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第1話 湖畔に射す月の光

 その夜紗世はいつもより、遠回りをして帰った。

 

 秋の夜風は冷たく吐く息が白く溶けていく。


 道を外れて湖畔の遊歩道に入ると目の前に広がる水面がひときわ明るい月の光を映していた。


風が止んだ湖は、鏡のようだ。


 水面の中央に浮かぶ満月がまるで手の届く場所にあるかのように揺らめいていた。その光に誘われるように紗世は桟橋まで足を運んでいた。


シーンとした空気の中足音が大きく聞こえた。

桟橋の先に誰かが腰を下ろしていた。


月赤に照らされて浮かび上がった横顔は見知らぬ青年だった。

 「こんばんは」

自分でも驚くほど、声がやわらかくこぼれた。

 「月がきれいで、ついここまで、来てしまいました」


その言葉に紗世は小さく頷いた。


月の光が湖面を渡りふたりの間に道を描いていた。


 「この場所、夜は人がほとんど来、ないんです」

 「だから落ち着くのかもしれないですね、きれいで・・・」


 青年はそう言って、視線を湖へ戻した。

 月光に照らされた横顔は、どこか儚げで、温かさを帯びていた。


 しばらくすると二人は言葉を交わさず、ただ湖と月を眺めていた。

 水面をかすかにわたる風が紗世の髪を揺らす。


 「僕は蓮といいます」青年は名乗った。

その名を胸の奥でそっと繰り返しながら、紗世も名乗った。

 「紗世です」



はじめて会ったはずなのに、不思議と懐かしさを覚える夜だった。







 





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