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【書籍化】廃公園のホームレス聖女  作者: 荒瀬ヤヒロ
第二部 光の聖女と闇の魔導師
83/198

第41話 アルムの戸惑い




 ***


 空に浮かんだ黒い塊はどんどん巨大化していく。


 そろそろ領民達が異変に気づいて騒ぎ出している頃だろう。そう考えたヨハネスがおそるおそるアルムに近づいて言った。


「アルム。瘴気が大量に集まりすぎている。とりあえず、あの塊を浄化してくれ」

「え……あ……」


 天敵のヨハネスが近づいてきたというのに、アルムの反応は鈍かった。目をぱちぱちと瞬いて戸惑う様子を見せるアルムに、ヨハネスが首を傾げる。


「アルム?」

「あ、えっと、はい! 浄化します!」


 気を取り直したように空に手をかざしたアルムは、塊に引き寄せられてきた瘴気に向けて光を放った。空を覆っていた瘴気があっさりと浄化される。


(次は、あの塊を浄化してエルリーを助け出す……)


 アルムはエルリーを覆う塊に手のひらを向けた。だが、その手から浄化の光が放たれる前に、レイクが声を張り上げた。


「いくら浄化しても、あの子の闇の魔力がなくなるわけじゃないぞ! お前達は瘴気が消えさえすればいいんだろうが、あの子は魔力の使い方を身につけない限り自由になれない!」


 アルムはびくっと震えて動きを止めた。


(そうだ。私が浄化しただけじゃあ、エルリーは私がいないと駄目ってことになっちゃう……そうじゃなくて、エルリーが自分で魔力を使いこなせるようにならないと……)


 ジューゼ伯爵が何故エルリーを闇の魔導師に引き渡そうとしていたのか、理由がわかった。


 闇の魔導師。それは闇の魔力で瘴気を操り、時に人に害をなす者達のことだ。


 そんな彼らに子供を引き渡せば、強い魔力を利用されるかもしれないとは伯爵も考えたはずだ。

 だが、それ以外に方法がないと思ったのだろう。エルリーを、護符に囲まれた小屋ではなく、外の世界で生きられるようにする方法が。


 伯爵がそう考えたのも無理はない。闇の魔導師なら、エルリーに魔力の使い方を教えることができるはずなのだから。


(私は光の魔力を持っているからエルリーのことが怖くなかったけれど、普通の人にとってはエルリーのそばにいるだけで危険で、怖いって感じるんだ……)


 エルリーを自由にしたくても、それがとても難しいことだとアルムにもわかった。


「王宮の偉い人達がどうにかできないの? 魔力に詳しい人とかいるでしょ?」


 レイクの台詞を聞いたマリスがおずおずと尋ねるのが聞こえた。


「この国では闇の魔力を持つ者はずっと迫害されてきた。特に貴族は光の聖女信仰が強く、闇を穢れと嫌っている。エルリーを連れ帰っても、受け入れられるのは難しいだろう。魔力の大きさを恐れられ、今より厳重に閉じ込められるだけだ」


 ヨハネスはふっと短い溜め息を吐いた。

 重たい沈黙がしばし辺りを支配する。


 とにかくまずは瘴気を浄化しなくては、と気を取り直したアルムが空に向けて光を放った。


 エルリーを包んでいた瘴気がすべて消し飛ぶ——はずだった。




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― 新着の感想 ―
[気になる点] なんかなー、ややこしくなってきたなー。ヨハネスがなぁなぁでアルムに近づくのもモヤつくし伯爵の対応もわかりはするけどムカつくし。世知辛いですねぇ。
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