第10話 コルダの街と王国派遣軍
※さて、第10話は新章の導入回です。
コルダの街の“違和感”と、コルダの街に駐留する王国派遣軍を巡る状況整理が中心になります。
大きな戦闘はありませんが、次の展開へ繋がる重要な回です。
アースドラゴンを退治した事で、街道の橋も無事に通れるようになり、ユウマたちは宿場町で1泊した後、保存食の干し肉と固く焼いたパン、そして水を購入した後、早朝に出発する乗合馬車で宿場町を出た。
目指す町はコルダの街と言い、リリアの話では、そこには王国の派遣した部隊が駐屯しているらしいという、道中では特にモンスターの襲撃も無く、幾つかの休憩所で野営し、宿場町を出て2日後にコルダの街の入り口までたどり着いた。
コルダの街の入り口で門番の衛兵に身分証となる冒険者ギルドカードを出す、大きめのスマホサイズの冒険者ギルドのプレートカードを見せると簡単に街に入ることが出来た、街の治安は良く、魔王軍が都市を壊滅させている状況であっても、大通りにある商店や露店が立ち並ぶ市場も活気があった、しばらく歩いていて、最初に街の違和感に気付いたのはミナだった
「なんか、ここの人達、顔は笑ってるのに……何かに怯えてるような気がするんですけど」
ミナの言葉にリリアと俺も周りを注意深く観察する、街中の人の往来も多く、店も普通に商売をしている、中央にある噴水広場にも人は多い、だが……皆表情が何処かぎこちない、
笑っているが口元が引きつっている者もいる、そしてリリアは別の視点で気付いたようだ
「おかしいですわ、先程から子供の姿を一人も見かけませんわ、このような賑やかな場所で、遊んでいる子供すら居ないなんて……やはり、魔王軍の襲撃を恐れての事でしょうか? 」
リリアの言葉に俺は考える、確かにその可能性もあるが、街には確か王国から派遣した部隊がいるのではないか? 彼らが街を守っているのならば魔王軍の襲来は無くとも魔物などの襲撃の心配はないはず、だが情報が少なすぎて判断を下すのは難しい
「取り敢えず、冒険者ギルドに行ってこの街の事も教えてもらおう……この違和感の正体が、何か分かるかもしれない」
冒険者ギルドは中央広場のすぐ近くにある2階建ての大きな建物だった、中に入ると冒険者の姿もチラホラ見掛けた、しかし魔王軍侵攻の影響もあるのか、一見してガルドのようなベテランの冒険者は見付けられなかった、さっそく俺達は受付カウンターへ行き、話を聞くことにした
「初めまして、私はここの受付を担当していますリューエと申します、早速ですが冒険者ギルドのご利用でしたら、先ずはギルドカードの提示をお願いいたします」
俺達はギルドカードをリューエさんの前に出すと、リューエさんはひとつひとつ丁寧にカードを確認する
「冒険者のユウマ様、リリア様、ミナ様、ですね……パーティーを組まれている場合はパーティーの名をお聞きしたいのですが」
その言葉に俺は固まる、確かソウダ村の支局でパーティー名の登録もしておいたが、ソウダ村では特に聞かれなかったので放置しておいたのだ、何故かと言えば
「ぱ、パーティー名は……ブ、ブレイブソードです」
確かにリリア達と考えた時はカッコイイと思ったよ! でも改めて言葉に出すと滅茶苦茶恥ずかしい……まあ、これ以外の候補が『勇者ユウマと仲間達』とか『魔王軍やっつけ隊』とかちょっと……いや、かなり遠慮したい名前だったので仕方がない、パーティー名を聞いたリューエさんはニコリと微笑むと、丁寧にギルドカードを返してくれた
「はい、パーティー名『ブレイブソード』ですね、では皆様のレベルを改めて確認いたしますので……こちらの水晶球に一人ずつ手をかざしてください、では先ずはユウマ様どうぞ」
とリューエさんに促されて、目の前のカウンターに置かれている水晶球を見る、持ち運びの出来る台座に置かれた直径20センチほどの水晶の玉に俺が手をかざすと、水晶が怪しく光り始め、数値が現れた、側にいたリリア達にも見えている事から、どうやらこの浮かび上がった数値は誰でも見れる代物らしい
「ユウマ様のレベルは8900レベル! 凄まじいですね……今までこのような超高レベルの冒険者は、神話級の冒険者以外では、全く居ませんでしたが」
驚くリューエさんをよそに、水晶球のレベルの数値を見て俺はソウダ村出発時より20レベル低くなっている事に
「あっ…… 」
