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03.旅立ち

続きです。

よろしくお願いします。

 3週間後。

 僕はドラゴンの体にも慣れてきて走り回ることもできるようになった。今は冬で、雪を見たのは久しぶりだ。生まれ変わる前は、高校まで田舎の山の麓に住んでいた。冬になるとよく家族でスキーに行った。


 僕は外に出て雪に突っ込む。懐かしさで胸が締め付けられる。

「リッケンバッカー!」

 ガルが呼んでいる。僕は走ってボロ小屋みたいな家に戻る。ガルはご飯を用意していた。テーブルにはミルクに米を入れて煮た料理が置かれている。ガルの得意料理だ。昔、僕が風邪をひいて寝込んだ時、母が作ってくれたミルク粥に似ている。僕は犬が餌を食べるようにむさぼりつく。

「うまいか、リッケンバッカー。」

 ガルは頬杖をついて自分が食事をするのも忘れて、僕が懸命に食べている様子を嬉しそうに眺めている。僕はガルの前にある皿を頭でつついて、ガルも食べてと目で訴える。ガルは笑いながら食べ始める。僕は嬉しくなり羽と尻尾を少し動かした。


 この3週間、ガルは僕に付きっきりで世話をしてくれた。生まれ変わる前は忘れていた、人のぬくもりを感じていた。あの時、僕は孤独だった。今はガルがいる。人のぬくもりを感じる度、生まれ変わる前の家族と過ごした記憶が蘇ってきていた。


 ガルは身支度をしている。ガルは時々、食料を買いに出かける。今回もそうだろうと思っていた。

「今日はちょっと遅くなるけど明日の朝までには帰ってくるからな。いいこにしてるんだぞ。ご飯は多めに作ったからまた夜に食べろよ。」

 食料を買いに行ったときは、夜には帰ってきていた。それより遅くなるということは別のどこかへ行くのだろうか。

 僕は玄関までガルについていく。ガルは玄関に立てかけてあった古くて大きな箒にまたがる。ガルの周りに風が吹く。ガルは僕を見てニコッと微笑み、一瞬で飛んでいき見えなくなってしまった。僕はその場に立ち尽くしたままガルが飛んで行った方向を眺めていた。


 この家は木々に囲まれている。木々の陰から赤いローブを着た魔法使いがリッケンバッカーを見張っている。


 ガルは次の日の朝になっても帰ってこなかった。僕は、ガルは絶対帰ってくると信じていた。冬が終わり、木々が生命を宿したように生き生きとし始めた。僕は時々、外に出てガルの帰りを待つ。木々の生命にも終わりがきて枯れ葉が地面を覆いつくす。僕は木の実を取ることを覚えた。雪が降り始め、もうすぐ一年が経つことに気づいた。僕はガルを探しに行くことを決意した。


 雪がしんしんと降る。太陽が昇ってきたころ僕は家を出た。


 どこに向かえばいいのかはわからないが、ガルが飛んでいった方向に進む。木々には雪が積もり始めている。

 赤いローブを着た魔法使い二人がガルを木々の陰から見ている。僕が気づいていないと思っているのか。僕は全速力で走りだす。赤いローブの魔法使い二人も走り出す。一人が杖を取り出し僕に向ける。魔法で木々を操り僕をつかまえようとしてくる。僕は懸命に避けるが細い枝が鞭のように四方八方から迫ってきて避けきれない。頬を叩かれ血が出る。もう逃げきれないと諦めかけたとき空から純白のドラゴンが現れ、僕の前に立ちふさがる。赤いローブの魔法使いは、一瞬ひるむが体制を立て直し杖をこちらに向ける。もう一人の魔法使いが攻撃を繰り出していた魔法使いを抑制し「私たちは敵じゃない。」と訴える。純白のドラゴンは長い尻尾で僕の体を巻き付けた。純白のドラゴンは風と共に空に消えた。赤いローブの魔法使い二人は茫然と立ち尽くす。


 雲の中に入って視界は真っ白。僕は純白のドラゴンの尻尾に巻き付かれている。


 ものすごいスピードで飛んでいるせいで僕は酸素を吸えず意識が遠のく。純白のドラゴンは長いまつ毛の奥にあるきれいな瞳で僕を見るが、すぐに前を向きスピードを落とすことなく飛んでいく。


 (ガル…、早く会いたいよ…)

 僕は完全に意識を失った。


読んでいただきありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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