第30話 長兄の恋とお兄様達の悩み
祝30話、これからも暖かい目で見ていただけると幸いです。
お風呂から上がったら朝食の時間なので食堂に向かう。
今の私は成長期なのだから前世の思春期の女の子のようにご飯を食べない選択肢はない。
来年開かれる武天魔祭が開かれる頃には私は11歳なのだからしっかりと食べて勉強、よく寝ておかないと将来に女として差し支えるかもしれない。
美容的な意味で・・・
そんな事を考えていると食堂に着いたのでアンナに開けてもらってそのまま食堂に入る。
「アンナも朝食はしっかり食べてね?」
「勿論です、姫様。美容の為にも私も臣下用の食堂で朝食を食べさせていただきます。食べ終わったらまたこちらに来て姫様の下に参りますので。」
「うん、待っているわ。」
一緒にお風呂に入り、ある種の女の友情が目覚めた私達はそう言って別れた。
中にいたのは都合がいいことにお兄様達だった。
「おはようございます、アルド兄様、マルス兄様、レオン兄様。お食事中に悪いのですが・・・少しご相談が・・・」
などと、私が言うと
「エルゼの相談か・・・長兄としては可愛い妹に二つ返事で任せろと言いたいが、お前の相談は基本的に難事だからなぁ~。」
アルド兄様はもう18歳、この世界の成人は例によって15歳だ。
その為、結婚も早いのだがアルド兄様は私を理由に断っている。
具体的にいうと、
「・・・アルド兄様だって、私に相談する時は難事じゃないですか。恋文や見合いの角が立たない断り文句を一緒に考えたのは誰なんです?正直、帝位の事は横に置いておいてアルド兄様がしっかりと好きな方と紡がれる事を私は妹として要望を出しておきますわ。」
「そういうエルゼこそ、やれ行事だ、企画だと色々考えた所までいいが、その後の実行と準備に手が回らなくて手伝ってあげたのは誰だと思っているんだい?企画をする事が悪いとは言わないし、楽しいのもわかるけど働きすぎ良くないよ?・・・後、恋人関係はしっかり考えているから、今度父上を止めるのを手伝ってくれ・・・ようやく、答えてくれたのだからここで見合いなどやってヘソを曲げられるとまた機嫌が・・・」
「・・・?結局、アルド兄様はどちらがお好きなんですか?私のマリアとサンを泣かせる事は許しませんからね?」
「・・・それは紹介した時の楽しみにしといてくれ、心配せずともちゃんと一人だけだから。」
「マリアもサンも私に付き添ってくれるのは嬉しいのですが、自分の婚期を先送りにしてまで仕えさせるつもりは私には無いですからね。アルド兄様が口説いていない方にもしっかり恋をするように私が心配していたと言っておいてください。」
「いや、男の俺がそんなことを言うとまさに素足で罠を踏み抜く行為だろ?とりあえず、もう一人に関してもレティアスのやつが口説いているよ・・・」
「レティアス兄様も一緒なのは私も知っていますが、二人とも年上が好みだとは思いませんでした。」
「その辺りは結構人によって好みが分かれるんだぞ?エルゼ。俺もレティアスも昔からの初恋をずっと追いかけてきたしな。」
「・・・是非詳しく聞きたいですね!?いつから好きだったのかとか・・・」
「それはまた今度だな、俺も仕事があるしな・・・」
「アルド兄様も昔はお父様といつも追い駆けっ子していたのに・・・」
私が少し頬っぺたを膨らませて抗議すると、私の朝食がきた。
本日の献立は焼きたてのパンとサラダに鶏肉の煮込みシチューだ。
「あれは、父上が見合いしろなどと言わなければ俺も全力で逃げたりはしなかった。」
「何回か激しく周囲を壊してましたけど、あれは大丈夫だったのですか?」
「とりあえず、ダンジョンにレティアスと一緒に潜って、父上が壊した分まで俺が補填したら、サーシャ叔母上が味方になってくれてな・・・父上に文字通り雷が落ちてた。」
「まぁ・・・お父様ですし、どうせちょっと焦げたくらいなんでしょう?」
「あぁ、本当にちょっと焦げたくらいだったな・・・うちの帝王陛下ちょっと頑丈過ぎないか?」
「その分安心できるってことで・・・」
などと言って私はアルド兄様から視線をずらして目の前の料理に集中する。
「・・・アルド兄上はエルゼに何を相談しているんです?」
マルス兄様が今度は話しかけてきた。
「恋の悩みは人それぞれなのですから、別におかしな事ではないと思いますが?」
私がそう首を捻ると、
「・・・アルド兄上が見合いを全く受けないせいでこっちに全部来てるんだよね・・・」
レオン兄様がそう苦情をもうしていた。
「別にマルス兄様もレオン兄様も好きな方がいらっしゃる訳ではないのでしょう?なら仕方ないと思いますわよ?結婚はある意味帝室の義務なのですから・・・」
そう言うと、マルス兄様が大変失礼な事を言った。
「その言葉、自分に返って来ないといいな?」
「そういうマルス兄様に返って来そうですけどね?明日も控えていると聞いていますよ?マルス兄様だってもう成人しているのですから、お父様に一矢報いるくらいはしないとお父様は更に調子に乗りますわよ?」
「ぐっ・・・可愛い妹がいたいけな兄を苛める。」
「レオン兄様も来年には成人ですし・・・多分、お父様は更に酷くなると思いますわよ?」
「父上ももう少しゆっくりと見合いを組んで欲しいんだけど・・・業務に差し支える程スケジュールを組まないで欲しい。」
そうレオン兄様が辟易していたので私は自分に都合がいい提案した。
「でしたら、来年から開かれる予定の武天魔祭に参加する名目でしばらく私と模擬戦しませんか?」
私がそう聞くと、
「「やる!」」
即答だった。
「なら、お父様には私が伝えておきますね。それと、明日から早速でお願いします。」
「エルゼは相変わらず元気だよね・・・」
「何で二人とも苦笑いなんですか!?明日から手加減しませんからね?」
そう言って私は待機している侍女に食器を下げてもらうと、
「エルゼ様、お待たせいたしました。この後は如何致しますか?」
アンナが迎えに来てくれたのでお父様の所へと向かう。
「お父様の所に行くわ、マルス兄様とレオン兄様を組手の相手にさせてもらうから、組んでる見合いを全部キャンセルしてもらうわ。」
私の目的を聞いたアンナが、
「・・・噂だと半年先まで予定が埋まっていると聞いたことがありますが?」
「それはお父様の自業自得だから仕方ないわよ。せめて今度はお兄様達にちゃんと好みを聞くようにさせるわ。それに、お母様が復帰したらそれも無くなると思うしね。」
「そうなのですね、では帝王陛下の執務室へ行きましょうか。」
そして、私達はお父様がいる執務室へと向かい、お兄様達の見合いを全部キャンセルさせた。
特にこれと言った事はしてないよ、只、私の仕事もお父様やってみる?って言ってみただけだよ。
だからこれは脅しではないよ。
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