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そのだんっ!りたーんず!!  作者: 小松菜大佐
始まりは夢の中から
1/35

0話 思い出は白に消える

お久しぶりです。

今回は適当にちりばめた伏線回なので、意味わからんと思います。

ですが、のちのち解明されるので安心してください

「いやあ、まさかこれを売るような日がくるとは思わなかったな」

「確かにねえ」

今日も元気に太陽が光線を振りまく仕事をこなしている。まあ、それはいいがその結果としておそろしい暑さに苦しむのはどうだろうか―――。

まあそんなことを自発的に考えてしまうような、そんなうだるような暑い日。俺とあいつはとあるゲームショップに来ていた。

扉の前に立つと自動ドアが作動、それと同時に流れてきた冷房独特の乾いた冷たい空気が俺の体を撫でる。

「あー涼しいぜよー」

「うーん…私はこういうの嫌いかなー。作られた空気って感じで」

「日差しの下で遊び回ることを運命付けられたようなスポーツマンに、外に出るだけで浄化されそうになる引きこもりの感覚はわからんだろうよ」

「むースポーツマンって、マンって何よ。訂正しろー」

「だが断る。しかも気にするのがそこでいいのか」

緩い。緩すぎる。

緊張感のかけらも見えない、とはこのことであると言えるような雰囲気。

だが、俺はその空間を悪くは感じず、むしろ心地よさまで感じていた。

「んじゃ、冷気が漏れっぱなしというのもなんだし」

「入りますか」

どちらからともなく顔を見合わせ、頷き合う。

そして冷房が効きすぎて寒気を覚えるほど寒い店内へと、足を踏み入れた。



店内をゆっくり歩く。向かう先はゲームの売却コーナーである。

目的は当然、ゲームを売るためだ。

「懐かしいね…」

突然横から聞こえた声が、いつもより湿っぽくて。

思わずそちらを向くと、その表情もまた湿っぽい。

さっきまで普通に、というかむしろカラッとした表情をしていたのに一転。むしろ悲壮感を漂わせるほどであった。

「何が、だ?」

「もう、忘れちゃったの?それとも…あ、もしかしてわかってて言ってた?」

「…ふむ、その理由は?」

「口」

「口?」

「触ってみて?」

「うん?…ああ、なるほど」

言われたとおり触れてみると、それは三日月型に歪みきっていた。…なるほど、思わずにやけていたようだ。

「もう…君って嘘つくとほんと楽しそうだよね」

「褒めんなよ」

「褒めてないですよーだ」

「ふぅ…話戻すか。で、あれだろ?昔俺が舐めてかかったやつ」

「せいかーい!さっすが、よく覚えてるね!」

「まあ、俺たちの仁義ない戦い(笑)の始まりだしな」

「かっこわらいって口に出す人初めて見たよ…」

「気にすんな。でも、今思えば結構すごいところまできたもんだな」

「だよね~。まさか…世界を、取っちゃうなんてね」

「ああ…」

俺は少し感慨深い気持ちになりながら、その時のことを思い出していた。

…………………

………

「やっと買えたか…」

思わず俺の声が喜色に染まるのを感じながら、俺は一つのパッケージを眺めていた。大きめの長方形のパッケージ。CDディスクのような形をしたゲームのパッケージである。

「ようやく…ようやくだ……!」

さんさんと降り注ぐ、とはこのこととでも言うように日差しが俺を焼く中、人の往来の中。拳を握りしめて、空を見上げながら震える少年…端から見たら頭がいかれたようにしか見えないだろう。しかし、それだけ、楽しみにしていたものだったのだ。

このゲーム『そのだんっ!』はファースト・パーソン・シューティングゲーム、いわゆるFPSと呼ばれるジャンルのゲームである。これは従来のゲームと違い外国製でなく、純国製であるところが特徴の一つだ。FPSの本場はアメリカであり、日本製はあまり良作が生まれていなかったのだが、このゲームはその評価をひっくり返すほどの良作だった。重すぎず、グロすぎず、しかし感動できるストーリー。プレイヤーの戦場での行動でエンディングが決まるマルチエンディング。戦闘自体も爽快感を重視したスポーツ系、しかし耐久はリアル系レベルと廃人たちも楽しめるような要素がたっぷり凝縮されたものだったのだ。発売直後は伸び悩んだが、とあるゲーマーのブログでのコメントから人気が爆発。国境を越え、今やほぼ世界中で発売されているゲームなのである。

そして今、俺はFPSにはまっていて、その関係からこれを購入したのだ。

そこに。

「おーい!」

「…はぁ、厄介なやつがきやがった」

日差しを受けつやつやに輝く黒髪を揺らしながら駆け込んできたのは我が幼馴染。肌は程よく小麦色。まさに太陽に好かれた少女である。

「なんか買ったのー?」

変に「教えてあげないよん☆」とか言うと面倒極まりない状況になるので当たり障りないように答えておこう。しかし、それは食いつかれなかったことが前提である。

「おう…まあ、な」

「えー?なになにー?なんて名前?

