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目の前には蛇に睨まれた蛙のように硬直するギルドマスターギイが一人

「説明して貰おうか?ギルドマスター様?」

「お、落ち着け、リオン。話せば分かり合える・・・」

「分かり合えないからここにいるんだけど?それに俺は落ち着いているよ。」

確かに落ち着いているだろう。

優雅にお茶を飲み、静かな平淡な口調なのだから

しかしギイに向けられている冷たい眼差しと殺気は隠されていない、いや隠す気さえないのだろう

背後から黒く渦巻くものが見えている、絶対に

「俺が通ってる学園だって事知ってたよね。もちろんね?」

「えっと、うん。確かに知ってはいた。だけど‥‥あの・・・」

「なら問答無用だ。死にさらせ」

素早い動作でギイの背後を取ると一気に手に溜めていた火の球を叩き込もうと手を振り上げた。

しかし、それは横から音もなく伸びてきた手に阻止される。

「チィ、良い所で邪魔しやがって」

「‥‥‥その人は仮にもギルドマスターですよ?

まだやって貰わなければならない仕事が残っているので今使い物にならなくなるのは困ります」

リオンと同じようにフードを目深に被った、声からしてまだ若い男性の言葉に舌打ちして元いたソファーに座り直す

「見学と言っても下の階で行われ、顔を出すのはランクAのギルド員。一部の人間以外ギルド員にも正体を隠している、しかも学園でもを普通を装っている貴方に気付く者はいないはずです。」

「確かにそうだが、事前の報告無しに聞かされたんだぞ。おまけにギイなら調子乗ってやって来て俺に声をかける可能性もある。」

その言葉に納得したのか頷きを返してくれる。

「マスターはアホですからね。」

一言でギイをへこませる。

「酷い。カルナくん酷すぎでしょう。」

「酷い、ですか。それは良いことを聞いた気分ですね

とても光栄ですよ?」

青年-カルナにっこりと笑う。

再び落ち込んだギイを心底うっとうしそうに見遣り、リオンはため息をつく。

「仕方がない。見学会は絶対参加だ、諦めて出るが、ギイお前何があってもくるなよ。来たら‥‥‥‥」


ごくり


大きく固唾を飲み、リオンを見上げる


「来たら?」

「もちろん×××して×××で××××から下から×××してあげる

それから×××が×××するまで可愛がって貰えば良いじゃないか?」

満面の笑みが眩しいが、言っている事は恐ろしい

すでにギイは想像したのか涙目だ

「お返事は?ギイ」

「はい。誓います。絶対に行きません」

「良い返事でよろしい」

完璧に上下関係が逆であり、マスターの威厳もへったくれもない


まぁ、最初から無いに等しいが


「それよりも、仕事は?」

「そうですね、リオンに向いてる仕事はと‥‥」

パラパラと書類をめくるのを横目に今だ頭を抱えて、へこんでいるギイにリオンは呆れたため息を漏らす。

「いい加減に立ち直れば?それが唯一の取り柄なのに」

それは慰めると言うよりさらに落ち込ませている

「リオン、見つけましたよ。森を荒らすファイヤー・ドラゴン10頭の討伐です。」

「珍しい、めったに群れで行動する奴等じゃないんだが」

面倒くさげに立ち上がる。


ファイヤー・ドラゴンとは一匹で小さな国なら一夜もかけずに滅ぼすほどの力を持ったドラゴンなのだ。

しかし、その習性ではよほどのことがなければ森深くで静かに生きていることが多いため、あまり人が見ることはない。


「しかも10頭もの群で行動してるとは、何かあったと考えるべきか」

「それではその調査も行ってくれますか?」

「そうだね、たまには親切心を出さないとマスター会議でうるさいからな

この前の会議は最悪だった。」

うんざりげに呟き、首を振った

「そうですね。あの方達は貴方がいらっしゃるのを楽しみになさっていますよ」

「あいつらか。マジウザいんだよな。消えてくれないかな」

「絶対無理ですね。言うじゃないです?憎まれっ子世に憚ると」


いや、きっぱりと言わなくても薄々気付いていたけどね、あいつらのしつこさ加減は


「仮にも二つ名を授けられたあの方達にそこまで言えるのは貴方だけですね『御柱‐クロウ‐』」

「貴方はそれ以上じゃないか?『狂乱の狼‐アギストラトス‐』?」

「二人共なんか寒いから辞めて、いや辞めてくださいませ・・・」

「「何か言った(いました)?」」

部屋の温度が下がった事てギイが仲裁に入ろうとするも二人同時に振り向かれて黙るしかない

「まぁ、ここで騒いでいても仕方がないな。奴らに会った時に対処は決めるか。」

立ち上がり、二人に軽く手を振る。

「じゃ、またね。」

リオンの言葉とともに風が身体に纏わり付き、フードが外れて顔があらわになる。

最初に目に映るのは漆黒の長い髪、前髪は目に掛かりその素顔を半分隠す姿はあのふわふわぽやぽやしていたリーナだった。

影の薄くどこか抜けた印象だったのに、今はその姿からは似合わない圧倒的な傲慢さと威圧感をたたえていた

実に無感動そうに一つ鼻を鳴らし、リーナは姿を消した。

それを見送り、ギイとカルナは大きなため息を漏らす。

「リオンは気づいてなかったみたいだな。自分が《リーナ》の姿で来たことに」

「そうですね、完全に《リオン》と《リーナ》を使い分けていたから今まで見たことがありませんでしたが、《リーナ》の姿で《リオン》はかなり動揺して来たのがうかがい知れますね」

そんな二人に麗らかな日差しが降り注ぎ、暫し静寂に包まれたのだった。

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