壱
「さて、今日は我が国の歴史について復習していこう。」
子守歌のような先生の声をぼんやりと聞き流しながら、窓の外をぼんやりと見る。
今日も良い天気ね日向ぼっこしたいくらいだわ
長い黒髪を両サイドで三つ編みにし、前髪は目に掛かり、学校規定の制服、影の薄いオーラ
一見して野暮ったい地味な女子生徒がニコニコと微笑みながら堂々と授業を無視して窓の外を見つめている
「~と言う事だ。次にギルドについてだが、アシュレイ、リーナ・アシュレイ、我が国にあるギルドの数及びに正式名称で答えなさい。」
突然の質問に誰も息を飲んだ。
「我が国には正式に認められているギルドは6つ有ります。
構成員の多い《アルンボルグ》、《ウェールズ》、次に中規模の《カナリア》、《刹那の獣》、《クィーン・クラウン》、そして最後に少人数の構成員ですが世界に名を轟かす《聖者の双剣》です。」
のほほんと微笑み答えるのは授業を上の空で聞いていた地味な少女、リーナ・アシュレイだった。
リーナは答え終わると再び、窓の外を見る。
その姿を少し悔しげに教師が睨み付けている
授業を堂々とサボっているリーナに恥をかかそうとして、返り討ちにあったからだ。
「よ、よろしい。正解だ。」
引き攣った笑いを浮かべ、教師は先に進めるため再び説明を始めた。
間が抜けた音と共に生徒達は一斉に昼食を摂るためにおもいおもいの場所へと移動を始める
その中を実に眠そうなリーナが歩いていた
「リィ、聞きましたよ。ハガン先生に一泡吹かせたって?」
背後から抱き着いて来た少女の言葉に軽く首を傾げながらも軽く頷く。
「暑いわ。やっぱり人の体温は冬が一番いいわね、シャイン」
シャインと呼ばれた少女は唇を尖らし、リーナの頭をなで回す
「相変わらずぽやぽやしてるね。
でもちょっと意外だったな。リィがギルドの数と名を知ってるなんて普段全然こんな話に興味なさげだったから知らないかと思ってた」
「別に知ってたから答えただけよ、一般常識なんでしょう?」
「まぁ、知らない人間がこの国にいる事が信じられないくらいにね」
さっさと荷物をまとめながら、リーナは大袈裟な親友を不思議そうに一瞥する。
「特に《聖者の双剣》は世界で一、ニを争うほどの有名かつ最強のギルドよ。憧れちゃうわ」
うっとりとするシャインにさらに首を傾げるリーナ
「ギルドってそんなに良かったかしら?」
「良いに決まってるでしょう。ああ、一度で良いから会いたいわ。」
「会いたい?誰に?」
「そりゃあもちろん、《聖者の双剣》ギルドマスター【孤剣‐レイヴ‐】に、番犬と言われる【狂乱の狼‐アギストラトス‐】、それから一番会いたいのがギルドいえ世界最強の【御柱‐クロウ‐】よ。」
興奮仕切った熱い口ぶりで断言する。
「【孤剣‐レイヴ‐】はギルドマスターだから顔は分かっているし、【狂乱の狼‐アギストラトス‐】はまぁ顔は隠してるけどある程度の情報公開はされてる、でも【御柱‐クロウ‐】だけは全く情報が公開されてないの。」
「ふ~んそうなんだね」
「何その相槌は。世界中の人間が憧れてやまない《御柱--》よ、会ってみたいって思わないの?」
ギロリと睨むシャインにリーナは軽く首を傾げる。
「まさかとは思うけど今度の社会見学会に不参加するつもりじゃないでしょうね?」
「社会見学会?ああそういえばもうそんな時期だね。今年はどこの村に行くの?」
のんきげに微笑みシャインを見る。
するとにんまりと笑い、シャインはリーナの肩に手を置く。
「フフフ、リーナ聞いて驚くななんと今年は趣向を変えたのかギルド見学に行く事になったのよ。」
その言葉にピクっと反応し、リーナが微かに表情を変えシャインを見つめる。
「ギルド?それはもうどこ行くか決まってるかしらの?」
「まだ正式には決まってないけど。でもすでに学校が《聖者の双剣》に話しをつけて見学の許しは出てるらしいのよ。だ・か・ら」
「ほぼ《聖者の双剣》で見学会が開かれるんだね。」
それはそれは楽しげにぽやんと笑い、立ち上がる。
「シャイン申し訳ないけど、用事が出来たから先に帰るね。」
今までけだるげにしていたのにリーナはきびきびとした動きで帰り支度をし、手を振って一目散に教室を出て行った。
「リーナのあんなきびきびとした動き初めて見たな。
明日は何か良いことありそう」
目のしばたかせたシャインを一人残して