蒼穹
大地に犇めくは害獣の群れ
相対する者の力量を見抜きも出来ない知能が低レベルな獣
だが只人には脅威となる魔物
そんな眼下に広がる大地を見下ろし、深くローブを被った人影は小さく右手を振り下ろした。
ズドンッ
その瞬間凄まじいばかり勢いで大地に広範囲な
クレーターが形成され
そこに先程までいたであろう害獣は一匹残らず消し飛んでいた
「下らない。下らなすぎる
どれだけ雑魚が寄り集まっても、我に敵うはずはないとまだ解らないようだな。」
軽く首を振り虚空に視線をやり冷たく吐き捨てると、自らが作ったはずのクレータに見向きもせず
実につまらなげに欠伸を噛み、背を向けてしまう。
「さてと用も済んだし、さっさと帰って寝るか。」
最早意識は帰る事に向いているのか、颯爽と躊躇いもなく跳んだ。
同時にクレーターは轟音と共に陥没した。
残るのは一部始終を見ていただろう動物達の怯えた姿のみ
「今日も楽しい一日♪♪始まる始まる・・・」
能天気に楽しそうな様子で一人の青年が歌っている。
だがそこへ音もなく
「ギイ、うざい。歌やめろ。音痴が」
身も蓋も無い一言で乱入したフードを目深に被った人物がソファーに踏ん反り返る。
「うっ、これでも前に比べたら・・・・」
「口答えは許さん。あんたは俺に服従すれば良いんだ。」
「くっ、なんでこんなにひねくれた子に育ってしまったんだい?私は悲しいよ、リオン」
「うざい、マジうざい。泣くのは止めろ、ギイ
お前に育てられた?バカを言うな反対だろうが」
涙を浮かべるギイにリオンと呼ばれた人物は鼻を鳴らし、ますます機嫌を低下させていく
だが、嫌がらせのように泣くのを止めないギイにリオンは短い堪忍袋の緒が切れ掛かった
「ギイ・・・・」
しかし気配を敏感に感じ取ったのか、ギイは素早く泣くのを止めた。
「コホンッ、それよりも任務の方は無事終わったようだね。」
ギイ、わざとらしい話しの切り替え方だな。まぁいいが
「まぁな。[蒼穹]で一撃にしてやった。」
「[蒼穹]って、あんな上級魔法を使ったら・・・・」
「おっきなクレーターが出来たな。」
にんまりとした笑い声を上げ、報告をした瞬間ギイは崩れ落ちるようにその場に突っ伏す。
「まただ。また、あのグレタのアマゾネスもとい姐御が怒鳴り込んでくる。間違いなくやって来る・・・・・」
ぶつぶつと呟くギイをリオンは心底意地悪げに呟く。
「別にいいじゃん。愛しいグレタお姉様に会えるんだから」
「なら、俺に変わって謝って来いよ、そもそもの元凶が
雑魚討伐にクレーター拵えるバカなんだから」
本気で涙を流してこちらを見るギイ、しかしどこ吹く風で聞き流し立ち上がるリオン
「嫌だ。これからやる事があるし、それに正体ばれたらヤバいから」
「鬼~、悪魔~、破壊魔~、へんた・・・」
ガンッ
「バカは許すが、他に何か言ったかな?ギイ」
「・・・すみません。何も言ってません。」
憐れそうに床に膝をつき、涙目で見上げ首を振る。
「それじゃ、行くから。用があったらいつもの連絡方法で」
そしてリオンは一つ頷き、何事もなく手を振り、出て行った
「俺、ギルドマスターなのに・・・。なんでこんなに不幸なんだ
やっぱり俺にはギルドマスターは無理何だろうか」
部屋に残ったのは涙をこらえ、小さく愚痴をこぼすギイだけとなった。
手直ししながらこちらに投稿しているため、遅い進み方になると思います。
また投稿した後も随時手直しを入れながらなのでご注意を