第40話 喇叭とエルリー
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「……どうにかなったか」
門の外から聞こえてくる歓声に、ワイオネルがほっと息を漏らした。
アルムの考えた『楽しいことで誤魔化しちゃおう作戦』が、どうやら上手くいったらしい。
「礼を言う。アルム」
「いやあ……」
真摯に頭を下げられて、魔力で生やした木にリンゴを実らせては空に放っていたアルムは目を泳がせた。
アルムとしては、ここで起きたことが詳らかになるとエルリーが困ったことになりそうだったので、うやむやにしたかっただけである。
(あの喇叭どうしよう……一応、取り上げた方がいいかな。でも、エルリーは気に入っているみたいだから、泣かれちゃうかも)
アルムは「うーん」と頭を悩ませながら視線を移した。
「あれ? キサラ様、エルリーは?」
「ああ。目を覚まして、そこで遊んでいるわよ」
眠ってしまったエルリーを抱いていたはずのキサラに尋ねると、彼女は「そこ」と言って木々の間を指さした。
アルムが目をやると、目を覚ましたエルリーはリンゴの木々の下を元気に走り回っていた。
ご機嫌な様子で楽しそうに、手にした喇叭を「ぷ、ぴ、ぽ」と鳴らしながら。
「あああああっ!」
突然声をあげたアルムに、ぎょっとした皆の視線が集中する。
「ど、どうしたの?」
「え、あ、いや……えーと、あれぇ?」
エルリーが喇叭を吹いている。
けれど、なにも壊れる気配はない。
(地下が壊れたのは偶然だったのか……そうだよね。なーんだ、よかった)
アルムはほっと胸を撫で下ろした。
「ん? そういえば、あの喇叭はなにかしら? あんなの持ってこなかったはず……」
「えーと……」
首を傾げるキサラに、アルムはどう説明したものかと苦笑いを浮かべた。




