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第11話 パーティー本番と見えざる悪意

今回は長めです

 私達帝室の者が入場すると、会場にいる参加者全員の視線がこちらを向いた。

 そして、一斉に拍手を始め、迎えてくれた。

 「これより誕生祭、夜の部を始める。今宵の料理は我が帝城に仕える料理人達が腕に奮いをかけて作ってくれた物だ。存分に味わい、楽しんでくれ!」

 父の挨拶を聞き、再び大きな拍手が起きそれが収まると早速何名かの貴族が挨拶の為に父の前にやってきた。

 「帝王陛下においてはご機嫌麗しゅうございます。そして、エルゼワイト様においては始めまして、私は西南部にあるベルタ領を治めるベルタ子爵家当主 ルージー ベルタと申します。」

 「ご丁寧にありがとうございます。改めまして私はルルージェ帝国第一王女 エルゼワイト リアン ルルージェと申します、よしなに。」

 「エルゼワイト様はもうそのような立派な挨拶が出来るのですな、我が娘はもちろん、エルゼワイト様よりも年上な我が息子でもそんな立派な挨拶が出来るかどうか、見事なものです。帝王陛下もさぞ鼻が高いでしょう。」

 「確かに、エルゼの事に関しては帝王である私の目から見ても、この子の親であることを本当に誇りに思えるぐらいだ、だが、父としてはもう少し・・・」

 「お・と・う・さ・ま?私の事が自慢なのはわかりましたから、あまり長くベルタ卿をここに引き留めてしまうとベルタ卿が他の方に怒られてしまいます。」

 私が()()でお父様にそう伝えるとお父様も自重したのか、

 「む、そうだな。またその内、機会があれば聞いてくれ、そなたの子の事も聞かせてくれ。」

 「はい、この度はご誕生日おめでとうございます。これにて私は下がらせて頂きます。」

 そう告げると一礼をして、彼は私達の前から遠ざかっていった。

 「?何かあるのでしょうか?」

 「彼の思惑はわからないが、もしかしたら只のアピールである可能性もある。あまり考え過ぎるとかえってわからなくなるよ?」

 「そうですね、ひとまずお父様の言う通りにします。」

 今のは彼がわざと順番を抜かした為、今度こそ正しく皆がパーティーの挨拶に来る。

 我が国の爵位の順番は高い位から、公爵、辺境伯、伯爵、子爵、男爵、騎士爵の順番になっている。

 そして、私達兄妹の誰かが降家すると大公家が生まれる。

 この家格は、本人と子供の代までしか存在する事が出来ず、理由は帝位継承権は基本的に帝室に属する者しか持たない法律になっているからである。

 だから、帝室に加わりたい者は私達を狙う。

 命ではなく、その存在自体を狙うのだ。

 望まぬ結婚自体は、まぁ色々と思う事はあるがある程度は仕方ないと思っている。

 仮にこのルルージェ帝国の全てを私が帝王として継いだとしても、私一人で統治など出来る筈がない。

 初代帝王ルルージェ様もお相手がいらっしゃったようだし、確かそのお相手は・・・凄腕の平民、だったはず。

 確か当時のランクSの冒険者だったと資料には残っているが、名前も残っていないのよね~。

 多分、その後の代で何かあったみたいなんだけど、その部分の資料が一切残っていないという、なんというかどうしようもない個人的な感情で処分した人がいたのでは?などと考えてしまう。

 そんな事を考えながら、機械のように自己紹介のみを繰り返し続けたが、遂に終わったようだ。

 少し小休止するようだ。

 「お父様、少し離れますわ。」

 「わかった、急がなくともいいけど早めに戻って来るように」

 「はい、マリア、サン、お供をお願いします。」

 「「畏まりました、エルゼ様。」」

 父にそう伝えて来た所はレストルーム、お化粧室と伝えた方がいいだろうか?

