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くるくると世界が廻る。


楽しげな笑い声が響く。


声からして幼い子供のようだ。


不意に興味を惹かれた。


何が楽しいのだろうか?


ゆっくりと瞼を開けて、辺りを見回した。


「ここは・・・?」


真っ白な空間にぽっつんと立っていたのだ。


「お姉ちゃん、遊ぼうよ。」


右腕を引かれ、視線を右斜め下にやる。

愛らしい笑顔の少女だった。


「何して遊ぶつもりなの?」

「鬼ごっこ!」


その無邪気な笑顔には勝てないだろう。


小さく頷くと少女は、駆け出した。


「お姉ちゃんが鬼だよ。」


その言葉に目をつむり、数を数えた。

そしてちょうど百数えたところで目を開け、周りを見渡す。


それから歩き出す。


歩く度に辺りの風景が変わっていく。

見た事のある、反対に見た事もない場所もあった。


時折、クスクスと笑う声が聞こえる。


どこからか見ているのだろうか

そして大分歩いた所で立ち止まる。


「これは・・・・・」


燃えていた。


炎に照らされ、飲み込まれるのは美しい風景だったはずの場所

かつて見た光景であり、そしてけして思い出したくない場所だ。


「嫌・・・だ・・・ここは・」


後ずさりをし、目を背けようとする。

だがそれを拒むように後ろに下がれなかった。


後ろを見て、息を呑んだ。


隠れていた少女が立っており、その顔には年齢不相応な表情が浮かんでいたのだ。


「お姉ちゃん・・・・どうしたの?怖いの?」

「お、お前は、誰だ」


言い知れない気配に警戒する。


「私?私はね。


















貴女よ。可哀相な私」


伸ばされた手、触れた手は冷たくそして、紅く濡れていた。


バッ


荒い息が漏れる。


今のは何だ。なんて胸糞悪い夢だ。


イライラとした感情が浮かぶ。


「最悪だ・・・」


舌打ちし、おもむろに時計に目をやる。


午前2時25分


真夜中だ。


もう一度寝直すしかない。

体を再び横にし、リーナは目をつぶる。


さてどうしたものか。


内心考え込むが、方法なぞ限られている。


「やはりごまかすか。面倒だ。」


ボソリッと呟きつつ、足を動かす。


まさかこれだけ魔力を抑え込んでいるのにコレが出るとは

目の前には見目麗しい黄金の瞳で見つめる男が一人


まぁ普通の場面だったなら有り得る話しかもしれなかったが、今は授業中


しかも『使い魔召喚』授業の真っ只中である。

男の下には召喚の陣が輝いている。

痛い視線にムカつきを覚えながら、男と向き合う。


「『どうやらお主が我の召喚者のようだな』」

「初めまして、リーナだ」

「『ふむ、お主はもしや、黎明』「何の話しだ?」『・・・・いや何でもない』」


どうやらこの使い魔はリーナの正体に気付いているようだ。


仕方がない、魔力のオーラは完璧に変えたつもりだが、流石に神級クラスには無意味のようだ。

そう目の前に立つ男は一見大したことはなさそうだが、神級しか持つことのない宝玉を額飾りとして持っていたからだ。


因みにランクは神級、最上級、上級、中級、初級となっている。


付け加えるなら宝玉はあるランク以上の者たちしか知らない。

かなり高い地位にいる目の前の男にどう反応すれば良いのか判断に迷う。


しかし、考えている時間はない。


周りにいる連中が騒ぎ始めたからだ。


面倒だが仕方がない。上手くごまかすか。


「改めて私はリーナ・アシュレイ。ランクDよ。あなたは」


(話しを合わせて。詳しい話しは後でするから。)


念話を送る。


すると


「『俺は人狼のガイ。契約するか?』」


ちゃんと答えてくれる。


「ああ。よろしくお願いする。」

「『ならば私に手を差し出せ。』」


言う通り手を差し出す。


手が触れた瞬間勢い良く魔力が吸い取られる。


抑えているから魔力を吸われると多少だがクラッと眩暈がする。

顔に出さないようにしながら契約をしたガイを睨む。

だがガイは平然とした顔をしている。


ちょっとムカつくんですけど

シメてやりたい


沸き上がる殺意が止められない。


それに気付いたのかガイが小さく首を振り周りを見ろと言わんばかりに視線をリーナの後ろに向ける。

それには内心舌打ちしつつ、大きく深呼吸し体内の魔力をコントロールする。


大分良くなってきたな。


最後に大きく息を吐き、目を開く。


「どうするガイ?一度帰るか?」

「いや、いても良いならこのままいさせてくれ」


頷き、リーナはシャインの元に戻る。


好奇心の塊の彼女に何を言われるかと頭を悩ませながら

最強のリーナを悩ませるなんて、実はシャインはさらに最強なのかと言う疑問が浮かぶ。





雨が降り注ぐ。


大地には無数の屍


人間の他にも魔物も混ざっているが大多数は人間のものである。


「すまない。力不足の俺を許してくれ」


静かな慟哭をもらしたのは屍達の中央に佇む青年だった。

自らも肩から血を滲ませ、返り血を顔に体に浴びていた。


「決して忘れない。この犠牲を、哀しみを、俺は決して忘れたりしない」


強い決意と共に青年はその場から消えた。


「これは酷い。あまりにもひど過ぎる」


青年が消えて間もなく数十人の人間がこの場に現れた。


「全滅してしまったのですか?」


女性が唇を噛み、目を逸らすまいと前を見つめつづける。


「遺体の数からしておそらく。たとえ生き残っていてもこの場にいないでしょう。死の匂いを嗅ぎ付けた輩が来る恐れがある。」


辺りを見回していた老人が断言する。


「第三隊は全滅した。今は安らかな眠りを彼等に」


年若いローブ姿の男が杖を翳す。


「『闇光の褥』」


淡い光を放ち、大地に臥せる者達を包む。


そして光が消えていくと無惨な姿を曝していた者達は一様に安らかなものへと変化していた。


「後は第ニ次援護部隊に任せましょう。」


悲痛な表情を浮かべ、だが決して目を背けた訳でもない。


「まだ我々にはやる事がある」


皆、背を向け二度と振り返らなかった。


「この戦いが最後のものになるように、もう三回目の魔族大戦が起こらないように」


祈るような呟きと共に







ガシャーン


「一体何事ですか、マスター?」


心底うんざりげな声で青年が入ってくる。

それを愛想笑いで返す男ギルドマスターギイ


「マスターそれで今度はなにしたんですか?怒らないから言ってください。」


まるで子供言っているようだが両者は気にしていない。


「簡潔に言うと躓いて書類の山を崩し、衝撃で近くにあったコップを割った。」

「・・・・破壊魔。マスター『黎明』の事よく言ってますが、マスターのほうが破壊魔だと俺は思います。」


呆れきった表情で言われ、ギイはムッとしたようだ。


「どこかだ。あいつよりなんで俺がだ?」


心底分からないと言った表情のギイに青年がどこからともなくぶ厚い手帳を取り出す。

それをめくってギイに突き付ける。


「確かに『黎明』は破壊魔ですが、ちゃんと後で修復していますから。その反対にあなたときたら」


何時までも続きそうな気配にギイは無視を決め込む。

いちいち聞いてたら身が持たないからだ。


それにしてもリオンがちゃんと修復しているとは、本当に槍が降ってくるかも


思い浮かべ、ギイは机に顔を伏せる。


だんだんと眠たくなってしまったのだ

そしてそのまま居眠りを始めてしまう


それから、青年がギイの居眠りに気付くのは大分後だったと後から聞いた。

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