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【書籍化】廃公園のホームレス聖女  作者: 荒瀬ヤヒロ
第三部 囚われの王子と聖女の大冒険
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第34話 崩壊を告げる音




「闇の魔力を持ちながら闇から生まれた悪を討つダークヒーローを演じてもらうに当たって、細かい設定を打ち合わせしたいんですが」

「ふむふむ。私は演技力には自信があるよ。牢番の演技も完璧だっただろう?」

「ええ! 闇に怯える演技も、全部自作自演だったんですね」

「ふふん。私の部下の演技もなかなかだよ。暗殺者役を見事にこなしてくれたからね。実に有能な男だよ」

「暗殺って……もしかしてワイオネル殿下を狙ったのって」


 アルムとシンの会話が続くと、だんだんとレイクのこめかみに青筋が立ってきた。


「ええい! もう帰りますよ! 頼まれた仕事はやったんだ。長居は無用です」

「ええ~? 残念だけど仕方がないな」


 レイクに胸ぐらを掴まれて口を尖らせたシンは、アルム達に向かってぱちりと片目をつぶってみせた。


「それじゃあ、後はお手並み拝見」


 そう言うと、シンとレイクの姿がぱっと消えた。


「ああ~! サメの人が逃げた!」

「残念だったね。きっといつかまた会えるよ」


 主役に逃げられて嘆くアルムの肩に手を置いて、セオドアが慰めてくる。

 アルムはがっかりしたものの、気を取り直してエルリー捜しを再開することにした。



 ***




 サメの人に逃げられた後、エルリー探しを再開したアルムだったが、延々と続く石の壁に嫌気がさしてきて思わずぼやいた。


「はあ……何か吹っ飛ばしていいものいないかなあ。綺麗さっぱり消し去ってスッキリしたい」

「危険人物みたいな台詞だね」


 セオドアの胡散臭い笑顔もずっと変わらなくてうんざりしてきた。


「エルリー、どこにいるのー?」

「……あーるぅ?」


 かすかに、エルリーの声が聞こえた。

 慌てて辺りを見回すが、小さな姿はみつからない。


「エルリー?」

「あーるぅ!」


 声を頼りに捜すと、ひび割れた壁の隙間から声が聞こえていることに気づいた。その隙間を覗くと、分厚い壁の向こうにちらりと小さな影が動いているのが見えた。


「エルリー、ちょっと待っててね。今、そっちに行くから」


 そう言ってみたものの、ここからどういう道順をたどればエルリーの元に行けるのか見当もつかない。手っ取り早いのは壁を壊すことだが、崩壊の危険性がある上に、壁を吹き飛ばせば向こう側にいるエルリーが危ない。


(どうしよう……)


 アルムは壁を睨んで眉根を寄せた。



 ***



「あーるぅ……むー!」


 大好きなアルムの元へ行きたいのに、こちらへ来てほしいのに、分厚い壁が邪魔で手も伸ばせないことがエルリーはたいそう不満だった。


 胸に溜まった不満な気持ちが重苦しく、どうにかして吐き出したくてたまらなくなる。

 エルリーは無意識に握っていた喇叭の持ち手を引き寄せた。そして、大きく息を吸うと思いっきり喇叭に息を吹き込んだ。


 ぷあーんっ!


 と、軽い破裂音が響いた。


 次の瞬間、ずん、と下から突き上げるような振動が通路を揺らした。それと同時に、壁にも床にもビキビキと亀裂が走る。

 ばきぃっ、びしっ、とひび割れる音が立て続けに響いて、通路の崩壊が始まった。




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