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第4話 狙われた令嬢




「ん……」


 ふっと目を覚ましたマリスは、見覚えのない天井を眺めて友人の家にきていることを思い出した。


「到着早々眠っちゃうなんて、恥ずかしいわ」


 眠ったおかげで頭はすっきりしていたし、体の芯に染み込んでいた寒さも消えていた。

 身を起こしてサイドテーブルの鈴を鳴らすと、ダンリーク家の侍女が入ってきた。


「お目覚めでいらっしゃいますか」

「私の侍女はどうしたかしら?」

「少し熱があるようでしたので休んでもらっております」

「ああ……昨夜は冷えたものね」


 一番いい部屋に泊まったマリスでも寒かったのだ。他の部屋はきっともっと凍えるようだったろう。


「アルムはどうしているかしら?」


 着替えを手伝ってもらいながら尋ねると、「出かけている」と答えが返ってきた。


「もうじき戻られると思います」

「そう」


 お茶をお持ちします、と侍女が部屋を出ていくと、マリスは窓辺に立って外を眺めた。

 すると、空からひらひらと雪片が落ちてきた。今夜も雪になりそうだ。

 ジューゼ家は領地が王都に近いため、タウンハウスを持っていない。宮廷貴族ほど熱心に社交もしないので、マリスが王都にきたのはこれが二度目だ。

 ひとりで慣れない王都にいると思うと心細くなる。


「アルム、早く帰ってこないかなあ……」


 そう呟いた時だった。


 目の前の窓が突然勢いよく開き、冷たい突風と雪が吹き込んできた。


「!?」


 吹きつけてくる風に目をつぶり、マリスは息をのんだ。


 必死に目を開けようとするマリスの前に、風雪と共に侵入してきた何者かが立つ気配がした。

 マリスの背中に冷たい汗が流れる。


「――き、」


 悲鳴をあげようと開いた口を一瞬早くふさがれて、マリスは必死にもがいた。だが、なにか薬を嗅がされたのか、すぐに体の力が抜けて急速に意識が遠のいていく。


 侵入者はマリスを担ぎ上げると、入ってきた時と同様に窓から外に出ていった。


 ***



 予定していた終了時間までまだ少しあるが、一時的に広場から人がいなくなったのでアルムは手持ち無沙汰になった。


「あふ……」


 することがなくなると急に眠たくなってきて、アルムは欠伸を噛み殺した。

 ここ数日、『初めてのお友達のお泊まり』に興奮と緊張をしていたせいで、あまり眠れていなかったのだ。アルムは目をしょぼしょぼさせた。


「アルム、疲れたでしょう。先に帰ってもいいわよ」


 アルムが立ったままうとうとしているのに気づいたのか、キサラがそう声をかけてきた。


「ふぁい……では、お先に失礼しまふ」


 アルムはぺこりとお辞儀をして歩き出した。

 だが、アルムが王宮前広場から出るより先に、一台の馬車がけたたましく飛び込んできた。


「アルム!」

「お兄様?」


 馬車から転がるように降りてきたのはウィレムだった。アルムは眠くて擦っていた目を驚きでぱちくりした。


 そのアルムの肩に手を置いて、青ざめたウィレムが震える声でこう言った。


「アルム、落ち着いて聞いてくれ。――マリス嬢がさらわれた」


 アルムは大きく目を見開いた。







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