第1話 物語の始まり
前世の事は詳しくは思い出せない・・・
料理や街並み、或いは技術等の事を思い出せても、元の自分の名前もどんな自分だったのかも思い出せない・・・
只、それでも・・・その世界は確かに存在したのだと、まだ子供の私の記憶がしっかりと証明していた。
私の人生は二度目であると私の中で示している。
例え、今の家族の誰にも理解されなくても私の中に確かに経験という記憶が存在している。
これは、そんな私が成長して新しい世界を色々と経験しながら生きていくお話。
帝国歴286年5月20日、この2日前に誕生日を迎え6才になった私はこの日、体調を崩して高熱を患って魘されていた。
一晩中高熱に苦しみ、熱が治まったのは翌朝で天井を見ている自分に違和感を感じたのがきっかけだった。
「わたし・・・この天井を知らない?・・・つぅっっ!!??」
見上げた視界に入ったモノに対する違和感、それを自覚した途端に頭に激痛が走った。
そして、激痛が治まった頃には私は私の事を思い出していた。
「とはいえ・・・今はダルいからもう一回寝よ・・・」
本来なら大変なはずなのに呆気なく普通に私は二度寝した。
翌日、体調が元に戻った私は自分の事と家族の事を整理しながら改めて確認すると食事を終えてから、この国の帝王であるお父様の元へ挨拶に行く。
お父様はこのルルージェ帝国の帝王、アウスワルド リアン ルルージェ、そして、私もこのルルージェ帝国の王女 エルゼワイト リアン ルルージェ
母は帝后にして帝国宮廷魔法師団 師団長 エトワール リアン ルルージェ 魔法の知識と技術はこの帝国で一番であると言われている。
一番上の兄である長男 アルドハイド リアン ルルージェ 最近少し様子がおかしいがそれでもヤンチャな兄だ。
次が次男のマルスワール リアン ルルージェ 長男のアルド兄様程ではないがこちらもかなりのマイペースなお兄様だ。
そして、一番下の兄、レオンハルド リアン ルルージェ 上の三人の中で一番真面目で堅実な兄だ。
レオンお兄様は帝王である父を尊敬していて意外とお父さんっ子だ。
4番目が私で、4番目だけど長女だ。
名前は改めて エルゼワイト リアン ルルージェ
つい先日6才になったピッチピチレディです。
そして、5番目が私の妹である次女、リリアーヌ リアン ルルージェ まだ4才の超可愛い私の癒しだ。
私は体調を崩して家族に心配をかけたので朝食を食べた後に身支度をして、これからみんなの所に向かうのだ。
その際に侍女が私の前後を歩き、私はそれについて行く。
流石にお城は広いです、下手に探検すると迷子一確な気がします。
そんなこんなで私の部屋から10分以上歩き、ようやく父の執務室に辿り着きました。
「やっと着いたわ・・・マリア、サン、二人ともありがとう」
私が礼を述べると二人は、
「これが私達の仕事ですので」
「姫様が気にする事ではないですよ」
二人の笑顔を見て、私も笑顔になりながら頷き、執務室の扉をノックする。
「お父様、エルゼです。体調が戻ったので挨拶に来ました。」
「エルゼか、入っていいぞ。」
父からの許可をもらい、私は父の執務室に入ろうとするが、
「お、重い~!?」
扉はびくともしなかった。
「姫様、私が開けますから」
マリアが私に変わって扉を開けてくれた。
「ありがとう、マリア、サン」
二人にお礼を言いながら私は執務室の中に入った。
「お父様、おはようございます。体調はこの通りよくなりましたので、お父様のお顔を見に来ましたわ。」
カーテシーをしつつ、私は父に来室の理由を告げると、
「いらっしゃい、エルゼ、おはよう」
父は笑顔で私を迎えた。
「サーシャおば様もおはようございます。」
そして、父の机とはまた別の机に座っている父と同じくらいの年齢の女性にも挨拶をする。
「おはようエルゼ、体調は戻ったようね?この愚弟を見舞いに行かせようとしたんだけどね・・・」
彼女は、父の姉で我が国の宰相でもあり、更にラルゼ公爵家の当主でもあるサーシャ ラルゼ宰相だ。
「行きたかったけど、妻のエトに仕事を終わらせてからじゃないと会わせないと言われたから、昨晩から頑張っているじゃないか」
父がそうぼやくと、
「まぁ、エトちゃんは間違っていないけどね。帝王たる者が公務をそうポンポン放り出せると思わない事だ。私も付き合ってやってるんだから文句を言うな。」
「ちくしょ~!?」
父とサーシャおば様がじゃれているのを見ながら、私はもう一つの用件を切り出す。
「あの、お父様にお願いがあって・・・」
私が少し恥ずかしそうにそう父に告げると、
「オーケー、我が愛娘よ。何を用意すればいい?ドレス、宝石?アクセサリーに花も大丈夫だし、秘宝の類いまでお父さんはなんでも用意して見せよう!例えダンジョンでもこの父に掛かれば・・・へぶっ!?」
「娘のおねだりに興奮するするな馬鹿者め、見よ!用件も言えずにエルゼが困っておるではないか。」
父の顔の側面に重そうな本が突き刺さった、下手人は勿論サーシャおば様だ。
「えっと、私も色々な本が読みたいので私が住んでいるこの国やそれ以外の国が書いてる書物や魔法とかそう言う本とか後、兵法書とかも見てみたいです。」
前世は一般人だったけど今世は帝室に属する身、今から勉強しても無駄にはなるまい。
単純に興味もあるから一石二鳥だしね。
「わかった、魔法に関する事はお母さんのエトに聞いてみなさい。歴史や諸外国についての本は、お父さんが姉上と一緒に見繕って部屋に持っていってあげるよ。」
「・・・お前も娘は兎に角可愛がるな?」
サーシャおば様の呆れた視線に父は、
「姉上だって、先代である父上に可愛がってもらってたじゃないですか?」
サーシャおば様は眉間の皺を揉みほぐしながら、
「アレはな、される側としては程々にしないと頼み辛くなるからな・・・エルゼに今後も頼られたいならちゃんと加減するようにしろと忠告しておく。」
おば様の遠い目線を見て、父も思い当たる節があったのか、あっさりと気を付けると一言返した。
「?お祖父様は一体何を?」
「エルゼ、世の中には知らなくていい事だってあるんだよ?」
「はぁ~、先代であるお父様ももう少し考えてくれればなぁ~・・・」
何かを憂鬱レベルでお祖父様はやらかしたようですが結局二人とも教えてはくれませんでした。
ともかく、これで知識を得るための手段を一つ確保です。
次はお母様の所を訪ね、魔法の講習について相談せねば・・・
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