(来よった来よった…面倒なことになるかも

…あー!これって!!」

はいなりましたー)

もともとくりっとした目をさらに大きく見開き、ずずっと俺の袋の近くに寄ってきた。これは完全に食いついた…餌を見つけた鮫のように。

「これって、テレビでやってたやつだー!!私も気になってたんだよね…どんなゲームなの?」

「これはファースト・パーソン・シューティングゲームと呼ばれる一人称視点のシューティングゲームだこれをこれからはFPSと略そうさてFPSの最大の魅力は本物の戦争さながらのリアルな戦いができることだ最初はボタン配置と慣れとの戦いとなるがある程度慣れると相手の予測が重要になる反射スピードも重要視されがちだが待ちには敵わないんだでも不測の事態というものもあるだからそこでは反射が重要になるかなさてこのゲーム本体についてだが」

「よーするに!」

「…はっ!!」

しまった、と思った頃には時すでに遅し。思わず熱く語っていた俺が気がついたときには、もう目の前に目を好奇心にきらめかせた幼馴染の姿が。

「反射がものを言う訳だね!なら君に勝てるかも!ちょっと待っててー!!」

「え、ちょっと」

暴走列車は止まらない。伸ばした手は虚しく空を切り、もう一方の手を出す頃にはもう土煙だけが残っているだけになった。

「…はぁ、やっちまった」

後悔先に立たず。覆水盆に返らず。確かに、昔の人はいいことを言っていたようだ。

こうなったらもうにげ

「…たぁだぃいまあああああ!!!」

「はっや!?」

土煙だけとなった幼馴染がまた土煙を引き連れて走ってきた…

「れっつらごおおぉぉ…」

と思ったら掛け声一つ置き去りに店内に駆け込んでいった。

(さすがに店員があいつのスピードについてはいけないだろう…逃げるなら今しかな)

「到着!!」

「……」

もう突っ込まない。オリンピックでろよとか思わない。店員のクォリティにも突っ込まない。

戻ってきた幼馴染のその手には確かにパッケージの入った袋が握られていた。薄いビニールからその特徴である少女漫画チックなロゴが透けていたのが確かな証拠となっていた。

「ふっふっふ…これなら絶対に負けないよ!君みたいな引きこもりと反応スピードを比べないでよねん」

と、どや顔のあいつ。ウインクまで丁寧に決めてきた。

「おーっと…言ってくれたな」

もし過去に戻れるなら?と聞かれたら、あの時思わず言い返してしまった俺の顔と胴、膝あたりに渾身の一指拳(指のみを突き出し、相手の肉体を的確に穿つ技。相手は死ぬ)を叩き込んでいるだろう、と言い切れる程今では後悔しているが、あの時は確かに腹が立ったのだ。あいつの顔ではなく、ゲームでの反応速度を馬鹿にされたことが。というかお前格ゲーに負けたじゃんあれ反応速度の塊だろうと言いたかったが、確かにコマンドを憶えていないと戦えない、ということもある。

「いいぜ…じゃあ、勝負だな」

「乗ったよ!!でも、どうするの?」

「これは発売されてからちょっとで世界全体で発売されてる…そして、その中から強いプレイヤーが集う大会がある」

「そこで決着をつける、ってわけね!わかったよ!!」

「まあ、下手なお前じゃあまあ地区大会で一回勝つのが精々だろうがな」

「言ってくれるじゃないのさ~」

「これくらい言っといたほうが、それっぽいだろ?」

「確かにね。じゃあ、ついでに」

ほい、と言わんばかりに手を突き出すあいつ。

「なんだ?俺が圧倒的に有利な後出しジャンケンか?じゃあチョキ」

「そうじゃないよ。握手握手!」

「握手か…なんでまた?」

「その方が、それっぽいだろ?」

と、きりっとしながら言う。俺のモノマネか?