と思い出した、そう言えば……宿場町に滞在したときに不覚にも俺の方がムラムラして、仕方がないから自分で処理しようとしたら、うっかり部屋を出ようとするところをリリア達に見つかって結局リリア達に誘われるままにベッドに戻りヤッてしまったんだ。
我ながら押しの弱さに泣けてくる、俺の罪悪感も気にせず、続いてリリアが水晶球に手をかざす
「リリア様のレベルは501レベルですね……上級冒険者のなかでは真ん中の中堅と言ったところですが、今の状況ではかなり貴重な戦力ですね」
そう言えばリリアのレベル数値を見るのは初めてだったが、なるほどアルド王が推挙するだけあって、やはり優秀なんだな……そういえば、リリアもあんまり長い詠唱とかしないな、などと考えていると最後にミナの番がやって来た、ミナは恐る恐る水晶球に手をかざす
「ミナ様のレベルは21レベルですね、一般的な住民のレベルが大体5から10、工房を構える職人などのレベルが大体30レベルですので、冒険者になってから何か特殊な経験を積まれたようですね、駆け出しの冒険者でも15レベルくらいですので、パーティーでの戦闘による影響もあると思いますが」
というリューエさんの言葉にミナは少し嬉しそうだ、恐らく夜スライムの狩猟やゴブリンの巣の討伐、ここに来るまでのアースドラゴン戦が影響しているのかもしれない
「リューエさん、ひとつ聞きたいのだけれど、冒険者として登録してパーティーに入ってから今迄ミナは直接戦闘には加わっていないが、強力なモンスターを倒した時もその経験値が入るのか? 」
と俺が聞くと、リューエさんは首を振った
「いいえユウマ様……そうではありません、そのような場合は支援魔法で前衛をサポートするか、自ら能力を引き上げる薬を作り出して前衛に支援をするかなど、間接的にでも関わっていないと経験値は入ってこないと思います、例外的に魔物のサキュバスのように高レベルの冒険者の生気を受け取れば経験値の増加もあると思いますが、もっとも通常の戦闘よりも手に入る経験値は微量ですし、その……あまり効率が良いとは言えませんが」
という言葉に3人そろって
「あっ…… 」
と声を出して思わず黙ってしまった
「と、兎も角レベルの把握は出来たから本題に入ろう」
そう言って俺は軽く咳払いをする
「リューエさん、この街の事をギルドで把握している範囲で良いので教えてもらえるかな、俺達はこの街に来たばかりでよく知らないんだ、一応ここに王国の派遣した部隊が駐屯しているとは聞いているけれど」
と言う俺の質問に、リューエさんは一瞬ピクリと反応して視線だけ周りを見まわしたあと、笑顔のままで話す
「始めてこられた冒険者の皆様には、確認事項がございます、お手数ですが奥のお部屋で説明となりますので……ついて来て貰えますか? 」
とリューエさんは奥の応接室を案内するので、俺達はついていく事にした、応接室に入ると
「ではこちらの席へ」
とソファーを案内したので3人ともそのまま座るとリューエさんは応接室の扉を閉めた
「失礼いたしました、こうでもしなければ外部に話が漏れてしまいますので」
と言って謝罪するが
「いえいえ、こちらが聞いたのですから頭を上げてください、こちらも不用心でした」
と俺がリューエさんに謝る
「そう言っていただけると助かります」
と返してくれたのでリリアが
「では、本題ですけれども、この街に入ってから感じた違和感は、やはりここに駐留している王国軍の派遣部隊が原因ですか? 」
と聞くとリューエさんは
「それは半分正解です、実はこのコルダの街は元々人口6千人でした、しかし魔王軍侵攻によって大都市の殆どは壊滅し、戦火を逃れた都市の住民が周辺の街や村に避難しているようです、そしてこの街も例外ではなく、その避難民を受け入れたことにより現在の人口は一時的に1万人まで膨れ上がったのです」
「ここの子爵はどうされたのですか? 受け入れただけでは、生活は立ち行かぬはず」
リリアの問いにリューエさんは
「おっしゃる通りです、子爵は避難民を受け入れる為に空き地が多くあった貧民区画を整備して簡素な避難民の住居を建てました、現在はそこに避難民は暮らしております、しかし食料の備蓄は元々いる民の分しかありません、もちろん商人ギルドとも連携し、可能な限り調達してはおりますが」
「このような状況では、物流が正常に機能しているとは思えませんわね」
リリアの指摘にリューエさんも頷く
「はい、リリア様のおっしゃる通り、確保した物資は充分とは言えず……特に食べ盛りの子供達への配給まではとても手が回らず、この街を納める子爵が、その事を駐留している王国軍の隊長に相談いたしました」
