第4話 一年の研鑽にダンスのレッスン
あの家族とのふれあいから魔力の操作の訓練と、マナーや刺繍等々の講義にこの国の歴史や法律の勉強などと、興味が湧いたものを片っ端から勉強していたら一年が過ぎていました。
今、私は自分の誕生祭に向けて、準備をしている真っ最中です。
去年は熱を出してぶっ倒れた為、今年こそは社交会、すなわちパーティーというやつでダンスを踊らなければならない。
私はまだお子様だから最初はお父様に相手をしてもらって、次にマルス兄様に踊ってもらって、その次はレオン兄様、次がアルド兄様、という感じで家族と踊ってから適当に手をとって踊っていく感じである。
ちなみにアルド兄様がなぜ最後かというと、お兄様達の説得に手擦ってしまい、了承を得た順番という形になってしまった。
「アルド兄様ももう少し素直ならよろしいのに・・・」
おかげで何かの噂が立つ事は必至、学校に入学する辺りで面倒事にならないといいけど・・・
などと考えながら今、私はダンスのレッスン中だ。
因みに学校とは平民、貴族、帝室の立場に問わず全員が通わなければならない学習施設である。
入学する歳は10歳からで、立場によって習うものが変わってくる。
平民は読み書きと計算を、そして貴族、帝室は歴史や政策などの学習や意見のぶつけ合いと剣や魔法等の戦闘及び自衛技術の鍛練である。
平民も剣や魔法等の鍛練を受ける事が出来るが、読み書きと計算の学習を修めてからという条件になっている。
そのおかげで我が国の識字率は他国と比べて非常に高く、その割合は驚異の9割9分であると言われている。
その為、我が国の商人達は非常に強かで他国からの仕入れの時に遺憾無くその才覚を振るって値切り、売る時には言葉巧みに高品質な商品をより魅力的に売りつける。
何よりも彼ら商人も愛国心が強く、我が国の魅力を語りながら諸外国を旅するものだからそれに釣られた優秀で将来性の有る者を次々に引き抜いていく、とまで言われて各国の王室等に恐れられている。
商人だから他国が敵対して危害を加える事も出来なくはないが、彼らは他国内にも味方をしっかりと作っている。
自領の民を連れて、我が国に亡命する事も辞さないという貴族まで引き抜こうとしている事が驚きである。
「我が帝国の民は皆宝物よね・・・」
レッスンの休憩中に、先々月ぐらいからやっている授業で習っている事を頭の中で復習していると思わず一言漏れてしまった。
「ありがとうございますエルゼワイト様。我ら帝国臣下、民草の末端までこの国の為に生きていく事が何よりの誇りでございます。そして敬愛する帝王閣下と帝室の一員である姫様に、そのように言ってもらえる事は大変誇り高い思いで一杯でございます。」
ダンスの先生が感極まると言った風に、そう言われてしまい、私もしっかりと言わないといけなくなってしまった。
「あなた達臣下、そして今も働く民草こそ帝王閣下と私達帝室が周囲に示す誇り、あなた達の頑張りがあるからこそ、この帝国は世界に対し平和な国であると言えるのです。もちろん、この帝国のすべてが幸せであるなどと傲慢な事を言う訳ではないですが、それでもそうであろうとするあなた達の努力にこそ私は脱帽し、尊敬に値すると思っています。」
授業でこの事を調べ、幼なじみの侍女とお目付け役の近衛騎士に無理を言って一回だけ城下に抜け出したが、皆の活気が違った。
私の目に写る人すべてが生き生きとしていて、誇りを持って生きている事がわかった。
彼らにとってこの国は何よりも誇りなのだと、通りすがりの人にまで言って貰えた。
だからこそ私は帝室の一人として、彼らに誇ってもらえる人になりたいと思った。
その思いを得た経験について思い返していると、先生の反応がない事に気づいたので、顔を上げて先生の方を見ると、
「~~~~~!?!?!?」
声にならない声を出しながら、滝のように感涙を流す先生が目に入り途方に暮れた。
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