「似てないぞ」

「うるさいなあ」

そう言って笑い合い、しかしどちらすぐに顔を引き締めさせた。

「…久しぶりだな、君がそんな真剣な顔するの」

「なんだ、心外だな…俺っていつもそんなに気の抜けた顔してるか?」

「そりゃあそうとも。意思なんて塵一つも見えない感じの、気の抜けた顔」

「ひどい言いようだが、否定はしない。確かに、いつもやる気なんて塵一つないからな」

「運動してみたら?楽しさ分かってやる気も出るよ?」

「今はいいや…これからも。でも、さ」

ひと呼吸入れ、自分なりにニヒルに笑う。

「今はこれで、十分だろ?」

「…そうだね。ごめん、やる気出してっていわれることほどやる気がなくなることもないし」

「そうそう、しょうゆうこと」

「……君ってほんと、真面目な顔してダジャレ言うね」

「ほっとけ」

そう言って幼馴染は俺に背を向けた。確かに家は向こうだが、今回の動作にはもっと深い意味があるはずだ。直感的に、そう感じた。

「それじゃ、世界で(・・・)」

「ああ、世界で(・・・)」

その後俺たちは別れ、練習に精を出した。青春、思い出、すべてそれにぶち込んだ。そうすれば、それよりもっと大切なものが手に入るからだ。

舞台は地区、県、地方、全国、そして世界に。

最初は3v3のリーグ、それに勝ち残った者たちは全員でサバイバルの大乱戦。そして準決勝は1v1のサドンデス。

そして、決勝――――!!ルールは3本勝負。

当然相手は、あいつだった。

「よう」

「やあ」

「「いい戦いを」」

その間に言葉はいらない。握手だけ交わし、それぞれコントローラを握る。

そして、幼馴染との決闘が始まったのだった。

…………………

…………

回想をしながら歩いていた俺の目の前にはもうレジが見え始めていた。

「負けず嫌いだとは知っていたが、まさか俺のゲームにまで食いついてくるとはさすがに思わなかったな。最後はすげえ強くて焦ったし」

「むーそれは最後に負けた私に対するイヤミですかぁ?」

「ばっか、お前に負けたら発狂するわ」

「ひっどーい。ぶーぶー」

でも。でもだ。

「…でも、二本目取られたときには本気で驚いたし、3本目はいろいろ抜きで本気だった。それでも、危なかった。もうお前を馬鹿にはしてねえよ」

「……!」

そう本心を言うと、幼馴染は豆鉄砲を受けたような顔をした。

「なんだよ?」

照れ隠し気味に目を少しそらしながらそう言う。

「…いやあ、褒められるなんて、思ってなかったから…ッ」

「!?」

幼馴染の声が揺れていることに疑問を抱きそちらを見ると、その目尻には確かに、輝く雫が浮かんでいた。

「おいおい!なんで泣いてんだ!!?」

「だって…だって……私、君に褒めてもらおうって、頑張ったの!世界なんていらない!そう言って欲しかっただけだったの!!」

「??!?!?」

いきなり泣きながら褒めて欲しかったって言われても混乱するんだけど勘違いしちまいそうだだれか俺の思考を止めてくれー!!

