表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
193/198

第47話 守り人




「谷底の瘴気が生む風を抑えるために、オアシスが枯れないように、光の魔力を持つ者が犠牲になってきた――違うか?」

「……違う」


 ヨハネスの推論に、ダリフは憎しみに顔を歪めて否定した。


「ダリフ……わしのために」

「違う!」


 吠えるように叫ぶダリフを見て、アルムははっと気づいた。


「もしかして、次に生け贄になるのはハールーンと決まっている、とか?」


 マリスを捕えている男女がぎくりと震え、ダリフは射るような目つきでアルムを睨みつけてきた。


「そうか。それでヨハネス殿下をハールーンの身代わりにしようと……」


 大恩ある主と、憎いシャステル王家の王子。

 どちらを犠牲にするかと問われたら、考えるまでもないだろう。


「ダリフ……ミリアムとメフムトに頼まれたのだろう? わしを助けてほしいと……」

「……違う」

「あのふたりが関わっていることは、もうわかっているんじゃ。だから……」

「違う! 決めたのは俺だ!」


 ダリフが叫んだ。


「……数十年に一度、光の魔力を持って生まれた者が『守り人』となって、谷底に身を投げる……でも、谷底からの風は、年々強くなる一方で、前回の『守り人』は、その前から二十年足らずしか経っていなかったと聞いた……このままじゃあ、あと数年で『次』が来る……!」


 うつむいたダリフの目からぼろぼろと涙がこぼれた。


「俺は嫌だ!」 そんなの……っ」

「ダリフ……」


 ハールーンが足を踏み出し、ダリフに歩み寄った。

 震える肩に手を置いて、優しく言い聞かせた。


「十年前、母上が『守り人』となった時に、わしもいつかそうすると心を決めておる」

「でもっ、お前は『次』じゃなかったのに……!」

「次の『守り人』に決まっていた叔父上が、二年前に病気で亡くなった。あの時から、考えていたのか?」


 ダリフは子供のようにしゃくり上げる。


「ハールーン、お前は……普段はどうでもいい泣き言ばかり言うくせに、肝心なことはひとりで静かに受け入れて、怖いとも嫌だとも言ってくれない!」


 悲痛な叫びが谷に響いた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] まぁ、ヨハネスを差し出せば丸く治るならそれで良いか。 よし、マリス連れて撤退じゃ〜
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