第28話 二度聞いても理解できない
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王城の執務室にて、ワイオネルは徹夜のせいで鈍く痛む頭を押さえて顔をしかめた。
いくら調べても、犯人の目星がつかない。
ワイオネルを狙うふりをしてヨハネスを排除しようとした。
ワイオネルを排除してヨハネスに罪を着せるつもりだった。
両方の可能性を考えているが、これといった手がかりもなく貴族間に怪しい動きもみつからない。
「やはり、もう一度あの男から話を聞くか」
ワイオネルを襲撃した実行犯は尋問のために城の地下牢に捕らえられている。国王代理を狙った以上、いずれ尋問が終われば監獄塔送りになるだろう。
地下へ降りるために見張りに声をかけ、ワイオネルは近衛騎士をその場に残して一人で階段を下りた。
だが、牢の前に立ったワイオネルは顔色を変えた。
「どういうことだっ……」
牢の中は空だった。
即座に見張りを呼びつけると、駆けつけた彼らは牢を見て真っ青になった。囚人は捕らえられてからずっとおとなしく、暴れることもなく静かだったという。ワイオネルが来るまでは尋問官以外は囚人の元を訪れていない。
いったいどうやって脱獄したのか、呆然とするワイオネルの元へ、慌てた様子の騎士が駆け込んできた。
「報告します! ご命令により神官数名と共に塔へ向かいましたが、塔には大量の瘴気が取り巻いており中に入れず、やむを得ず説明を聞こうと牢番小屋へ入ったのですが――」
「大変です! シャークネードがシャークレインボーになって空の彼方へ消えたことで一部の民が『神の怒りに違いない!』と騒いでおります!」
「は? ……は?」
騎士の言葉の途中で新たにもたらされた報告に、ワイオネルは思わず二度聞き返したのだった。