「昔から…頑張って……君に、見てもらおうって……」

「お前…」

「でも、君の視界の中に私が入る事はどんどん減っていった……ゲームが好きなんだってわかってたからそれで近づこうと思ったけど、私、下手だからさ」

そうしてにひっと笑う幼馴染は、綺麗で、可愛かった。

「だから、近づけたことが。君と対等になれたことが。ほんとに、心から、嬉しかったんだよ」

「…」

「あのー」

「「!!?」」

突然飛び込んできた声は俺と幼馴染の意識を世界に戻すには十分だった。

「立ち話もいいですし、青春するのもいいですがご用件を」

「「は、はい!!」」

慌てて頷き、そのパッケージを握る。

もはや世界最強となってしまった俺たちはこのゲームを崩すバランスブレイカーである。

俺たちの入ったチームが勝ち、入らなかったチームが負ける。

果てには俺たちが戦おうとしたら全員が抜ける、ということもありうる。

もはや、俺たちに場所はないんだ。このゲームには。

しかし、やっぱり手放しづらいな…俺達の努力と思い出の結晶は。

そう迷っていると…

「ねえ」

幼馴染の声で思考の海から引き上げられる。

その方を見ると、幼馴染の顔は笑っていた。確かに、笑みを浮かべていた。

「…んだよ」

「ねえ、私と君で、もう決めたんだよね。もう、振り返っちゃダメだよ」

しかし、その目尻にはまた雫が浮かんでいる。

そうか、あいつも、破天荒を形にしたようなあいつも、考えることがあるんだな…。

よし。もう、振り返らない。

でも、あの日々は、世界を舞台にした幼馴染との喧嘩は、俺の一生の宝物だ。

「まさか、お前の考えを聞く日が来るとは思わなかった」

「こんな時にもやっぱりひどいね…」

「でも、踏ん切りついた」

「うん」

言葉を切って、一つ頷き合う。

「「これ、売ります」」

それは、確かに何がが終わった時だった。

でも、何かが始まったような、そんな気もした。



「ふぅ…あっついなぁ……」

「まだ言うか」

青空の下、再び灼熱の太陽光線に身を晒している俺たち。

「しゃあないだろ、暑いもんは暑い」

「でもさ、こんな日だったなーって思い出したりしない?」

「まあ、な。でも、それは過去だ。所詮出来事があったなーくらいであって、涙を流すような、感動するようなことではない」

「むー、それは泣きそうになっていた私に対する挑戦状かね?」

「…」

「否定してよ!せめて否定してよ!!」

「…」

「ちょっとー!」

やっぱりこいつをいじると、スッキリするなあ…!心が洗われていくようだ…!!

