異世界転生は絶望の始まり
まずは自己紹介しましょうか、僕の名前は現ユウ・リバー以前は結城裕也と言う名前でした。
はい、所謂転生者と言うやつです。
まぁ、こんな事言うと頭のおかしいやつとか思われるので転生後前世持ちとか一言も周りには言っていないんですがね。
さて、そんな転生後の世界なのですが……テンプレと言うか剣と魔法の世界です。
しかし現代日本にいた僕には不便極まりない理不尽で過酷な世界でした。
お話の中の主人公達はまぁよくもこのような劣悪な環境で歓喜して行動に移せる物だと思いましたよ。
正直こっちの世界に来て何度自殺したくなったことやら……なんでかって?現代のように生活保障してくれるわけないでしょ?労働基準法とか何かあるわけないし更に言うなら僕は平民……より下の家の三男、扱いも酷い物です。
三歳の頃から過度の労働を強いられ食う物もまともに出してもらえないのですよ……常に餓死の危機を感じ何度も死に掛けています……それから10年たって今は13になった僕ですが家族に捨てられました。
いや、捨てられたじゃないな。成人したから一人立ちしろと家を放り出された……捨てられたと一緒か……
この世界って13歳で成人なんですって、早くない?まぁ放り出された今となってはそんなの関係ないですがね。
さて、そんな今の僕の状態はというと、空腹レッドゾーンのガリガリの痩せっぽっち。
体の大きさは下手したら七歳の子供に負けるレベル。
身に纏っているものはボロボロの汚れた布。
そして生き倒れた……当然といえば当然ですね。
場所はわからない……ただ相当深い森の中なので元々殺すつもりだったのだろう。
そしてさらに悪い事に気がつけば今僕はモンスターに徐々に捕食されている最中である。
こんな事ならさっさと自殺しておけばよかったかもしれない、そうしていればこんな生きたまま食われ続ける拷問のような苦痛は味わう事はなかったのかもしれない。
僕を捕食しているモンスターの名前はこの世界で最悪といわれているモンスターである……その名前は『ヒューマンイーター』人間を食うスライムのモンスターである。
何故このモンスターが最悪といわれるのか……まずこのモンスターに対して人類の有効手段が少なすぎるからだ。
打撃、斬撃、銃弾、毒、電撃、放射能、超音波、氷結化、etc 人類が持ち得る攻撃手段が殆ど効果が無いのである。
唯一効果的と思える熱処理も溶鉱炉に叩き込む位しないと倒せないレベル……言っちゃうならター○ネー○ー2に出てくる液状のアレみたいな物である。
そしてこいつらの捕食方法は生きたまま少しずつ人間を食っていくのである。
既に僕の手足は捕食されて失っており抵抗できずに激痛にのた打ち回っているしかなかった。
……なんでこんな目にあってるんだろう?
生まれた時からまともな食事にありつけず過度な労働を強いられ最後は親に捨てられモンスターに食われる?……ふざけるな……ふざけるな!!
前世の記憶を持っていたら何かできるだろうって?……できるわけねーだろ!!知識を役に立てる機会なんて無かった!!知識を得る機会なんてなかった!!子供の戯言に付き合うような人間なんていなかった!!
毎日食べる物も飲み物も最低限すらなく泥水すすりながら生きてきた……毎日絶望しながらでももしかしたらと自殺と言う安易な方法をしないように耐えて……最後がコレ?……ふざけるな!!
痛い…痛い…お腹減った…痛い…お腹減った…痛い…お腹減った…………お腹減ったお腹減ったお腹減ったお腹減った!!
手足の痛みなんてどうでもよくなってきた……お腹減った……何か食べたい……
…………食べる?いや、飲む?……近くにあるじゃないか……
今僕を食べてるこいつはどんな味がするかな?
食べよう……食べよう……こいつを食べよう……僕の体を半分も食べたんだ……僕も食べていいよね?
― もぐ……もぐ……ずるるる ―
空腹はスパイスとか言うけど本当だね……こいつってこんなにおいしいんだ……
僕は夢中になって食べていった。こんな物食べたら死ぬって?どうせこのままなら食われて死ぬのだ、ならば空腹のまま死ぬより満腹で死にたいと思った。
食べる、食べる、食べる、食べる、食べる……ん?どうやらヒューマンイーターも異変に気が付いたようだ……捕食対象に食べられるとは夢にも思っていなかったのだろう、だけど僕には関係ない、だから食べる、ひたすら食べる……しかし何時までたっても満腹にならない、何でだろう?
視線を下に向けた……そこには本来あるべきお腹がなくなっていた。
ああ、既に底が抜けていたのか……これじゃ何時までたっても満腹にならないはずだ。
……でもこれはこれでいいのかもしれない……だってこれなら永遠に食べ続けられるのだから。
だから僕は食べ続けた……もう意味が無いからやめろって?それこそ関係ないよ……意味ならちゃんとある。
僕が口にし飲み込み食べられる……食べれるのだ、それに意味がある……だからその先がどうなっていようがそんなの知ったこっちゃ無い。
だから僕は食べる……僕の命が尽きるそのときまで……ヒューマンイーターは……この世界で始めて僕を満たしてくれる食料なのだから。
だから食べる、食べる……ひたすら食べる……ああ、頭にもやがかかってきた……でも気にするなそんな物は……僕が僕である限り口を動かし食べ続けよう……最後のそのときまで……
そして此処に一人の転生者の男の子の人生は終了した。