「隊長さんは何て言ったんですか? 」
とリューエさんの話にミナも加わる、ミナの質問にリューエさんはかなり云い難そうに
「ここに駐留するゲス・イネン隊長は避難民の子供を持つ家族の子供と避難民の老人を強制的に彼ら駐留軍が元々居た廃砦に疎開させるという手段を取り、その際に僅かな食料と路銀を持たせて護衛も付けずに街から追い出しました、砦までの案内は老人たちに地図を渡して街からしばらくまでは衛兵に見送りをさせました、現在街には避難民800人が住んでおります」
リューエさんの、その言葉にリリアの顔が悲痛な表情に変化する
「という事は……3200人もの避難民を危険な場所に追いやったのですか? 子爵は何を考えているのですか! それでは只の口減らしではありませんか」
リリアの問いにリューエさんも表情が暗くなる
「リリア様のご指摘はもっともです……街の民を守る為とは言え、駐留軍隊長のやり方と避難民の状況を憂いた子爵は、廃砦にいる避難民を支援するために、秘密裡に私ども冒険者ギルドに依頼して駐留軍隊長に露見しないように密かに食料などの物資を運んでおります、しかし門番は街の衛兵と王国駐留軍の交代でして、衛兵が当番の時を見計らい、物資を送り届けているのが現状です」
リューエさんの話に俺が質問をぶつける
「待ってください、廃墟となった砦に井戸はあるんですか? 水なしでは、人は3日と生きられないのは貴方もご存知の筈」
その言葉にリューエさんは
「ユウマ様、勿論それは当然把握しております、ですが技術者の派遣となると門番だけでなく、ここで警備を担っている駐留軍の兵の監視も突破しなければなりません、私どものような冒険者ギルドの人間ならいざ知らず、職人を派遣などすればあの隊長に気付かれてしまい、そうなれば今後街から出ることも困難になるでしょう、ですので周辺の冒険者ギルドを通じて、冒険者への依頼や宿場町の教会などの神官を伴って町の職人を砦へ向かわせて、井戸の掘削などの技術支援も並行して行っております」
リューエさんの話に、少し違和感を覚える、どうもソウダ村のギルドのイメージだと、その様な緻密な連携がすんなりできたとは思えない
「その案は冒険者ギルド独自の判断ですか? 」
と俺が問いただすと、リューエさんは
「いいえ、残念ながらここのギルド支部長の案ではございません、実はユウマ様が到着される二日前にガルド様からこの方法を教えてもらいました、その後ガルド様は街を出ましたが、町を出る前にガルド様から、もしユウマと言う冒険者が現れたら、これを渡して欲しいと手紙を預かっております」
そう言ってリューエさんは一通の手紙を渡してきた、と言っても封筒に入っておらず、二つ折りにされたメモ書きの様な小さめの紙と便せんサイズの紙だったが、俺は先ずメモの方を開いてみる、中にはガルドの署名が入った文章が書かれていた、俺は文面を読み上げる
『お前がこの手紙を読んでいるという事は、無事にコルダの街に着いたという事だな、お前も知ったと思うが、この街にいる派遣軍の隊長のやった事は、街の事情とはいえ許されるものじゃ無い、そこでだ、お前の味方になってくれそうな者を紹介する、廃砦の避難民を救いたいのなら一緒に渡した地図の場所へ向かえ、俺の方から先方には話しておく、きっと力になるはずだが、どうするかはお前次第だ、じゃあな。 ガルド』
そして一緒に渡された便せんサイズの紙には協力者であろう人物がいるという場所の印が書いてあるこの周辺の地図だった、地図には廃墟となった砦、コルダの街、そして街道より外れた山の付近に別の砦の位置が記されていた
「これは魔王侵攻の時に無事だったリンドルム砦ですね、確か……かなり優秀な指揮官が居たという話ですが」
と言うリューエさんの言葉に
「それもガルドさんが言っていたんですか? 」
と聞くと、リューエさんが
「ええ、何でも昔の友人だとか、本当かどうかは分かりませんが」
と答えたので、俺は改めてリリア達に意見を求めた
「みんな、聞いての通りだが本当にこのまま砦に向かうべきか相談したい」
と言うとリリアは
「私は砦に向かう事に賛成です、ただ出発までにこの街の状況を、もう少し知りたいので、この街の教会を紹介してくれませんか? リューエさん」
リリアの言葉にリューエさんは頷く
