第25話 母への質問と今とこれからの自分の行い
父と宰相のサーシャおば様に報告をした後、私はお母様の元へ顔を出しに行った。
「失礼します、お母様。エルゼワイト、只今戻りました。」
私は珍しく入ってからカーテシーをして挨拶する。
「お帰りなさい、エルゼ。今回も大活躍だったのかしら?」
お母様が椅子に座りながら水を飲んでいた。
「お母様のお腹、結構大きくなりましたね。」
「そうね、もう少しで5ヶ月目だからね。ここから折り返しかしら?今回は気づくのが少し遅かったのよね~、もう30を過ぎたから正直ギリギリなんだけどね。」
「大丈夫です!私が色々と頑張ってお母様が安心して出産できるように各医師と宮廷魔法師を鍛え直しますから!!」
「そ、そう・・・ほどほどにね?・・・無事に産まれたらみんなにお礼を考えないといけないわね・・・」
「もちろんです!私は鬼のように鍛えるだけではありませんから!!とりあえず、ご褒美はマリアの料理のフルコースから考えてます、私も一緒に作るのは構わないのですが、やっぱりマリアの味には勝てませんし・・・」
私がそのように悩んでいると、
「エルゼ様、私も作る事は構いませんが、やはりエルゼ様の手料理を食べれる事は臣下としては代えようのない誉れだと思います。」
マリアが私にそう助言をくれる。
「なら、新作の料理でも考えてみようか?」
「そうですね、それも有りだと思います。」
「・・・私は是非とも試食係で!!」
私とマリアが新作料理の開発を話あっているとサンがバッチリと自己アピールをした。
それを見た母は、
「クスクス、あなた達3人は本当に見てて飽きないわね~♪」
と言われ、私達は少し恥ずかしさで顔を赤らめた。
「・・・コホン、まぁ、先程の話題はまた後程に議論すると致しまして、私はお母様にご報告があります。」
「うん、いいわよ。ドンと来なさい!」
「・・・う~ん、我が母ながら物凄く頼もしい・・・もうちょっと早く教えても良かったかしら?・・・先程お父様にも伝えましたし、考えても仕方ないので、あっさりと言いますが私には前世の記憶があります。」
「うん、解ってたわ♪」
母は強しと言いますが、我が母の方が規格外ではないでしょうか?サーシャおば様からバレているのは聞いていますが、器がデカイというレベルを遥かに超越して受け入れられた気がします。
「まぁ、あなたからすれば正に体重と同じくらいのトップシークレットなんでしょうけど、正直帝室の人間からすれば初代様のお話を知っている以上、割とすぐに思い当たる事ですからね、可愛い我が娘となれば尚更です。」
「確かに体重はトップシークレットですが、そんなに私は解りやすいですか?いえ、少し魔力の鍛練に熱を上げていたのは否定はしないのですが・・・」
「まぁ、熱を出して倒れた後にあそこまで立ち振舞いが変わればさすがにわかるわよ。城の皆からは女神が降りたとも言われていたわよ?あなたとリリィは特に可愛いから私やアウスよりも年上の家臣なんかは、叔父叔母か祖父母ポジションの目線よ?とにかく成長を見る度に皆して大喜びなんだから、私達夫婦が妬けるくらいね。」
「・・・そんな事になっていたんですね、たまにわからない事があって皆に質問したりしますが、あの気合いの入り方に納得がいきました。」
そう、例えば資料室で魔法や課題の資料を探したりする時に、見つからず近くの人に問い合わせるとすぐに人が集まって探してくれたり、意見を求めたり、わからない事の解説などの質問をすると凄い解りやすく丁寧に教えてくれるのは、どうやら我が帝国の家臣が優れているからという理由だけではなかったようだ。
「・・・まぁ、それについては考えないようにします。皆の善意ですし、私がやりたい事は尊重してくれていますし・・・お兄様達は私の前世の事に気づいているのでしょうか?」
私がそう疑問に傾げると、
「アルドは薄々といった所じゃないかしら?マルスとレオンはエルゼだからという理由で色々と匙を投げているから、まだ暫くは気づくことはないと思うわ。・・・それと、アルドはあなたに帝位を預けるつもりみたいよ?」
アルド兄様が気づいていることもそうですが、
「私に帝位を譲る理由は何ですか?」
まさかアルド兄様がそんな簡単に私に帝位を譲るとは思わなかった。
「一応、預けるという体であなたに譲るみたいよ。理由は言わないのよね、あの子。多分、あなたが強いからだと思うけどね、剣の稽古はまだ始まってないからともかく、魔法の方はもう私と同じか、下手するとサーシャお義姉様との稽古についていく事も出来るんじゃない?」
そう言われた私は、
「お母様、アルド兄様達と腕比べが出来る機会が欲しいです!具体的には遠方の地行われている武道会的なやつがやりたいです!」
「・・・そう言うと思ったから、サーシャお義姉様に頼んでおいたわ。只、あなたが学校に通える時期くらいにならないと出来ないんじゃないかしら?」
「それでも大丈夫です!ふふふ、燃えてきた~!明日から早速剣の稽古を始めてもらわなければ!いや、先に産婦人系の医療体制についても打ち合わせもしないといけませんね!リリィにもアスカの話をしなくてはならないし、やる事は盛りだくさんです!」
「あらあら?あまり頑張りすぎて体を壊さないようにね?」
「はい!気をつけて頑張りますね、お母様!では、私はここで失礼します!」
「はい、行ってらっしゃい。」
やる気に満ちた私は、この後リリィの元に行き、アスカの専属侍女の件を伝え、リリィにも色々と魔法の稽古を頑張ってもらうように頼み、その見返りにちょくちょく一緒にお風呂に入る事になった。
その翌日には医師達と宮廷魔法師を集め、前世の医療知識と魔法の併用による新たな医療体制を議論し、新医療の礎を私は無自覚に築き上げ、知らぬ内に私は歴史に名を残す事を行っていた。
その事に気づくのは50年後、孫に当時の話をせがまれた時だった。
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