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第8話 マリスの困惑




 不快な振動と身体の痛み、息苦しさで目が覚めた。

 目を開けたのに、視界が白くぼんやりとしている。マリスは目を擦ろうとして、手足を縛られていることに気づいた。口には猿ぐつわが噛まされている。

 頭の奥が揺れているような感覚がして、目を閉じて眠ってしまいたい気になるが、体の下の硬い感触とガタガタとやかましい振動がマリスの意識を引き戻した。


(……いったい……なに、が……)


 何度も目を瞬いて、ようやく自分が白くごわごわした布に包まれているということがわかった。いや、包まれているというよりは、袋に放り込まれたような形か。それから、体には毛皮のようなものが巻きつけられていて、身動きがとれない。


 そこまで考えて、自分が何者かにさらわれたことをはっきりと思い出した。


(この揺れは……荷馬車かなにかに乗せられて、運ばれている?)


 揺れの激しさや時折石に乗り上げたかのような衝撃に、王都の整備された道ではないと直感する。


(なんで私を……お父様に恨みがあるとか? いえ、それならわざわざダンリーク家にいるところを狙われた理由が……)


 その時、揺れが止まってマリスの体が何者かに抱え上げられた。

 恐怖に身をすくめるが、存外丁寧に下に降ろされた。そして、頭の上から縄を解くような音がして、白い布が首の辺りまで下ろされる。急にまぶしくなって、マリスは目をすがめた。


「水だ」


 猿ぐつわをずらされて、口に皮袋を当てられる。一瞬抵抗しそうになったが、ぐっと上を向かされて無理やり飲まされた。幸い、のどを通ってきたのは言葉のとおりただの水だった。


「もう少し、辛抱願います。聖女アルム様」


 水を飲まされた後で、そう言われた。

 マリスは「えっ」と声を漏らしたが、再び猿ぐつわを噛まされて袋の口を縛られる。


(どういうこと? アルムと間違えられている?)


 戸惑うマリスを担ぎ上げ、荷台のような場所に下ろすとまた振動が再開する。


(狙われたのはアルムだったの? じゃあ……もし、かして……せい……あ、れ? ……なんか、眠……)


 とても眠れる状況ではないのに、強烈な睡魔が襲ってきて、マリスは途切れそうになる思考で必死に抗おうとした。


(……水に……薬、が……)


 このまま眠ったらどこに連れていかれるかわからない。


 だが、意識をとどめておくことはできなくて、マリスは荷台にぐったりと横たわった。




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