「分かりました、教会にはこちらから連絡しておきます、場所はこのギルドの向かい、中央広場の噴水を挟んだ向こう側にあります、教会自体も大きいので直ぐに見つかると思います、司祭様も今回の事に心を痛めているので、きっと力になってくれます」
と言うリューエの言葉にリリアは
「それは助かります、ミナ、あなたは私と一緒について来てくれませんか? 司祭様の話の後に避難民の居住区にいって話を聞いて来ます、その後街の外でユウマと落ち合いましょう、ユウマと一緒に行動すると気付かれるかもしれませんから」
女性二人と言うのは気がかりだが、どうする……とリューエさんから提案があった
「あの、もしよろしければギルド専属の冒険者がおりますのでその方を雇ってみては? 報酬は1日小銀貨2枚をその方に支払いいただければ街を出るまでの護衛を引き受けて下さると思います」
リリアとリューエさんの提案に俺は賛成する
「わかった、リリア達は冒険者と一緒に行動してくれ、リューエさんは彼女にその冒険者を紹介してください、前金で小銀貨1枚を支払います、残りは街を出る前にお渡しします……良いですね? 」
と言ってリューエさんに小銀貨を1枚渡すとリューエさんはそれを受け取り
「かしこまりました、では冒険者を呼んできますのでしばしお待ちを」
そう言ってリューエさんは一旦応接室を出ていった、しばらくすると一人の女性を連れてリューエさんが戻って来た、その女性は褐色の肌で服の上からハーフプレートアーマー、背中に丸い盾を背負い、腰に短剣とショートソードを下げた所謂女戦士と言った姿だ
「こちらが当ギルド専属の冒険者のエリスさんです、職業は戦士でレベルは500です、街での安全は保障いたしますよ」
リューエさんに紹介されたエリスと言う戦士が挨拶した
「あたいはエリスだ、武器に関しては特に不得意なものは無い、今回は街中だから片手剣を持っている、駐留軍の兵士たちの顔は覚えているから危なくなったら知らせてやるよ、あたいに任せときな」
「あら、随分頼もしい方ですわ、これは上手くいったら追加報酬も必要ですわね」
とリリアは俺の方をチラリと見る
「ああそうだな、無事に街を出ることが出来れば追加報酬を約束しよう」
そう言って成功報酬の残りの小銀貨と合わせて3枚リューエさんに渡す
「街を出たら、エリスさんは冒険者ギルドで受け取るように、リューエさんはエリスさんが帰ってきたら渡しておいてくれないか」
と俺はリューエさんとエリスさんに話すと二人とも頷いた
「かしこまりました」
「ああ、分かったよ」
こうして俺達は行動を開始した、俺は長距離移動に備えて食料と水を買い足しておくことにした、街の状況を考えると食料品の流通もそれほど活発ではないようだが、3人分の物資ならそこまで手間取る事もないと思い、市場へ向かう、予想通り少人数の食料品ならばそこまで購入に手間取らなかった、ただ、屋台の主に
「お、一人で買い物かい? この街に入ってきたときに一緒にいた連れの女性は彼女かい? いやあ、羨ましいねえ~……あんな可愛い子二人もつれて旅なんて、しっかり守ってやんなよ! 」
とこっちの返答を待たずに一方的に喋ってガハハと笑っていた、俺は愛想笑いで返して店をあとにする
「彼女……か、悪い気はしないけど、彼女たちがどこまで本気なのかは俺には判らない……あ、いや、1度ならず2度3度……それ以上ヤッておいてそれは無いか」
兎も角、食料と水の調達は完了したので、馬車の手配を行うために馬車ギルドの在る門前の通りに向かった
一方、リリアとミナは護衛のエリスを伴って、教会を訪ねていた。リリアとミナの話に司祭は頷き、避難民を追い出してからの街の状況と、廃砦に派遣した神官の話を聞くことが出来た、司祭の話では
「それはもう酷い状況です、神官の話では井戸は枯れていましたし街を出る時に持ち込んだ食料も殆ど尽きている状態だそうです、神官が着いた時はまだ老人たちは生存しておりましたが、何しろ防壁も半壊で屋根のある家屋も少なく、ほとんどが野ざらしの地面に藁で編んだむしろを敷いて寝るということで、そのせいか老人は酷く衰弱しているという事です、今は恐らく冒険者ギルドの手配で新たな井戸はあるとは思いますが」
司祭の話にリリアは目を伏せ、片手を胸に持ってくると普段は服の下にしまっている首に掛けたペンダントのホーリーシンボルを出すとその手で握り、祈りを捧げる
「何という事、神よ……どうか彼らをお守りください」
リリアの姿にミナも祈りを捧げる、司祭は聖書を持ち、片手をリリア達に向ける
