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第9話 誕生祭初日、夜の部の準備

 今日の為に用意した昼食をよく味わって食べてから、私は自室で夜のパーティーに向けて準備していた。

 「それじゃあ、今日はこのドレスでエルゼ様綺麗な銀髪をアップにして、ネイルはドレスの色に合わせましょう。」

 私は人形のように我が身をマリアとサンを筆頭とする侍女達に委ね、終わるのを待っていた。

 少しずつ出来上がっていく()()()()()()美しい私に不思議な感覚を覚える。

 「不思議・・・私じゃないみたい・・・」

 「大変お美しいですよ、エルゼ様。」

 「マリア、サン、それ他の方々もこんなに綺麗にしてくれてありがとう。」

 「これも私達の役目でございます、エルゼ様、初めてのパーティーどうか楽しんでください。」

 マリアとサンを手伝いにきた中にお母様の専属侍女がいた。

 「クレア、これからもお母様の事よろしくお願いしますね。」

 「もちろんでございます、エルゼ様」

 一通り声をかけた所で扉をノックされ、マルス兄様がエスコート役で来たようだ。

 「お待たせ、エルゼ。」

 「大丈夫です、丁度準備が終わった所ですから・・・その、マルス兄様、いかがですか?」

 「えっ?・・・ドレスがいつものよりも大人っぽいね?」

 「・・・そうですか、行きましょうか?マルス兄様?」

 「え、エルゼ?・・・あっ、エスコート役を置いて出ていくのはちょっとひどくないかい?!」

 私とマルス兄様のやりとりを見た侍女達はクレアとも目を向け、黙して語り、代表としてクレアがマルス兄様にぴしゃりと言った。

 「マルス()()()()、今度のマナーの講習でしっかり女心の講義を致しますので、御覚悟くださいませ。」

 それを聞いたマルス兄様は、

 「それ、1日中やる奴だよね・・・すいませんでした。エルゼを追いかけます。」

 「はい、よろしくお願いいたします。」

 この後、肩を落としながらもマルス兄様は私を追いかけてきたので、宴が終わった後でクレアには優しくしてあげるように頼んだ。

 マルス兄様と手をつないでパーティー会場に入り、奥にある控え室に向かう。

 「料理長達もすごく頑張ってくれたのね。」

 並んでいる料理はとても美味しそうだった。

 「エルゼは結構食べるのが好きだよね、料理長に頼んでいたお米?っていう料理もすごく美味しそうに食べていたし・・・」

 私は少し恥ずかしそうにしながら、

 「良いじゃないですか、好きなんだから・・・太るとか言ったら、マルス兄様でも容赦しませんよ?」

 途中から黒いモノを撒き散らしながら、マルス兄様を見つめていると、

 「おや?これはこれは、我が国の至宝が二つ、このような所で出会えるとは、正に望外の幸運と言うもの。」

 少し、いやかなり回りくどい言い回しをした、父よりも年上のおじさんに声をかけられた。

 「・・・お兄様、まだ始まっていないのに声をかけるのはアリなのですか?」

 私は人見知りの振りをして、ちゃっかり兄の背後に回り、兄に彼のした事の対応をさりげなく押し付ける。

 こういう時に猫を被るのは女の特権だ。

 まだ情報が何もないうちに手の内を晒す事はできない。

 「・・・ベルタ卿とお見受け致しますが、お間違いはなかったでしょうか?何分、僕もアルド兄上も、下のレオンも、あなたのような領主の方と個人で会話をするなと言いつけられております。我が父、帝王陛下から・・・」

 「いえいえ、会話などと滅相もございません。ただただ帝室のご尊顔を拝謁したかっただけでございます。マルス様とエルゼ様といつの日か謁見できる事を楽しみ致しております。これ以上の語りかけはお二人のご迷惑になりかねませんのでこれにて私は失礼させていただきます。」

 「いえ、こちらこそ大事な家臣にまだ何も報いる事が出来なくてすまない、だが、許可を得る事が出来たら()()あなたと改めて会話させていただく。」

 「左様ですか。エルゼ様もご機嫌よう」

 「はい、ベルタ卿も今宵の宴をお楽しみ下さい。」

 語るだけ語り、自分一人で歩いていったベルタ卿から視線を離さずに少しずつ彼の歩いていった方向に移動していく。

 「・・・マルス兄様、今のルール違反じゃ・・・」

 「ルール違反だけどそこまで酷いものじゃないから、とりあえず父上に報告するぐらいしか出来ないかな。それより早く控え室に行こう。」

 私は再びマルス兄様と手を繋ぎ、控え室に向かった。

 その途中で、

 「エルゼ、さっきみたいに兄を盾にするのはどうかと思うのだが?」

 「お兄様、世の中の妹は頼もしい兄の背中を見て成長していくのですわ。」

 「何一つ答えになってない・・・」

 「お兄様、先程のように女性を褒める事が出来ないのもそうですが、女性の秘密を覗こうというのも嫌われる一因ですわよ?」

 「どの辺りがエルゼの秘密につながる部分があったのか、ぜひ詳しく。」

 「いけませんわ、お兄様。兄妹でなんて・・・」

 「何かますますひどくなっている気がする!早く控え室に行くよ、エルゼ!」

 「あ~れ~~・・・」

 少々悪ノリしだした妹の手を引っ張りながら控え室に向かった。

 引っ張られる妹はいまだにイタズラをしながら・・・

 後に両親の耳に入り、マルス兄様が全力で訂正するのは2週間後である。

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