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第3話 昼下がりの宅配便

 時刻は昼下がり。


 ギルド青の集いは用事を済ませアルバスの酒場にきていた。


 もう既にアルバスの酒場の前にはお酒を運ぶ荷台車があった。


 当たり前だが人が引ける程に軽くはない。


「良いか。荷台車を引っ張る魔牛を護りつつ邪魔をする魔物を狩るんだ。良いな?」


 どうやらアルバスが魔牛を操り目的地にまで運ぶようだ。


 御者役をやるアルバスは念入りに説明を繰り返していた。


「魔物は主にゴブリンとかだな。あーあとはな。中には一風変わったゴブリンもいるらしいぜ」


 アルバスは意味深な事を言った。


 アルバスの意味深な言葉を耳にしたアデスが一番に疑問に思った。


 アデスは疑問を投げ掛けると言うよりは独り言のようだった。


「ほう。一風変わったゴブリンとな」


 アデスは一風変わったゴブリンの事を考えながら言っていた。


 アデスは一風変わったゴブリンに心当たりがなかった。


 だから想像しようにも出来なかった。なにが一風変わっているのだろうか。


「そうだ。なんでも訊いた話だと……色違いな上に言葉を喋るらしい」


 ゴブリンは狡猾でも喋るほどにはなっていなかった。


 なのにアルバスの情報では色が違う上に言葉を喋るらしかった。


 まるでスラ坊を見ているようだとアルバスは言う。


 肝心のスラ坊はアデスの頭上でなんだか複雑そうな雰囲気を出していた。


「言っとくけど俺は悪いスライムじゃないからな」


 スラ坊は捨てられる前に自分自身がスライムである事を知った。


 そして決してスライムは喋る事はせずただ愛玩として生きていくしかないのだと痛感した。


 でもだけどそんな人生は嫌だと彷徨っていたところにアデスと出会っていた。


 運命とはどうなるかなんて解らないが後悔はしないとスラ坊は心に決めていた。


「そうか。ならせいぜい頑張るんだな。んじゃよ。そろそろ行くか」


 アルバスの言葉を皮切りに魔牛に鞭を打ち牛車が動き始めた。


 目指すは隣町だ。アルバスの言った事が正しければゴブリンが現れる筈だ。


 ゴブリンは一匹でも油断をすると殺しに来るほどに厄介だ。


 特にゴブリンに警戒していたのは実はアデスだった。


 アデスはゴブリンの数による行動力を知っている。故に杖による魔法攻撃を心掛けようとした。


 一方のアルシャは似合わない剣入りの鞘を腰にぶら下げていた。いちよう剣士らしかった。


 最後のスラ坊も役に立ちたいと思いを馳せ真顔でその時を待った。


 果たしてアルバス達は無事に隣町に辿り着く事が出来るのだろうか。




 アルバス達は隣町への中腹に差し掛かろうとしていた。


 どうやら森の中は一本道のようでいつ攻められても可笑しくなかった。


 心なしかどんどんアルバス達に緊張感が漂い始めていた。


 そんな雰囲気の中でアルバスが冷や汗を掻きながら口を開き始めた。


「ここだ。この辺がゴブリンの縄張りと化してやがる」


 この時のアルバスは完全に愚痴った感じだった。


 周りはそうは思わないだろうがアルバスはそのつもりだった。


 もし噂通りならばこの辺でゴブリンが襲って来る筈だと思った。


 アルバスは心の動悸が激しく落ち着いている雰囲気を出すのが精一杯だった。


 心臓の高鳴りが脈を速くしまるで生きた心地がなかった。


「ちぃ!? どうやら……噂は本当のようだな」


 牛車を遮るように森の中の一本道に四匹のゴブリンが現れた。


「なぁ! あれを見ろよ! 後方にいるゴブリンが!?」


 スラ坊が言う後方にアルバス以外が反応した。


 と言うよりもアルバスは既に気付いていた。


 むしろアルバスよりも気付いていない二人はスラ坊の言葉でようやく後方を見た。


「な!?」


 アルシャは色違いのゴブリンを見て驚いていた。


 ゴブリンの色は普通が緑だった。それが色違いのゴブリンは赤かった。


「ふむぅ。受け入れ難し」


 アデスは俄かには受け入れ難いと思っていた。


 しかもこの赤いゴブリンが喋ると言うのだからどうなのだろうか。


 もし万が一喋る事があるのならばゴブリンの間でなにが起きているのだろうか。


「一匹だけ……赤い」


 アルシャはようやく見た事を言い始めた。


 どうやらアルシャ自身も赤いゴブリンは珍しいみたいだった。


「く、来る!」


 最後にアルシャはそう言うと両刃直剣の柄を握り締め居合切りの構えをした。


 とは言え踏ん張る事はせずに軽く身構えていた。


 アルシャの言った通りに赤いゴブリン達は一つも言わないで鞘なしの片刃曲剣の柄を持ち歩き始めていた。


 果たしてアルバスを除くアデス、スラ坊、アルシャは無事にゴブリンを退ける事が出来るのだろうか。

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