「神よ、この慈愛溢れる者たちを、どうかお守りください」
司祭の話を聞いたリリア達は続いて避難民の住居の在る貧民街区画へ行き、彼らから話を聞く、彼らの話では
「あいつら、最初は快く迎えてくれたのに、翌日になって急に兵隊が大勢やって来て子供と老人、成人を分けて老人と子供を街から追い出しやがった、でも元居た所じゃ兵隊が魔物と戦って俺達を安全なところへ逃げるように言っていたし、兵隊がすべて悪い奴じゃ無いのも知っている、だからこそはじめは信じられなかった、でもあのゲス・イネン隊長は、こう言いやがった」
『この街にはお前たちのような、貧弱な避難民を大勢抱えられるほど物資に備蓄がある訳ではない、子供と老人はこの街の近くにある廃砦へ向かって貰う、餞別として僅かだが食料と水を渡してやろう、今から選別を始める、該当者は直ちに街を出るように、命令に従わないものは反逆の意図有りとみて処罰する』
避難民の語る話に表情を変えず聞くリリアとミナだったが、内に秘める怒りの炎は、徐々に増大していった。
「さあ、門へ向かいましょうミナ、悠長に構えている暇はありませんわ」
「ええ、リリア、私達も早く合流しましょう」
リリア達は話のお礼にと大銀貨1枚を渡すとユウマと合流するために街の門へ向かっていった、街の中にいる駐留軍の兵たちに気付かれぬように、露店の商品を見たり、屋台で串焼きを買って食べながら歩いたりと偽装しながら移動しているのでなかなか門にたどり着けない……もどかしい気持ちを抑えながら、ようやく門の手前までたどり着いた、エリスは
「さて、あたいはここまでだ、気を付けるんだよ」
「エリスさん、ありがとうございました、報酬はギルドに預けていますので、受け取ってくださいね」
リリアはそう言ってエリスに微笑む
「エリスさん、また戻ってきますから、その時は私が料理を振舞いますから楽しみにしてくださいね」
流れの冒険者と違いギルド専属のエリスだから、次も会えると信じて笑顔で話すミナ
「おお……いいねそれ、楽しみにしてるよ、じゃあな」
こうしてリリアとミナは護衛のエリスと別れて門へ向かっていった、門番は幸い街の衛兵だったので、何事もなく外へ出るとユウマが待っていた
「お待たせしました、ユウマ」
「ユウマ、待たせちゃってごめんなさい」
「いや、大して待ってはいないよ……さあ行こうか、リンドルム砦へ」
俺達は門の前で待機していた馬車に乗り込む、リンドルム砦に近い宿場町を目指して馬車は出発した、エリスが冒険者ギルドに戻るとリューエさんが待っていた、リューエさんはエリスと共に奥のギルド支部長の部屋に入る、その部屋には遮音の魔導壁に囲まれた部屋で、外部に話の内容が漏れる事が無い、部屋の奥の机には一人の男がいくつもの書類に目を通しサインをしていた
「ブロスト支部長、只今エリスが戻りました、無事にユウマたちは街を出たようです」
ブロスト支部長と呼ばれた男は書類作業の手をいったん止めてエリス達の方を向く
「リューエ、報告有難うエリスさんもご苦労様、報酬はリューエさんから貰っていますね? ではこちらの報酬も」
ブロスト支部長はそう言うと小さな革袋をリューエに渡しリューエはエリスに渡すとエリスは無言でその革袋を受け取り懐にしまう
「エリスさんくれぐれもこの事は他言無用ですよ」
「分かってますよブロスト支部長、あたいはこれでも口が堅いんでね」
「有り難う、ガルド殿のこの手紙通りに事が運べばよいのだがね、リューエ、周辺の宿場町の動きはどうなっていますか? 」
というブロスト支部長の問いにリューエは
「はい、予定通り動いております、廃砦の方も間もなく準備が整います」
「そうですか……頼みましたよ、後はユウマ様がガルド殿の思惑通りに動くかどうか」
ブロスト支部長の机にはガルドのサインが記された一枚の紙、それはユウマに渡した物と一緒にギルド支局長宛に渡されたものだった、そして紙には様々な指示の他にゲス・イネン隊長の事も書かれていた
『ゲス・イネン隊長の駐留軍が避難民と共に動くまで、くれぐれも子爵に悟られぬように』
お読みいただきありがとうございます。
第10話ではコルダの街の現状と、子供や老人が姿を消した理由が明らかになりました。
ここから先は、
「誰を救うか」「何を優先するか」
その選択がより重くなっていきます。
次話からは砦へ向かい、状況はさらに動きます。
よろしければ引き続きお付き合いください。




