VS【弓聖】クレア
こんばんは、相井らんです。
わたしがここまで書くことが出来ているのは読者の方の存在あってのことです。
毎話毎話ありがとうございます。
さて今回の話ですがついに復讐相手の一人である【弓聖】クレアとの闘いです。
力をつけ、復讐の鬼となったノアの活躍をご覧ください。
今晩は頑張ってもう一話投稿したいと思っています。
最後まで読んでいただけると幸いです。
僕はクレア、この国の貴族令嬢だ。でも僕は3女で、政略結婚の道具にしかされない。
そのことに絶望した僕は冒険者としての門を叩いた。僕を冒険者に誘ったカーライルは吸い込まれるような青い目と金髪を持っていてカッコいい。そんな彼のことが大好きだ。
でもカーライルは過去に一つだけミスを犯したことがある。
それはノアとかいう「雑魚」を仲間にしたことだ。私は初めからノアの事が好きではなかった。
ノアが弱かったからだ。
僕とカーライル、そしてフレッドとアイナの仲間としてふさわしくないと思った。
だから僕は王様にノアを殺すように言われたときは嬉しかった。あぁやっとあの雑魚とおさらばできるんだって思った。
僕がノアの身ぐるみを剝ごうって言った時のノアの顔ったら笑いが出てきて仕方なかった。まるで雨の中に捨てられたイヌのような情けない顔だった。
僕はそうはなりたくない。あんなみじめなことは嫌だ。僕は冒険者としてカーライルと一緒に伝説になるんだ。
そんな僕の妄想は途切れてしまった。僕の部屋に何者かがいる気配があったからだ。
「誰だ!」
僕が振り向くとそこにはニヤニヤと笑う男がいた。
それはノアだった。
◆◆◆◆◆
俺とソフィアはクレアの泊まっている宿屋の屋上から窓枠を伝い、クレアの部屋を覗き込んだ。
≪飛空≫スキルを持つ俺と≪浮遊魔法≫を持つソフィアにとってこっそり近づくなど造作もないことだ。
「何あいつ、鼻歌を歌っているんだ。お前が何をしたのか分かってないのか!」
「ノア、ステイ」
ソフィアが俺のことをいさめる。そうだ。そうだ。ここでことを荒立ててカーライルとかが来たら不味い。
今の俺たちなら全員相手でもなんとかなるかもしれないが、それじゃ意味がない。
じわじわと仲間がいなくなる恐怖に陥れてやる。
初めはクレアだ。そしてフレッド、アイナ。
カーライルは最後のディナーにしてくれる。
俺は舌なめずりをした。今から楽しみだ。
きっと今の俺の顔は悪魔が宿っているだろう。
「俺がけりを付けて来る。悪いが外で待っていてくれ。」
「分かったわ。」
ソフィアがうなづいた。
「≪擬態≫!」
俺の体がスライム状になり、窓の隙間から鍵を開けて、クレアの部屋の中に入っていく。
俺は窓枠に座り、ニヤニヤしながら鼻歌を歌っているクレアを見る。
間抜けな奴だ。いまだに俺が部屋に入ったことに気が付かないとはな、、、。
「誰だ!」
クレアがこっちを見る。まるで侵入者に瞬時に気が付いたかのように振舞っているが、俺にはアホにしか見えん。
「ノアか、、、?なんで生きている?」
クレアは亡霊を見るかのように聞いてくる。
「死ぬ思いをしたが、なんとかな。」
コイツ、それじゃないだろ、、、俺がどんな思いで【カースドラゴン】と戦ったと思っているんだ、、、!
「何か釈明はあるか?」
俺は甘い男なのかもしれない。おれは完全に裏切られたのに、クレアは最後に身ぐるみを剝いできたのに、、、まだ嘘だと信じたいのかもしれない。
「うーん、私たち自らの手で殺しておけばよかったのにってことかな。」
殺す!
その瞬間、俺の中に眠っている憎悪が俺の体を動かした!
