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第10話 女心という名の地雷と両親の熱愛

 控え室に着いた私とマルス兄様はお父様にベルタ卿の事を報告した。

 「報告が来ていたのに、到着が遅れたのはそういう事があったからか・・・ふむ、とりあえず二人ともこれからもベルタ卿に限らず他の貴族にも注意するようにしなさい。」

 「わかりましたわ、お父様。」

 「来年には領主との挨拶が解禁するし、次に会うときは僕も挨拶回りに参加させられるようになっているよね・・・」

 父が面倒そうに遠い目をするマルス兄様に、

 「そうは言ってもエルゼをちゃんとエスコート出来たじゃないか?」

 その一言で思い出したのか、

 「あぁ、次のマナー講義は逃げたい・・・」

 その様子を見たお父様が私に、

 「何をやらかしたんだ?」

 「お父様、女心は海のように変わりやすいのですわ。」

 「エルゼ、答えになっていないぞ?それでは俺もわからん。」

 私と父のやりとりを見ていた母が、

 「大方エルゼのエスコートする時にマナーで守らないといけない事を守らなかったんでしょ、おまけにレディーの扱いを間違えたわね?」

 その言葉を聞いたマルス兄様は、

 「母上、さすがにあれは難しいです。」

 「その辺りをしっかり出来ないと、あなた悪い女に引っ掛かるわよ?昔のアウスだって・・・」

 「オッホン!それよりもパーティーの段取りなんだがな・・・」

 「わかりました、お父様。()()パーティーの事を優先しますね。お母様、今度リリィとも一緒に女子会を開きますからサーシャおば様も誘って楽しみましょう!」

 「あら、それは面白そうね?」

 私とお母様のやりとりにお父様は少し不安げな顔をしている。

 それを見たお母様が、

 「大丈夫よ、話と言っても馴れ初めとかかっこよかった事だから・・・」

 そう言って父の正面から抱きつき、父の唇に母の唇が重なった。

 「・・・エト、子供たちの前だぞ?」

 「たまには良いじゃない、昔はしょっちゅうやって二人でクレアに説教されたけど・・・」

 「本番前にこんな事をするなんて、エトはいつも大胆だな・・・」

 そう言いながら、父も母にキスを返していた。

 「部屋の温度が上がった気がするわ・・・」

 「なんだろう?胸焼けしそうなぐらい甘い感じがする。」

 私達兄妹が仲の良い両親を見ながら、遠い目をしていると、

 「帝王陛下、帝王妃陛下も、これからパーティーが始まるというのに我が子放置して乳繰りあっている場合ではございません。早くご準備くださいませ。」

 筆頭侍女のクレアが克を入れてくれた。

 クレアに叱られた二人はすんなりと離れて、私達に役割と指示を出す。

 「エルゼは俺と一緒に挨拶だな、対応は俺がするから自己紹介と挨拶だけしっかりとやるようにな・・・」

 「はい、わかりました。」

 「マルスは私と挨拶回り、主に婦人達に声をかけるから、不要な発言は控えるようにね?」

 「はい、気をつけます。」

 そして、私はふと疑問に思う。

 「お母様は別口なんですね?」

 「こういう時の帝王への挨拶に異性はあんまり連れて行かないの、我が国だとね。初代様の時にそういうのが相当しつこく来たらしくて、怒ってルールを作っちゃったのよね~、従わないと援助しないとか言って・・・」

 初代様グッジョブです。

 「それでも守らないのは何人かいるから、そういうのはあまり信用出来ないから気をつけるようにね?特にマルスは・・・」

 「えっ!?僕がですか?」

 「お兄様、お父様の傍にいる私と、お母様と一緒に動いているお兄様、どっちが危ないですか?」

 「・・・流石に拐われる事はないと思うけど、気をつけるよ。」

 「そうしなさい、貴族、特に最近成り上がった新興貴族は、自分の手柄とかに餓えているからね。権力の拡大は格上と結婚すれば割りと簡単にある程度手に入れる事が出来るからね・・・」

 「でもそれだと・・・」

 「先の事を考えられる人がそんな手段を取るわけないでしょう?だからとりあえず仲良くなろうって挨拶に来るのよ。」

 母の話に納得して、私はマリアとサンにも声をかける。

 「二人もそういう人には注意してね?」

 でも二人は、

 「エルゼ様、私達を心配して下さるのは嬉しいのですが・・・」

 「エルゼ様ご自身の方が私達は心配です、くれぐれも御移動の際は私共にお声をかけてから動くようにしてください。」

 「わかりました、マリア、サン、頼りにしていますからね?」

 「「お任せください!!」」

 そんな私達3人を見ながら、両親は暖かい瞳で、マルス兄様は少し呆れ気味の視線で私達を見守っていた。

 「さぁ、本番開始だ。会場の方に移動しようか。」

 父はそう言って私達の前を歩きだした。

 私達もそれに続き、父の背中を改めて見ると、父の背中はやはり大きかった。

 マルス兄様もそう感じたのだろうか、彼の視線もまた、父の背中に注がれていた。

 私達帝室は家族一丸となってこの国に尽くしているのだと、この日この瞬間に改めて感じた。

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