ、無理なら無理でいいさ……何も食べなければその腕は復元されないしそのうち餓死するだけだからね」
― グーグー ―
何となく予想が付いたこのお腹の音は別にギャグと言うわけではない……恐らく危険信号を体が訴えているのだろう。そもそも僕等が身体を損傷した時どうやって修復しているのか、RPGのように失ったHPは回復魔法で回復……何てご都合主義は存在しない、無くなった物は戻ってはこないのだ。
それはおかしいって?僕の腕何度も千切れても元に戻ってるじゃないって?……そうだね、僕の場合は戻せるだけなんだよ、僕は今人間の形を保って入るんだけど……僕の体積って今どれ位在ると思う?
僕は現在50人の人間を食べてそれを自分のエネルギーに変えました……見た目は成人女性と変わらないけどその質量は人間50人分にもなっているのです。それだけの質量を保持しているのだから腕の一本や二本損失しようが再生能力がある僕には特に関係ありません……まぁ損失すれば総体質量は減る事に変わりはないのでどっかで補充しますが、因みにだけど保持質量に限界は感じないので多分食べれば食べるだけ際限なく総体質量は上がっていくと思われる……もし限界があってもそれはまだまだ先かなぁ、飢餓とまではいかないけど常に食べ続けたいと思えてるからね!!
でだ、僕の質量は結構巨大な物です……でもよくよく考えればお姫様ってヒューマンイーターになった今でも実は命の危機に瀕してるんだなと思った。だってお姫様の質量って人間だった時の手足のない胴体だけの質量と僕の片腕ぶんの質量しか保持していないんだもの……それだけしかない質量で行動可能な人の形を保持するとなると……七歳位の大きさと言うのは結構妥当なのかもしれない。そんな中で身体の損傷とか起こせば……再生なんて出来ないよね、再生するだけの質量を保持できていないんだもの……つまりさっきから鳴ってる音はお姫様の体が分かりやすく何か食わせろといっているのか……そうなると今のお姫様って人間としての部分よりも多分ヒューマンイーターとしての本能の部分が前面に出始めてるって事?
「う~……何か私の食べられそうなものってないの?」
― グーグー ―
お姫様が見た目相応な感じにおねだりしてきた……う~ん、この状態ってどう解釈したらいいんだろうね、人間と思ってるお姫様?それともヒューマンイーターとしてのお姫様?……まぁどっちでもいっか、食べるものがないかと問われたならば提示しようじゃないか。
「お姫様の食べられそうなものね~……じゃあ『人間』食べる?」
それは悪魔の囁きだったのかもしれない。