 とりあえず、こちらは帝室用で座れる化粧台の奥にトイレがついている。

 先に用を足して、その後、マリアとサンによるお化粧直しが始まる。

 「流石に衣装を着替える必要はないと思うのだけど・・・」

 「エルゼ様、貴族の中には自分の事を棚に上げて悪態を突くような輩が多くいます。」

 「そのようなまるでゴブリンのような品性の愚物に要らぬ事を言われぬようにエルゼ様は常に、いえ、最高に輝く必要があるのです!」

 「お願いだからサン、毎日このレベルのお洒落はちょっと精神的に厳しいからパーティーとかそう言った行事の時だけにしてね?」

 「善処します。」

 サンの答えに、も~、などと唸りながら化粧直しを終えて、私達はパーティー会場に戻ってきた。

 「せっかく料理人達が頑張ってくれたのにまだ一口も食べていないのはさすがに辛いわ・・・」

 「次は帝王陛下とエルゼ様がご婦人方への挨拶回りに行く予定ですからその時にでも・・・」

 などと二人と話ながらお父様の背中を視界に捉え、歩いていく途中で、

 「うっ!?・・・」

 「お父様!?」

 父が急に胸を抑えて倒れた。

 私はすぐにお父様の元に近寄り、父を仰向けにしようとするが力が足りず、マリアとサンに手伝ってもらってどうにかひっくり返す。

 「お父様!?目を開けて下さい!?お父様!?」

 「宮廷医師と魔導医師に連絡を!?」

 「私が行きます、マリア、エルゼ様をお願い!?」

 私達がお父様の介抱に四苦八苦していると後方から悲鳴が聞こえてきて、振り向けば

 「お母様!?マリア、お母様をこちらに!?」

 「畏まりました、エルゼ様をここを動かずにいてください。」

 風のようにマリアが母の元に向かうとマルス兄様が母に声をかけていた。

 「母上!?しっかりして下さい!?」

 「マルス様、エトワール様も帝王陛下の元に連れて行きます、こちらに来てください。」

 マリアがお母様を連れてくると、やはりお母様も胸を抑えていた。

 「毒を仕込まれたのは確定ね、後はサンが連れてきた医師の方に・・・」

 「連れて来ました!ウィズ先生、こちらです!」

 「そこをどけ!・・・これは、不味い!?直ちに回復魔法による処置を開始する。配置につけ!!」

 父と母に回復魔法による治療を開始したが、やはり毒を消さないとならないと先程から治療を指示しているウィズ先生にそう告げられた。

 「恐らく毒はお父様が持っていた水に入っていると思われます!急いで鑑定を!」

 ここでブラスト騎士団長とアルド兄様が到着、何故かレオン兄様まで来ている。

 「何があった!?」

 「お父様とお母様が毒を盛られました!」

 「!?、なんという事だ!?」

 「エルゼ!毒が入っているのはどれ?!」

 「そこのテーブルにある水です!」

 レオン兄様がすぐに水に手をかざして、魔力を放つ。

 「鑑定が出ました、ドライアードの毒です!」

 「・・・そんな、何て事だ・・・」

 「ウィズ先生、ドライアードの毒とは何ですか!?」

 「ドライアードの毒はまだ解毒法が確立出来ていない毒で、使用すると二時間を待たずに死を・・・」

 迎えるそう言おうとした彼に、私は

 「どんな手段でも構いません、少しでも可能性のある治療法は・・・」

 「現在の我々の力だと、出来ません。ですが・・・初代帝王様と同じ魔法を使えれば、可能性があります。」

 「初代帝王、ルルージェ様?」

 「はい、初代帝王ルルージェ様は、我々医療を携わる者達から、聖女帝、と言われております。」

 「聖女帝ルルージェ・・・あれはお伽噺ではなく、実話・・・?」

 「はい、聖女帝ルルージェのお伽噺は全て実話です。寧ろ逆に話を小さくしているのではないかと私達の間では言われております。あらゆる病と毒を浄化の魔法で打ち消し、民を幸せに導いた者として初代帝王様は今も名君として語られているのです。」

  「浄化の魔法・・・」

 初代帝王ルルージェ様は転生者だった、それは数々の功績がそれを物語っている。

 なら、前世の知識を使えば、私にも・・・帝室の中でも魔力の多い私でも可能性はある!

 「ウィズ先生、あなたはどのようなイメージで解毒の魔法を使っていますか!?」

 「エルゼ様?」

 「お願い!教えてください!」

 「・・・私の考えになりますが、体内にある異物を感知する所から始め、それを薬で相殺する治療法を扱っております。」

 「薬と魔法の併用、でも今回はその方法は出来ないなら・・・」

 私はお父様とお母様の手をとり、私の中にある魔力を高める。

 「お願い、魔力よ、私に応えて・・・」

 目を瞑り、魔力を高め、父と母の魔力の流れをイメージし、知覚しようとする。

 「見えた!!これが毒・・・いえ、これは悪意ですね・・・」

 次は初代帝王ルルージェのように、浄化の魔法を発動させようとする。

 「イメージは、清流、体内の血の流れと魔力の流れを川のようにイメージして、心臓から、清浄な流れを私の魔力で・・・」

 すると背後で何か気配がすると、

 「そうはさせん!!」

 背後にブラスト騎士団長が立ち、私を激励する。

 「エルゼ様、あなたの背後は私達がお守り致します、どうかそのまま、思うがままにやってください。」

 「レオン!マルス!俺達でエルゼを守るぞ!!」

 「「応!」」

 すると兄達は結界を作り出した。

 「一人10分しか、持たないからな!」

 「大丈夫、お父様とお母様は私が助けます。」

 私は祈るようにお父様とお母様の手を握ったまま組み、そこから魔力を二人に注ぎ、二人の心臓の部分に貯める。

 そして、身体の中の毒を消し去るイメージを持った魔力を心臓に貯めた魔力と一緒に身体の隅々まで行き渡らせる。

 「こ、これは・・・」

 「我が魔力を対価に、清らかな祈りと願いをかの者に与えたまえ、身体の中に蔓延る不浄を祓い、清浄な血と身体を取り戻したまえ、・・・リザレクション!!」

 その時、神々しい光が私の中から漏れ、広がった。

 それを見た貴族達は、

 「馬鹿な!?初代帝王と同じ魔法など・・・」

 「このような奇蹟が・・・」

 「なんと・・・この目で初代様の再来を目にしようとは・・・」

 呆気にとられるばかりであった。

 光が収まった所で、ウィズ先生がお父様とお母様を診察する。

 「お二人とも、身体に異常はありません。ドライアードの毒は完全に消えております。まもなく目が覚めるでしょう。」

 「・・・良かっ・・た・・・」

 「!!?エルゼ!?しっかりしろ!?」

 お父様とお母様が助かったと聞いた私は、今までにないぐらいの魔力を初めて使った為にそのまま倒れてしまった。

 後から聞いた話だとあの後、パーティーは当然中止、貴族達と帝城内にいる者達を全員聴取、料理を全て調べ、毒が入っていたのはお父様とお母様が口にしていた物だけと判明した。

 恐らく、転移の術を使った暗殺ではないかと関係者は推測しているらしい。

 転移と聞けば難しいと思うかもしれないが、実際はそうでもない。

 厳密に言えば目の届く範囲の転移、それも物を転移させるのは適性があれば割と簡単に使えてしまう魔法なのだ。

 目撃者は皆無で、毒を施す方法が協力者の存在もあるのでは?となり、貴族達にもマインドスキャンという魔法を使われ捜査したが、結局下手人が誰かわからないままだったのが私達にとって痛恨だった。

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