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第21話 経過観察と事後調査

 泉の浄化から5日程時間が過ぎていき、井戸の水や山頂付近にある泉の水にも、再度浄化の魔法をかけて様子見をしていたがそろそろ帝城に戻る頃になった。

 「アスカ、お母様のご容態はいかがかしら?」

 「はい、エルゼ様のおかげで今ではしっかりとご飯を食べる事も出来ます。リハビリとしてお庭の散歩も出来るくらいに回復しました。」

 その話を聞いて、周辺の確認が終わり次第帝城に帰る事にした。

 「リライブ伯爵はどちらにいらっしゃるかしら?」

 「はい、今日は執務室の方で貯まっている書類を処理するそうです。」

 しっかりと必要な事を確認しているアスカに私は感心しつつ、

 「そういえば前世についての話なんだけど、それについては帝城に戻ってから改めて相談しましょう。それと、ご両親はあなたのその記憶については知っているの?」

 「はい、お母様の病気は薬では治せる可能性が低いと知っていたので、ですから帝室の王女様にご助力の嘆願に行くしかないとお伝えしたのです。ですが、現帝王夫妻が今現在ご存命している事が私の中の前世の記憶と食い違っている為、私も帝城の方に出向く事にした形です。」

 私は少しこれからについてを考える。

 「・・・リライブ伯爵がアスカの記憶について知っているのに、それを見せずにお父様と交渉したのは恐らく、私の存在が不確定だから?」

 「いえ、私がそもそもエルゼ様がラスボス・・・敵であると伝えなかったからです。私がお伝えしたのは帝室の方であれば、あらゆる病を治す事が出来る浄化の魔法が使えるという事だけです。」

 「つまり、リライブ伯爵も全てを知っているわけではないのね?」

 「はい、エルゼ様が帝王夫妻をお救い出来たのは浄化の魔法を使ったからではないかとお伝えしたのです。」

 「そう・・・これから起こる()()()()で一番早い不幸はどれくらい後?場所は判る?」

 「これから起こるもので一番早いものは3年後、東の魔竜山のダンジョンとその周辺に生息するワイバーンがスタンビートを起こして、国中に散らばる災厄が起きます。」

 中々の内容に私は顔をひきつらせ、

 「魔竜山だけ、あるいはダンジョンだけなら私や協力者だけでもどうにかなるけど、相手は空を駆るワイバーン、私達だけでは手に負えないわ。」

 「では・・・」

 「ひとまずリライブ伯爵にこの事を伝えなさい、必要のない情報は伝えず、必要ある物だけを伝えるの。私もお父様、帝王陛下にこの事も含め前世の事を伝えるからあなたもリライブ伯爵に助力を乞いなさい。」

 「わかりました。」

 「あなたはこちらが落ち着いたらリリィの侍女として教育を受けていただきます。そして、例の記憶から今後起こる不幸を可能な限り防ぎます。・・・民の不幸だけは絶対に許しません!」

 「エルゼ様・・・あなたは私と同じ前世の記憶があります。今の現実が怖くなることはないのですか?」

 「確かにたまに、今私が立っている場所は本当にあるのかそう思う時はあります。ですが、それで()()()()立場は変わりません。私はルルージェ帝国第一王女エルゼワイト リアン ルルージェなのですから。」

 「あなたは本当に、()()()()()()()()なのですね。わかりました、私も出来る限りのお手伝いをしたいと思います。何よりもお母様を助けて下さった貴方に報いるために・・・」

 「あら?貴方が仕えるのは妹のリリィよ。私は貴方の()()よ。・・・それじゃあ、残りはまずリライブ伯爵の所で話をしましょうか。」

 「はい、わかりました。」

 そうして、私とアスカはリライブ伯爵の所に移動して、

 「では、当初の予定通りに我が娘、アスカをリリィ様の侍女見習いとしてお仕えさせると・・・」

 「はい、リライブ伯爵は少し寂しいかも知れませんが、適度に休暇を出して里帰りをさせる予定ではいます。」

 「いえ、娘から貴方の魔法の話を聞いた時からこうなるのではと予感していました。大恩ある第一王女殿下の助けになれるのであればそれは本望というものです。」

 それから私は紅茶を一口含み、飲み込んでから次に伝えることを切り出す。

 「アスカの持っている知識についてですが・・・」

 「それは・・・」

 リライブ伯爵はその話題に触れた後緊張した面持ちを見せたので、

 「まず最初に私はその事自体を咎めるつもりはありません。その知識を利用して民を悪い方に先導などしたわけでもないのにアスカを責める事はありません。私が言いたいのはアスカの記憶は今日よりも先の記憶があります。その中に3年後に災厄が起こるというものがあるそうです。私はそれに備えたい、ですからリライブ伯爵も手伝って欲しいのです。」

 リライブ伯爵は私がアスカを責めない事を知るとこれから先に災厄が起こると聞き、再び緊張した面持ちとなる。

 「・・・その予言はアスカから?」

 「ええ、恐らく防ぐ事は不可能に近いでしょう。」

 「・・・アスカ、はっきりと答えなさい。」

 リライブ伯爵は自分の娘と向き直り、 

 「このような凶行を犯している犯人を本当に知らないのかい?」

 「・・・はい、私は予言の書の内容を最後まで見た訳ではないのです。黒幕がいる事はわかっています。ですが、それを読む前に私は前世で・・・」

 「いや、いいよ。悪かったね、前世とはいえ自分の死んだ記憶を思い出させるなんて辛い事を思い出させてしまって・・・」

 リライブ伯爵はアスカを自分の膝の上に乗せた。

 「お父様!?エルゼ様の前でこれは恥ずかしいです!?」

 「あら?いいじゃない、リリィの元に来たらしばらくは会えなくなるしね。」

 私はリライブ伯爵の方を向き、自分の秘密も打ち明ける。

 「それとリライブ伯爵、アスカと同様に私にも前世の記憶があります。」

 「真ですか!?」

 「はい、ですから私は戻ってからお父様に、帝王陛下と帝王妃陛下にこの事をお伝えするつもりです。」

 「そうでしたか、だからアスカの事をそんな簡単に信じていただけたのですね・・・」

 「これから先に起こる災厄、誰が起こしたかまでは解りませんが誰かの悪意が元になっているのは明らか、必ず防ぎましょう!」

 「もちろんです、では詳細はエルゼ様が帝城に戻ってから改めて相談していきましょう!」

 私はリライブ伯爵としっかりと握手をして、アスカを置いたまま、自分に割りふられた客室に戻ってきた。

 「さぁ、これからよ!誰だか知らないけど絶対に好きにはさせない・・・後一発は絶対に殴る!」

 私はそう気合いを入れて客室に入り、簡単な報告書を作ってブラスト騎士団長に渡すのであった。

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