第20話 水源調査と元凶の排除
まず私が伯爵邸の私兵に命じたのは、今すぐに助けないと助からない人を探し出すことだった。
故に領都にいる全ての医者に連絡して、その所在地、可能であれば一ヵ所に集める事だった。
幸い、一番重症だったのはリライブ伯爵夫人だったようだ。
だから領都の広場に民を集め、痩せた者達が目立つ中、私は今日の分の浄化魔法を全部使いきる勢いで魔法を発動させた。
すると、体内毒が消えた事が解ったのだろう。
皆喜び、互いに抱き締めあって家族と共に再び喜んだ。
その後、水魔法が使える者が各家庭で水を出して樽の中の水を使うように頼んだ。
原因を調査は今急いでやっているのでどうか我慢して欲しいと伝えたら、皆協力を申し出てくれた。
明日は朝一番に山を登り、この都の水源である泉を目指す。
規模を聞くと湖を言ってもいいくらいの広さらしい、有志が参加してくれたのは嬉しい誤算である。
そして、翌日の朝、私はマリアとサンを傍らにつけその水源を目指して歩いていた。
「ブラスト騎士団長、皆には迂闊に不審物に触れないように伝えて下さい。最悪、触れただけで死ぬ毒もあるので。」
「はっ!了解です!」
ブラストおじ様の態度が父の時とあまり変わらない態度になっている気がする・・・今はいいわ、後で話をしないと。
そんな事を考えていると、
「聖女様、無理をされてはいませんか?」
私に声をかけたのは今朝戻ってきたばかりのダムド リライブ伯爵が私に声をかける。
「リライブ様、それは流石に私の方がリライブ様にお聞きしたいのですが、寝てはいないのですよね?」
「聖女様の仰せももっともですが、最愛の妻を助けて貰ったばかりか、我が領都民まで癒していただいたというのに、ここで私が疲れたなどと言うわけにはいきません。私とて領主として、何より男親としての矜持があります。娘と同じ年頃の聖女様に情けない姿などお見せできません!」
私は苦笑いをしつつ、
「わかりました、これ以上は申しません。ですが、あなたに何かあれば今度は夫人とアスカが悲しむ事を胸に留めて下さい。」
「かしこまりました、ご配慮痛み入ります。」
「それと、私は本格的な魔法の訓練を受けています、全く戦えないわけではありませんので無茶はなさらないで下さい。」
「やはり帝室の者達は麒麟児ばかり、聖女様のような方が将来、政務携わって頂けるとわかると安泰だと思ってしまいます。」
「リライブ様の過分な評価は大変恐縮ですが、これから先、このような事が他の領地で起きても私は解決に尽力していきます。その際に確実に助けられると言えないのが歯がゆいですが・・・」
「いえ、人の身では当然でありましょう。誰かを助ける為に努力するあなたを私は責める事など出来ません。仮にここで原因が判らず今度は妻だけでなく娘も倒れたとしても、私はあなたを責める事はしません。既にあなたが我が領に来ている。その事がもう奇跡だと言って良いのですから。此度の事は末代までの帝国に対する借りとしてリライブ伯爵家に受け継がせて頂きます。」
リライブ様のあまりの熱意に私はついつい、
「私からあなたにお願いするのは、夫人とアスカ、そして領民を幸せにしてあげることと、あなた自身も幸せになることです。私はあなたが犠牲になることを望みません。」
リライブ様は更に感激したようで、
「このダムド リライブ、聖女様に一生の忠誠を捧げる事をこの場でお誓いいたします。」
「もう、わかりましたから今は調査です!いいですね?」
視界の端にブラスト騎士団長の苦笑いが見えた。
その後、山の中腹で休憩をとり、再び登ると昼過ぎに泉に到着した。
「・・・確かに水が湧き出てるみたいね?」
私は遠目から泉に異変がないか見るが、
「ここから判る筈もないか、では、野生動物や魔物に注意しながら調査を開始して下さい!」
「はっ!では、当初の打ち合わせ通りに各班に別れて調査を開始せよ!」
皆が散らばったのを見て、私は泉の周りを回るように歩く。
「?泉の中心に何かある?サン、マリア、ついてきて!」
私は皆が重点的に調べている場所の反対側にやって来ると、
「・・・魔法の用意をするわ、恐らくこれが毒の元凶よ。」
「はい、エルゼ様お気をつけ下さい。」
「炎は効きづらいでしょうから凍らせます。」
すると急に泉の水の色が変わり始めた。
「来る!気を付けなさい!戦えない者は下がりなさい!」
「雷よ、数多の槍となりて穿て!ライトニングランサー!」
マリアの魔法が魔物を貫く、
「凍える息吹よ、その者の時を停めよ!フリージングストップ!」
完全ではないが魔物の動きは非常にぎこちなくなった。
「万象天輪の理よ、我が呼び掛けに集い、雷の剣となり我が眼前の敵を屠れ!ライトニングブレイバー!」
巨大な雷の剣が魔物を断ち斬り、消滅させた。
「エルゼ様、ご無事ですか?」
「ブラスト騎士団長、申し訳ありません。前に出すぎてしまいました。」
「いえ、しっかりとご自分達で対処出来た様子、特に問題はないでしょう。この後も調査致しますが何もなければ、この泉にエルゼ様の浄化魔法をかけてから領都に戻りたいと思います。」
「わかりました、それでお願いします。」
ブラスト騎士団長が対応を買って出てくれたのでそれを任せて、私はマリアとサンに向き直る。
「二人もありがとうね?」
「いえ、お手伝い出来たのなら光栄です。」
「私は相性が悪くて、援護が精々って感じでしたから・・・」
「いえ、サンの魔法も凄かったですよ。得意な属性は炎ですよね?」
「はい、私の得意属性は炎です。マリアは全部使えますけど・・・」
「でもその分、あなたの魔法の威力にはかなわないわ。今のだって周りに被害を考えなければどうにかなったでしょ?」
「それはちょっと持ち上げすぎだよ?マリア?」
その後一時間程で調査を打ち切り、泉に浄化の魔法を使ってから、私達は領都にある領主邸に戻ってきて休んだ。
主人公だけではなく、彼女達もまたチート級です。
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