親子
直人が士郎に声をかけた。
「士郎、優希に求婚したんだってね。あの娘から聞いた」
優希に士郎がプロポーズしてから一週間が過ぎていた。平日の夕飯時にまた父と息子二人きりになったのだ。
「あの子と結婚する気になったんだね。よかったよ」
「まあ、追い詰められた結果の結論だよ父さん。逃げたら優希が悲しむからさ」
「逃げたら、か。本当にそれだけかな」
「優希を『女』として見たくない見たくないと思うからだめだったんだよ。今でも妹のイメージ取れないけどゆっくり少しずつ自分でそのイメージ剥がして行くからさ、ちゃんとした夫婦になるよ」
「うん、それがいいよ」
「でも結婚は優希が十八歳になってからだな」
直人は黙って微笑んでくれた。
「聞いたわよ。優希にプロポーズしたんだってね?」
真砂子も同じような事を聞いてきた。
直人と食事した日の次の朝、休日だった。士郎と真砂子二人きりになった時がきた。
「あの子喜んでたわよ。士郎さんとラブラブするんだ-って」
「そんなに喜ぶ事かな? ただこっちが決意しただけなのに」
「あの子を不幸にしたら許さないからね? お母さんそこに関しては厳しいから」
「……まあ、優希が好きになってくれたんだからその想いに応えるだけだよ、母さん。あと厳しくはしないでほしいけどな」
「そう。それならお母さんは何も言わない事にしようかな」
真砂子も微笑んでくれた。
士郎は改めて決心した。『お兄ちゃん』は卒業だな、と。