第2話 魔力の操作と母とのふれあい
私はマリアとサンに母が居るであろう場所に歩いて行く。
「こうして歩いてみると帝城はやっぱり広いわね・・・」
母の所へと歩きながら私は辺りを見渡す。
母の帝国での役割は宮廷魔法師団 師団長である。
勿論、帝后としての仕事もしっかりとこなしている。
母曰く、帝后としての役割は基本的に顔繋ぎのような役割が多く、そちらの役割は宰相であるサーシャおば様と分担してこなしているそうなので問題は無いらしい。
「お母様の研究は民の暮らしを良くする為のモノだからやめるように説得なんて出来るはずないよね。」
「そうですね、特に帝都の周りの水道と上下水道は目覚ましく進んでいると他国では話題に上るそうですよ。」
「安全に水が飲めるようになりましたし、下町でもお風呂に入れるようになったのは凄く嬉しい事ですね!」
下町の話や帝都以外の国内の街並みがどのような感じなのか二人と話をしつつ歩いて行くと母の研究室に到着する。
「エトワール様、エルゼワイト様がお越しになりました。」
サンが扉をノックして用件を口頭で述べると、
「開いてるから入って来なさい。」
中から可愛いらしい声音が扉越しに聞こえてくる。
「失礼します」
と一声かけてから、またマリアとサンに扉を開けてもらって私は母の研究室に入る。
そこにいた母は未来の私を想像させてくれるような素敵な立ち姿で私を迎えてくれた。
「いらっしゃいエルゼ、体調はもう良くなったみたいね?こっちに来て母に確かめさせなさい」
「う、わかりました」
母の背後にある窓から入る太陽の光が母を神々しく照らし、輝かせる。
正に理想の女性像をそのまま体現したような母の佇まいに私は見とれて胸が高鳴る。
そんな状態のまま母に近づくと、
「つ~かまえた~!?ぎゅ~」
「ひゃあ~、お母様手加減して下さい。」
母に捕獲されました、スキンシップが始まりました。
「エルゼちゃんの肌ぷにぷに~♪髪サラサラ~♪」
「ひゃあ~~!?お母様!?そこはダメですぅぅぅ!?」
スキンシップを一通り終えた後に、改めて母が訊いてくる。
「それで用件は何かしら?」
「・・・もっと早く聞いて欲しかったです・・・」
母におもちゃにされてグッタリとしながら、気を取り直して
「魔法に関する本が欲しくてお母様にお訊ねしたかったのですけど・・・」
「あら?魔法を勉強したいの?うーん・・・」
母が再び私に触れてくるが先ほどとは違って、何かを確かめているようだ。
母の手が先ほどよりもじんわりと熱い。
「??お母様?一体何をしてらっしゃるのですか?」
私がそう問いかけると、
「エルゼちゃんの魔法神経を確かめてたんだけど、魔法神経がもう十分発達しているからエルゼちゃんも魔法の基礎を始めても大丈夫だと思うわ、只し・・・無理はしないこと、他の勉強を手を抜かない事、体調に異変を感じたらすぐに報告する事、最後に自衛以外の目的で人に向けて魔法を撃たない事、これを約束できるなら私か、他の誰かを先生として用意してあげるわ。」
本で予習出来ればと思っていたのが、まさかの魔法解禁。正に脊髄反射で
「約束します!!」
右手を上げて、母の目を見ながら私が返事をすると、
「なら、まずは魔力の循環から始めましょうか。最初にあなたの中にある魔力を自分で感じる事が出来るようになることと、その感じた魔力を自分の体の中でゆっくりと動かして循環させる所から始めます。」
そう言って母は私に魔力の授業を始める。
「よろしくお願いいたします!」
私はそんな母にきっとキラキラした目を向けながら姿勢を正し母の授業を受けた。
まず最初に魔力とは?という説明から母の授業が始まった。
魔力とはこの世界のすべてに宿るモノで、空気とは別に、生物が生きるために必要なものであるとされている。
空気がないと息が出来ない、息が出来ないと死ぬのは当然だが、魔力が枯渇しても生物は生きていく事が出来ない。
それは魔力が命の炎を燃やすために必要なのではないか?というのがこの世界の共通の認識で母も細かい認識に差があるかも知れないけれど、それであっていると言っている。
私が母と魔力を無理して使い過ぎないように約束させたのはその為だ。
「エルゼちゃんはまだ子供だから、どんな影響が出るかわからないからね。一般的には今みたいに首から魔力を流して少しでも痛みを感じるとまだ成長途中なんだけど、エルゼちゃんはもうそこまでは大丈夫みたいだから、魔力の循環から始めたいと思います。」
この魔力を感じるまでの訓練を魔力感応訓練といい、やり方は大まかに二つある。
一つ、講師及び先生側から魔力を流して体内の魔力の流れを自覚させる方法。
二つ、生徒個人の力で体内の魔力を操作する方法。
後者の訓練は魔力の暴発を防ぐ為に講師及び先生役が必要で五歳の時に受ける魔力テストなるモノを受けた時に決定する。
魔力テストは、文字通り魔力を測定する魔道具というものを用いて行われる。
魔道具とは分かりやすくいうと前世でいう家電である。
水を汲み上げるのはもちろん、何もない所から水を出すことも汚れた水を綺麗にする事も出来る物もある。
その中に魔力を測定する魔道具もあって、私の魔力は暴発すると危ないレベルの魔力を持っている事がわかっている為、今回は母が講師役を買って出たのだ。
「まずは、目を閉じて、自分の心臓の鼓動を感じなさい。」
私は母の言う通りに目を閉じ、自分の胸の辺りを意識すると、
「あっ、これすごい・・・」
心臓から熱い何が溢れてくると母の次の指示を聞く。
「溢れてきたそれがあなたの魔力よ、そしてその魔力を最初は足へ、次はお腹へ、その次は腕、手の先まで行ったら今度は少し戻して頭の方に流して、また心臓に戻すの。」
溢れてくる魔力に圧倒されながら、言われた通りに足、お腹、腕、手の先そして頭の方に流して最後に心臓に戻すと、
「あれ?落ち着いた?熱いの感じなくなった、何で?」
私が首を捻ると、
「魔力の門を閉じたからよ、魔力は心臓に貯まると言われていて、生物は魔力を使う時にそこから魔力を引き出すと言われています。」
そう説明した母に顔を向けると、
「お母様、すごい汗・・・」
「エルゼの魔力は凄いわ・・・魔力の訓練は私がいる時にやるようにしなさい。あの量だと城どころか国ごと吹き飛ぶかもしれないわ。」
まっすぐと見つめる母に私はしっかりと頷いた。
「はい、気を付けます。」
「そろそろいい時間ね、今日は私、半休だしこのままエルゼちゃんとお風呂に入りましょう」
お母様は私に抱きつき、私を連れ去ろうとする。
「では、私は内風呂の用意をして来ます。」
「私はお二人のお着替えを用意致しますね。」
マリアとサンの裏切り者~!?
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