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拾弐

「さぁ、始まってもうそろそろ中盤に差し掛かっております。」


まだ眠たいのか舞台を見る目が半分閉じている。


「ここで次の対決は二年の最強タッグ、アグマ&ケイト


対するは良識を着る男フローとナマケモノと言われる落ちこぼれアシュレイだ」


それには歓声、主にアグマとケイトを応援し、ミシェルとリーナを、まあ大体はリーナを中傷している。


「くだらない奴らだ。醜い」


吐き捨てるミシェルにリーナは視線もやらない。

完璧にどうでも良さそうだ。


だが、次の瞬間半分閉じていた瞳が見開いた。


「あんな落ちこぼれ育てた奴の顔みたいぜ。

俺はそんなやつ育ってたくねぇな」

「きっとふてぶてしくて落ちこぼれた顔だぜ。恥もなく落ちこぼれを育てたんだから、親も落ちこぼれに決まっている」

「上手いな、お前」

「死ねばいいのにさ、生きてても仕方ないだろうに」


そう言って笑ったのだから


禁句だ。


けしてリーナに言ってはいけない言葉だ。


生みの親、そして育ての親に近いギイの悪口は許せない

風が悪口を言っていた生徒達の前を通り過ぎた瞬間、生徒達は床に倒れ伏した。


一瞬の事で誰も気付くものはいなかったようだが、リーナが殺気を練り込んだ風の魔法かまいたちを放ったのだ。


表面上外傷はないが凄まじい殺気を込められたかまいたちは彼らの内側を傷付けていた。


骨折に始まり、打撲、内臓損傷、精神的苦痛


リーナを怒らせた代償は大きかった。


場内が騒ぎ出したのを冷めた目で観察してから、リーナはつまらなそうに床を見つめる。


「おい、アシュレイ聞いてるのか?」


掛けられた声に顔を上げればミシェルが睨んでいる


めんどくさい奴だな、などと失礼な事を考えつつ


「何?」

「やっぱ聞いてなかったか。行くぞ、俺達不戦勝で次に進めた。」


指さす方を見て納得した。


そういや奴らが対戦相手だったか


頭に血が登っていてすっぽ抜けていた


ミシェルに腕を引かれつつ、考えていた。延々と待たされたリーナの血管はキレ掛かっていた


そして耐え切れなくなったのか


無言で立ち上がると


ミシェルの横を通り過ぎて扉に出て行って数秒後


ドゴンッ


そんな不吉な音が響き渡る。

慌ててミシェルが扉から外を眺め、立ち尽くした。


リーナはすぐ近くにいた。


見れば壁は大きく陥没している


そして、リーナが口角を上げて笑っていた

珍しいリーナの笑みと壁の陥没の出来事に思考がしばし停止した。


何があった、いま


今見たものは現実か?


凍り付く思考をどうにか動かそうとするが


ショックが大きいのか


まだ立ち直れていない。


その間にもリーナは口角を上げて笑い、壁にはまた穴が開く。


しばらくして気がすんだのかリーナは壁の穴を一瞥する事なく、ミシェルの横を通り、また控室で椅子に座る。

そこでようやく正気に返ったミシェルがリーナに詰め寄った。


「アシュレイ、今のはなんだ。壁を破壊したのか」


しかし答えない。


「俺の話を聞いてるのか」


肩を掴むが、反応一つしない。


「いい加減にしろ!アシュレイ」


業を煮やし怒鳴る。

するといつも通り無表情のリーナが冷めた瞳でミシェルを見つめた。


「・・・・これから試合なのに頭に血を上らすとろくな事にならないけど」


これは言われたくはない。


誰のせいで怒鳴っていると思っているのだと


「アシュレイ、よく聞け」


心底真面目な表情のミシェルにリーナも渋々と目を合わせる。


「簡単な質問だ。壁を壊したか壊してないか、だ」


しつこい問い掛けに眉間を揉みほぐしながら、頷く。


「壊した。だがすぐに直してある」


なんともツンツンしている


「公共物を壊しておいて、直したと言っても破壊だ」


これにはうんざりの表情を浮かぶ、時が過ぎるのを待つ。

そして完全にミシェルの話など聞いていないリーナである。


「さぁ、本日の最後の試合はまぐれ不戦勝でやって来たフローとアシュレイ」


一言余計な司会者だ。


「対するはどんな試合を見せてくれるのか楽しみなザイガとロネのペアです」


そしてなぜライルと当たる。

意地悪されているのだろうか

それともくじ運のないミシェルを呪えばいいのだろうか


しかし、時と周りは待ってはくれない。

司会者の開始の声とともにザイガと言う少年が駆けて来る。


面倒だが避けるしかない。

まっすぐに突っ込んでくるザイガを無駄一つない動きで避ける。


あまり動きたくない。

こんなところで力など使いたくないのだ


リーナが避けた事に驚いた様子のザイガ


だがすぐに気を取り直したのか再び遅い掛かってくる

何故私にばかり、相手はフローでもいいと言うのに


ザイガの行動にいらつき始めたリーナ


仕方ないのでまた避けるが、またすぐに攻撃される。


これはまさか狙われているのか?


ほんの少し視線を外せば、ミシェルは視線はライルに向けているが意識はこちらに向けていた。


集中しれ、と言いたいが相手になるライルはこちらを楽しげに見ているだけである。


一度躾直した方が良いかなと、思わず思う。


だがだるいことはしたくない。


「いい加減に攻撃は止めて欲しいんだけど」


戯れ事だと思いつつも、提案するが無言で襲い掛かって来る


すぐにも帰りたい


最初から出場すれば単位が貰えたし、勝ち進めたから少し内申も良くなったはず


卒業出来るだけの単位さえ取れるなら、体力と魔力を無駄使いしたくない。

あっさり降参しようと口を開こうとして、視線を感じた。


嫌な視線だ。


鳥肌が立ち、第六感が告げている。


危険に備えろ、と


ダルそうに動いていたリーナの動きが一気に無駄がなくなり、それと同時に威圧感のような空気を纏わり付かせている。


そして、今だに襲い掛かって来るザイガの腕を掴むと腕を捻り上げ、簡易ロープを魔法で練り上げて、それで拘束して突き飛ばした。


それから神経を集中させる。

一寸の隙もなく辺りの気配を探り出す。


あの視線の持ち主は絶対に近くにいる。


「アシュ「黙って!」レイ?」


集中してるのだ邪魔しないでしてほしい

怪しいのは右側の客席と上部の観客席、それに・・・


次々と比較し、正否を決する

そして最後に核心に満ちた表情を頭上に向ける。


「出てきたらどう?いるのがバレバレだけど」


そのリーナの言葉に突如頭上の空間に亀裂が走る。

その亀裂を砕きながら一人の美女が現れる。


「ふふふっ、よく気付いたわね人間が」

「隠れるのが下手だからじゃないの?」


妖艶な美女が艶やかに微笑みをリーナに向ける

しかし、リーナに取って美女の微笑みなどなんの関心も浮かばないもの


冷めた瞳で見つめるだけだ。


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