「ちょ、なに清々しい顔してるの!?」

「いやあ、浄化されるなって」

「人いじって浄化されないでよ!!」

「…ふぅ」

「ほらまたー!」

「もう限界だ。俺は帰る」

さすがにあっつい、そしていじりすぎて収拾がつかない。俺は帰宅を選択し、幼馴染に背を向ける。

その行動に慌てたのか、幼馴染が声を上げた。

「待って!まだ言いたいことが!!」

「いじりすぎたのは謝るよ、じゃな」

「違う!!」

「!?」

いきなりトーンがおふざけから本気に変わり少し驚く。さすがに背を向けたままじゃ失礼だ…俺は体の向きを変え、幼馴染と視線を合わせる。

「一個だけ、聞かせて。…楽しかった?」

「…」

こんな時に小粋なジョークを言えるほど俺は豪胆ではない。今回は本心を、そのまま言葉にしよう。

「…ああ、今までの日々、お前と競った日々は、俺の宝物だ」

「…そっか。それだけ、ごめんね?引き止めちゃって」

「いんや、いいさ。そんぐらいいつものことだし、慣れてる」

「…やっぱり、ひどいな。でも、それじゃなきゃ、君じゃないよね」

「慣れって、怖いな」

「ホント」

どちらからともなく吹き出し、笑い合う。

ひとしきり笑い合ったころには、周りはすでに夕暮れに染まりかけていた。

「お、もうこんな時間だったのか」

「会った時にはもう夕暮れ直前だったからね、話したり、売るのためらったりして時間が経っていたみたいだね」

「じゃあ、帰るか」

「…うん。じゃあ、ね」

「じゃ」

夕暮れの下、互いに背を向け合う。

ただ単に家が別の方角だから、でもある。

それでもなにか違う、寂寥感のようなものがあった。

しかし、もう別れたのだ。再び向き合うようなことは許されない。

どちらからはわからない、むしろ同時だったかもしれない。

俺たちは別の方向に向かって足を踏み出した。



家に帰った後。

俺は汗で大惨事になったシャツを着替えると同時に、汗を流すためシャワーをしてさっぱりとした感覚を味わいながら再び自室に引きこもった。

「さーて、今日はなにしようかな…」

部屋にこもる=ゲームするの俺は勉強するわけでもなく、さも当然のように今からするゲームを吟味し始めた。

「FPSにすっかね…いや、RPGを完徹で一周するとかもなかなかだな。いや、久々に泣けるギャルゲでもいいかもしれない…」

一人でぶつぶつ呟きながら、ゲームがいっぱいに詰まっている本棚を眺める。

しかし…

「う~ん、しっくりこないな…」

何か、物足りない。

胸が熱くなるような、高揚感が全くしない。

「まあ、いっか…こういう時にバトルとかするとズタズタにされるからな、ギャルゲとかパズルにしよう」

やるゲームのジャンルが決まり、あとは自動のように候補のゲームを取り出していく。

「よーし、じゃあ、これからやってくか!」

手にとったのは一番最初に購入した、泣きゲーの名作である。

「全員攻略してやる…ふっふっふっふ」

俺はそのゲームソフトをハードにいれ、起動した。

そしてストーリーを進めるうちに、現実との境界が薄れ、のめり込んでいくのであった…。

…………………

……………

……

「うん?」

気づくと俺は、真っ白な空間に立っていた。

「あ~寝落ちしたかぁ~」

真っ白な空間なんてありえない、可能性は夢一つである。

「まさか、この俺が、寝落ちするなんて…何年ぶりだろう」

寝落ちしないことが俺の最近の誇りであったというのに。

まあ、全然寝ない俺を見てあいつは

「そこまで行くと…気持ち悪いよ」

と引き気味で行ってきたことがあったが、もうそれはいい思い出である。

「でも…夢なのに何も起きないのは珍しいな。なんかファンタジーなことが大体起こるのに」

「そうじゃ、夢とはそういうものであるからの」

「だよな…って」

「?」

「誰だアンタ!?」

いつの間にか俺のとなりに煙を人型に固めたような物体があった。

「誰…って、気にしないでいいじゃろ。どうせ夢なんじゃ、すぐ忘れる」

「気になるわ!!…って言いたいけど、確かにどうせ忘れるな。気にしないでいいか」

「そうじゃそうじゃ」

「「HAHAHAHAHA!」」

白い空間の中、白い人間と笑い合う。…なんぞこれ。

「お、なんじゃ、いいノリじゃの?気に入ったわい」

「そりゃどうも…で、あんた。どうしたんだい?俺の夢に来て」

「ああ、本題を忘れとったわい。さてと、お前には世界を救ってきてもらう」

「世界を救う?HAHAHA、よゆーよゆー…って、世界を救えだぁ!?」

「ナイスノリツッコミ、じゃ」

世界を救う!?なにそれ!?いきなり何言ってんだこの人は!!あ…でも。

「夢だからそんなことあっても仕方ないか?」

というと、白い人の雰囲気が少しだけ真面目なそれになった。

「確かにこれは夢じゃ。だが、夢ではない。これは夢と現の境界線。夢であって、夢ではないのじゃ」

「…はい?日本語でお願いします」

「今は気にせんでいい。説明してもわからんじゃろうからな。…とにかくお前はこれから世界を救うことになる。しかし、夢と現の境界から記憶を持って帰ることはできない…人は夢の記憶を持っていることが少ない理由はこれなのじゃ」

「え?明晰夢みたいに記憶持ってることもあるけど?」

「それは特殊な力が働いたときのみじゃ…満月の日であったり、新月の日、一年の最後と最初…などなどじゃな。安定して見れるものもいるが、それは力を持っている者のみじゃ。今日は何にも当てはまっていないし、お前もそんな能力を持っていない。だから今から行く世界についての説明も省かせてもらうぞ」

「う~ん…分かりそうで、分からない説明ですな」

難しい…誰か!諸葛亮先生を呼んでくれ!!

「まあ、理解はせんでいい。どうせ憶えてないからの。だが、使命すら完全に忘れてもらっては困るのじゃ。そこでお前には、意思のみを植え付けさせてもらう」

「意思のみ?」

ああもう、さっきから聞いてばっかりだ!でもわからんものはしょうがない…若干不甲斐ない気がするが。

「ああ…なんというか、これしなきゃ駄目だ!って突き動かされる感じになる、というか。まあそんな感じじゃな」

「…うん、今のは分かりやすかった。でも、あんたは夢と現を行き来できるんだろ?事実俺を呼んだのはあんたのはずだ。そんなにここの世界?に詳しいならそれをある程度使いこなせてるはず」

「…ふむ、それが?」

「あんた、俺に記憶を植え付けれたりしないのかい?」

「…質問に答えよう。お前の疑問は前提が不確かだが、ある程度は当たっている。しかし、ある程度は間違っている」

「それはどこだ?」

「儂は、夢を司っている者なのじゃ。残念ながら現の方は管轄外でな、記憶の植え付けは向こうしかできんのじゃ…でも意識の改変は意識をある程度操れるこちらでもできる、ってところじゃな。現の方はもう少しいろいろできるようじゃが」

「よーするに、あんたは夢の世界に来ている意識のみは操れて俺の体にある記憶は操れない…って感じか?」

「だいだいそんなものじゃ…おっと、そろそろ時間じゃな」

「うん?…って、うおぁ!?」

俺の方を向いて言った白い人の言葉に違和感を抱き、そちらを見ると、俺の体は白い空間に溶け始めていた。透け始めた、とも言える。

「それではな、世界を頼むぞ」

「こ、断るとかは!?」

すでに体の半分が消え、胸の部分にまでかかってきている!かなり早いぞ!?

もう無理なような気がするが、とりあえずは聞いておく。もしかしたら戻してくれるかもしれない。なんだってこの世界を(多分)操れるのだk

「無理じゃ」

ですよねー。

その言葉を聞いて、俺の視界は意識とともに白く染まった。

「では、よい(・・・)を」

最後に聞いた言葉を、少し不穏に感じながら。


こんな感じです。

これらの中にはとても重要なワードが隠されてたりします。

覚えていてくださいね!

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