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拾参

「ふん、人間の醜い虚勢かい?」


美女はリーナを嘲笑い、周りを見渡す。


「これだけの魔力があれば、さぞあの方もお喜びになるだろう」


妖しく笑い、小さく手を振った。


その瞬間、悲鳴が響き渡る。


会場の観客席に多数の魔物が現れたからだ。


「殺りなさい、ギルティーハウンド。魔力を集めるのよ」


その命令に魔物、ギルティーハウンドが生徒達に襲い掛かった。


次々と振り上げられるギルティーハウンドの牙や爪の前に、恐怖に歪んだ生徒達が叫んだ瞬間、静かに告げられた。


「ホーリーデッド(聖なる死)」


それは、呪文だ。


しかも光の魔法最上級で、限られた人物しか使えない光の最強呪文だ。


光の鋭い刃がギルティーハウンド達に死を与える

会場内すべてのギルティーハウンドがこの刃の前に倒れた。


誰もがこの光の最強呪文を発動させた人物を凝視する。

凝視されても、その人物は表情を崩さない


それどころか不敵に腕を組む。


「今のはお前がやったのか?」


驚きに目を見開くミシェル


それに少しうっとうしそうにみやり、それから表情を凍り付かせた美女を睨みつける。


「手駒はいなくなったぞ。」

「ふん、言わせておけば手駒は腐る程いるんだ。いい気になるのも今のうちだよ」


鋭く睨み返して美女が指を鳴らす。


すると再び、会場に魔物が現れる。


先程のギルティーハウンドではないようだ。

「レイティング、やっておしまい」


美女の近くに転移して来た、レイティングと言う魔物が襲い掛かる。


しかし、一撃で消滅させられた。


「話にならないな」


レイティングを冷めた瞳で見つめ、それから美女を見つめる。


「名前を聞きたいね。私は『魔獣の女王ベルベット』」


美女ベルベットは妖艶な笑みで見つめてきた。


「名前、か。良いだろう。俺はライルだ」


そう魔物を手玉に取っていたのはライルであった。


「活きの良い子は好きよ、でも生意気な子は大嫌いなのよ」


そう言って微笑み、なんの前動作もなく黒い球が次々とライルに降り注ぐ

だが、ライルは焦る事もなく避け、流れ球がミシェル達に当たらないように防御の盾まで用意してあった。


「次はこっちの番だ」


そう言い切った瞬間にはもの凄い勢いで炎の矢が無数に魔物やベルベットに飛んでいた。

これには多数の魔物がやられ、ベルベットは苦々しい顔でライルを睨む。


「大分減ったな。」

「ふん、魔物は沢山いるのよ。また呼べば良いだけだわ」


余裕そうに笑いは浮かべてはいるがベルベットの瞳に多少の焦りが浮かんでいる。


「そうか。ならこちらは倒すだけの話だな」


こちらは本当に余裕そうにベルベットを見ている。


「無駄口が叩けないようにしてあげるわ。」


そしてベルベットは一旦目を閉じ、囁くように告げた。


「『出でよ、いにしえより恐れ奉られしモノよ』」


音と共に辺りには深い霧がかかる。


「何これは?霧が何故」


ベルベットの訝しげな声と共にちいさな風切り音がし、潰れたような音が響いた。

そして次第に霧が晴れ、ベルベットは愕然となっていた。


確かに召喚したものが、自らの血の中に倒れ伏していたのだから


「なんだと『ビィ』が切られている」


心底驚いたのか口走るように叫ぶ


「情けない奴だな。遊んでいるとは・・」


背後から聞こえて来た声にベルベットの背筋に冷たい汗が滲んだ。


何か嫌な予感がする

振り向けば逃れられない何かに捕まりそうで


どうしても振り向く事が出来ない。


こんなのははじめての事で、つい先程までの余裕が失われ始める。


「ふん、カタをさっさと付けろ!話はいつでも出来る」


「俺の話を聞いてくれるのか『蒼王』」


その名を聞いた瞬間振り向き、ベルベットは見た。


しかし言葉は発する事はできなかった。


言葉を発する前に消滅したからだ。


「瞬殺だね」


喜ぶライルを軽く睨み、付いて来いとばかりに顎で進行方向を指す。


そして残されたのは眠りの魔法に掛かった生徒や教師だけであった。

重苦しい空気が漂う中、耐え切れなかったのかギイが口を開く


「それで、どうするつもりだ?」

「どうするつもりもないよ。俺はね」


楽しげに笑うライルと反対にリーナの機嫌は最低である


「ねぇ『蒼王』」


ライルの呼びかけにリーナは見向きもしない。


「大体の事は分かった。ご苦労さんだったな、休んでも良いぞ」


ギイの言葉に頷き、ライルがリーナに手を差し出す


「一緒に行かない?」


その手を冷ややかに見つめ、側にあった椅子に座る


「ギイと話がある、去れ」


冷たく言い捨てあとは見向きもしない


完全に拒否されている。


「仕方ないな、またね」


そうにっこり笑い、出て行った

しばし沈黙していたが、ギイが躊躇いがちにリーナを見る。


「リオン、いやリーナ」


その言葉にリーナがギイを見た。


顔は先程の冷たさはなく、どこか戸惑っていた。


「なんだ?」

「はっきりと嘘つかずに答えてくれ」


本当にいきなりだ


「ライルが気に入らないんだな?」

「ああ」

「それはリーナとしてか?それともリオン『蒼王』としてか」

「どちらもだ」


何が聞きたいんだ、一体


「理由はなんだい?」

「気色悪い。あのヘラヘラと俺に近付くのが、ギイを俺よりも弄るあいつが嫌いだ」

「・・・・・どう取れば良いんだろうか」


なんとも微妙に嬉しくない理由に肩を落とす。


そんなギイを不思議げにリーナは見つめ、それから不意に顔を近付けた。


「ど、どうした?何か・・・」

「あいつは嫌なんだ。ねっとりした目で見るから」


微かに表情を歪めて、少し慌てた様子のギイを気にせず愚痴を零した。

すると、慌てた様子から一辺困ったような何処か怒ったような表情を浮かべ、リーナを見る。


「結論から言うと」

「大嫌いだ。力がある優秀な人物だと分かってるが」


肩を落とすしかない


「優秀だとは認めているんだな」

「実力は評価する。だが人としては全く信用してない」


またはっきりと告げられ、仕方ないとばかりに大きなため息を漏らす。


「まぁ、奴の話しは分かった。本題に入ろう」


再び空気が張り詰めた。


そして無表情のリーナが冷たい声音で語り始める。


「俺から見聞きしたのは、まずそうだな。奴は『魔獣の女王ベルベット』を名乗っており・・・・・」


ギイは厳しい眼差しでそれを聞いていた。

一通り聞いた後、ギイは重苦しい表情で考え込み


「リーナ、ご苦労だったな。休んでおけ」


それから気遣うようにリーナを促した。


すると頷き、嫌そうに扉を見つめる。


「ここから出て絡まれたくない。ギイの部屋を貸してそこで寝る」

「はぁ、分かった。使えばいい」


それを見て、ため息を付きながらギイは了承するしかない。

なんとなく気持ちが判るからだ。


そして転移していくリーナを見送った。

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