たとえ孤独になろうとも
1章 大逆転人生
2024年 10月10日 独裁気味となった江口総理よりその法律の施行が宣言された。
その名も「強制従人化法」
ごく一部の国民に特権をあたえ、生きることへの希望を見出すことを目的としているらしい。
ある種、王の権利とも言える力を手にすることになるため自殺率の低下を目的としたものだ。
その法律は大まかに
・無作為に選ばれた一部の国民はCカードと呼ばれるものが政府から支給される
・Cカードを手にしたものは1日に一度ある一人に対してそのカードを提示することで1時間の時間を限度とし、好きに命令をすることができる。
・命令されたものは必ずその命令には従わないといけない、万が一命令に従わない場合は、財産の没収と20年の懲役刑が課せられる
・命令を与えるものは故意に傷つける行為、人命に関わる行為、金銭の授受やそれに準ずる行為は禁じられている。守らなかった場合はその命令が無効となり、特権が剥奪される
そんなことが各メディアが取り上げていた頃、僕はいつもと何も変わらない生活を送っていた。
「怖い法律出来上がってもたもんやな」朝ごはんの準備、見飽きた目玉焼きを皿に盛りながら母が僕に話しかける。
特別な用事でもない限り親とは話すことはない僕はいつものように
聞こえるか聞こえないかの声で「ん、」と返事とも取れない声でかえした。
どのメディアでも取り上げられているこの法律は否が応でも情報として脳裏に刻まれていく
(なんでも誰にでも命令を聞かせられるカードか・・・
目障りなクラスメイトや気に食わない先生、誰にでも・・・)
「まぁ、ないな」
3ヶ月に一人、たった一人にしかその権利は与えられないという条件から僕は、「1億円を拾ったらどうする?」といった絵空事と変わらないことに冷めた笑いと共にそう独りごちた
その声が聞こえたのか、前の席に座るクラスメイトの女子が一瞬不審そうにこちらを振り返る。
僕と目があうとすぐに友達の方へと向き直り一層小声になり井戸端会議を続けた。
僕は机に突っ伏し今日という日が早く終わらないかと願うのだった。