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三番勝負 剣鬼対獣人魔導士②

 轟音と共に、檜舞台が波打つ。ゾーグの剛腕は床板を打ち抜き、大岩が落下してできたようなへこみが、あちらこちらに現れている。

 ガルガザッハの強化魔法がかけられており、ロッシュの火炎で傷一つつかなかった檜舞台が、無残な姿をさらしていた。


「ガハハハハ、逃げてばかりでは勝てんぞ!」


 暴風の如き攻撃の中、ゾーグの顔に疲労の色は見られない。


「ふッ」


 猛攻の間隙を縫い、オーガスタの煌めく刃が反撃を狙うも、鎖仕込みの法衣に阻まれ効果は出ているとは言いがたい。


「そうら!」


 象の獣人ゾーグの長い鼻が、僅かに動きを止めたオーガスタに巻きついた。

 みりり、と鼻全体の筋肉を用いて圧着してくる。


「ガハハハハ!」


 高笑いと共に、オーガスタの身体は宙空に浮かび上がった。

 ゾーグのパワーは先ほどまでの攻撃で証明済みである。そのパワーを以て床に叩きつけられたら、いかにオーガスタといえど重大なダメージは免れない。勝負は決したも同然となる。


「――・・・・ッ」


 即座にオーガスタは詠唱、締め付けてくる長い鼻に、紫の炎がとりつく。


「うぁっちぃ!」


 紫炎にあぶられたゾーグの拘束が緩み、オーガスタは落下。


「むうん!」


 ゾーグの鼻が旋回し、紫炎は一瞬で霧散した。

だが、オーガスタの反撃は紫炎のみでは終わらず、炎に気を取られていたゾーグの顎めがけて、鋭く右足を蹴り上げた。


「び!」


 思わぬ顎部への衝撃に、ゾーグの身体がぐらりとのけ反る。


「ふ!」


 開いた胴体へ向けて、回転肘打ち。

 打ち上げた右足を振り下ろす下方への力と、胴回しによる回転の力を合力させた肘打ちの威力は、ゾーグの身体を浮かせた。


「ぐっぐぐぅ」


 両足で着地できずに、ゾーグは唸りながらべこべこの檜舞台に倒れ込む。

 ゾーグを見下ろすオーガスタの息も上がっている。


「凄まじい、凄まじい戦いです!」


 マイクを握りしめ、ジョージィが叫んだ。


「力と力のぶつかり合い、技と技の応酬ッ。ここまでは一歩、オーガスタ選手有利か!?」


「いやぁ、どうだろう。まだゾーグは強化魔法しか使っていない。本気の三割といったところだね」


 隣のガルガザッハの目は冷静である。


「ガハハハハ。やるではないか!」


 起き上がったゾーグは、大口を開けて笑った。


「だが、ここまでは肩慣らしにすぎん!」


 ゾーグが詠唱を開始する。


 すると、檜舞台の空気が俄かに湿ってきた。オーガスタが床に目を向けると、あちらこちらに水たまりができつつある。しだいに水たまりは大きくなっていき、大小の水たまりが繋がっていく。あっという間に、檜舞台は水で覆われてしまった。


「これは……」


 水が張られてからものの数秒で、オーガスタのくるぶしまで水位は上昇し、なおも水かさは増え続けている。檜舞台から溢れることのない増水は、オーガスタの足捌きに深刻な影響を与えていた。


「貴様の体捌きは大したものだ。だから、封じさせてもらう」


 悠々と歩を進めるゾーグに、増水の影響は見られない。水を蹴りつつ一歩一歩確実に足を踏み出している。


「……ッ」


 紫炎を飛ばして牽制するも、ゾーグの蹴り上げた水が瞬時に消し去り、全く効果が無い。そうこうする間に両者の距離は縮まり、床板をへこませた剛腕がオーガスタに振り下ろされる。

 水位は脛まで上昇しており、回避行動はできない。


「ぐぅ!」


 オーガスタは両腕を交差して剛腕の一撃を受けた。反撃は、ない。ただ受けただけ、ただ消耗しただけであった。


「「「「「「ゾーグ、ゾーグ、ゾーグ!!!!!!」」」」」」


 割れんばかりの歓声。


(魔法一つで、追い詰められたか!?)


 太ももに水の冷たさを感じながら、オーガスタは立ち上がる。


「さぁ、立ち上がったオーガスタ選手ッ、ピンチ、ピンチの絶体絶命ィッ。どうする、どう戦う!反撃の糸口はあるのか!?」


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