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05.過去

眠るときに思い出す人はいますか。

会いたい人はいますか。

ふとした時に感じる孤独はいつか消えるのでしょうか。

 暗い朝だった。

 ドラゴンたちが住む森にひとりの人間がやってきた。黒いローブを着て、左手には捻じれた杖を持っている。人間は杖をドラゴンに向け、何かボソボソと呟いている。次の瞬間、杖から凄まじい光が放たれた。ドラゴンたちは一斉に倒れ、死んでしまった。人間は一頭のドラゴンに近づき、杖を振り下ろす。ドラゴンの角がボトッと地面に落ちる。人間は角を鞄に入れる。

 その後もドラゴンの毛や鱗を取りながら物色を続ける人間は、一頭の黒龍の腹の下に目的の物を見つけた。人間は捻じれた杖を振り黒龍を退かす。黒龍の卵だ。人間は卵を持ち上げニヤリと笑った。


 視界が暗くなり何も見えなくなった。


 僕は遺跡の中で何かの植物に体を縛られていて身動きがとれない。目だけで隣を見るとシャーリーンも同じように植物が体に巻き付いていた。


 再び視界に靄がかかり意識を失った。


 複数のホワイトドラゴンが、襲われたドラゴンの森にいた。まだ子供のホワイトドラゴンが殺されたドラゴンたちを見て泣いている。

 泣いているあの子はシャーリーン…?


 また視界に靄がかかり視界が暗くなる。


 気が付くと目の前にひとりの青年がいた。青年は今にも産まれそうなドラゴンの卵を見つめる。パリパリと音を立てながら漆黒の鱗をした小さなドラゴンが生まれた。

 青年と漆黒のドラゴンは仲良く親友のようだった。

 青年は魔法を勉強し、ドラゴンは成長した。

 ある日、青年とドラゴンの前に黒いローブを着た魔法使いが現れた。黒いローブの魔法使いは、青年に、このドラゴンは自分の物だ、返してほしいと伝えるが、青年は知らないと拒否した。黒いローブの魔法使いは呪文を唱え、青年を殺した。漆黒のドラゴンは倒れた青年の顔を舐める。死んだことをわかっていないみたいだ。黒いローブの魔法使いは漆黒のドラゴンに手を伸ばす。漆黒のドラゴンは敵意を剥き出しにし、黒いローブの魔法使いの手に噛みつく。魔法使いは手を引っ込め、血を見つめる。黒いローブの魔法使いは漆黒のドラゴンに魔法をかけた。漆黒のドラゴンの目から敵意が消え、虚ろになる。黒いローブの魔法使いは箒に乗り飛び立つ。漆黒のドラゴンも飛び立ち、黒いローブの魔法使いについていった。


 何年が過ぎたのか分からない。

 魔法使いの戦争が起きていた。黒いローブを着た魔法使いと大きな漆黒のドラゴンが街を火の海にしている。魔法使いたちが人々を守り黒いローブを着た魔法使いに殺される光景を見て吐き気を催した。

 黒いローブを着た魔法使いと漆黒のドラゴンの攻撃が止まった。赤い鱗のドラゴンが漆黒のドラゴンに炎を吐き攻撃している。青い鱗のドラゴン、純白の鱗のドラゴン、たくさんのドラゴンたちが漆黒のドラゴンに攻撃している。黒いローブの魔法使いはドラゴンの襲撃に怯みもせず杖を振るう。黒いローブの魔法使いの魔法で何頭かのドラゴンが倒れる。今のうちにと魔法使いが人々を非難させる。ドラゴンたちは一斉に火炎球を漆黒のドラゴンと黒いローブの魔法使いに浴びせる。黒いローブの魔法使いは火炎球を魔法で跳ね返す。跳ね返った火炎球が避難している人々に落ち、火の海と化す。ドラゴンたちは人々に気を留めず火炎球を放ち続ける。

 やがてお互いの攻撃が止まった。漆黒のドラゴンは倒れ、黒いローブの魔法使いはボロボロになりながらやっとの思いで立っている。ドラゴンたちはほとんど倒れている。立っているのは赤い鱗のドラゴン一頭だけになってしまった。

 黒いローブの魔法使いは杖を構える。赤い鱗のドラゴンは口に炎を溜める。

 黒いローブの魔法使いの杖から強い光が、赤い鱗のドラゴンめがけて放たれる。赤い鱗のドラゴンの口から巨大な火炎球が放たれる。黒いローブの魔法使いに火炎球が直撃する。それと同時に赤い鱗のドラゴンに黒いローブの魔法使いの魔法が直撃した。

 火の海になった街にたくさんのドラゴンと人々が倒れている。無事に生き残った人々がこの惨状に悲鳴を上げる。その中の数人がドラゴンを崇めていた。


 視界に靄がかかる。体が楽になるのが分かった。植物がシュルシュルと遺跡の奥に消えていった。


 シャーリーンが僕を見つめる。

 僕は、映画を見ているようだと思った。過去にどんなことがあったかなんてどうでもいいと思った。

 シャーリーンはニコリと微笑んだ。

「ここを出ようか。」


 僕とシャーリーンは遺跡を出た。


「今度はきみの過去をみたいな。」

 とシャーリーンは僕を見て言った。


 巨大な樹木にある巣に戻ってきた僕は子供ドラゴンたちと、木の実を食べて眠りについた。

 僕は早くガルに会いたいと思っていた。


読んでいただきありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。


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