「≪シャイニングアロー≫!」
クレアが自身の弓を手に取り、≪魔法矢≫スキルを放ってきた。
「≪擬態≫!」
ドン!ジュワ!!
俺のスライム状の体を通り抜けた。矢が宿の壁にぶつかり、光属性の攻撃で壁を溶かした!
何て威力だ!やはり一撃当たりの威力は圧倒的だ!もしかしたらカーライルの一閃よりも上かもしれない。
だが、、、クレアは連射は出来ない。
「うおおお!≪擬態≫!」
俺の腕が【鬼人】のものとなる。俺はクレアの体をつかんだ!
そして俺はぶん投げた!
ドシャーンと音を立てて、クレアの体が放り出された。
ゴロゴロと転がりながらクレアは体勢を立て直した。
「ふっ、墓所を抜けただけあって、いままで通りじゃないようね。でもあなたに勝ち目はないわ。あなたを縛ってみんなの前でさらし者にしてあげるわ!」
クレアが俺から距離を取るように逃げ出す。あいつは≪俊足≫スキルLv5を持っている。距離をとってヒットアンドアウェイで戦うつもりなのだろう。
だが甘い!俺の≪俊足≫スキルはLv6に達している。あいつらに裏切られたころの俺では追いつかなかっただろうがこの数日の地獄のような経験が俺を強くしたんだ!
「なっ!引き離せない!仕方ないわね。≪インビンシブルアロー≫!」
後ろを振り返ったクレアが不可視の矢を放ってきた。だが、今の俺には見える。
≪魔力眼≫!
俺の目が赤くなり、矢の形が見える。
俺は矢を避けた!
「馬鹿な!なぜ見える!」
クレアが焦っているようだが、ネタバラシをしてやる義理はない。
「さぁななんでだろうな?たまたまじゃないか」
「ふざけるな!お前のような軟弱者に僕の弓術が見切られて堪まるものか!
僕をコケにしやがって!!!許せない。捕まえるのはもうやめだ!」
「王宮弓術奥義!≪増幅する矢・ヒュドラ≫!」
クレアの持っている弓矢が紫色に光る。
そしてクレアが引き絞った矢が飛んでくる。それは俺の体の前で5本に増えた。
普通の人間ならば体中に風穴があくだろう!
「この矢はかすっただけで相手を殺す、絶命の魔法が込められているわ。」
フフフフとクレアの笑い声が道路にこだまする。
だが、、、、
「甘い!≪擬態≫!」
俺の足と腕が【鬼人】のものとなる。
「≪身体能力操作≫!」
周囲の時間がゆっくりになったように感じる。
否。
俺の体が素早く動いているのだ。このスキルは【鬼人】が他の生物を圧倒する身体能力をもつ秘密となっているスキルだ。
シュン!シュン!
俺は1本目と2本目の矢をよける。
ザン!ザン!
腰の小刀を抜き、俺の右手が3本目と4本目を切り抜いた。
ギュン!
最期の一本は俺の左手が捕まえた。
「嘘、、、人間業じゃない、、、馬鹿な、、、」
クレアが腰を抜かしてしまっている。俺はニヤニヤと笑って、クレアに近づいていった。
コンコンコン。俺の足音だけが道に音を響かせる。
「人間業じゃない?確かに今の俺は復讐の鬼だ。お前にはその鬼を生んだ責任をとってもらうぞ。
さんざん矢を放ってきたが、そろそろ俺の番でいいかな?」
パキリ
俺は左手で持っている矢を折った。
「ひいいいいいい、、、いや、、、僕の弓が、、、」
クレアの心は矢と同じく折れたようだ。
彼女は勝てないことを彼我の差を理解したようだ。
「助けて、、、許して、、、、」
腰を抜かし、手で体をかばうようにして懇願してくる。随分と間抜けな姿だが、俺の憎しみは消えない。
「頼み方、それでいいの?」
「ごめんなさい。ごめんなさい。僕が悪かったです。これからあなたの汚名をそそぐのにも全力を尽くします。だから、、、、」
クレアは土下座してきた。彼女の銀髪が地面について土で汚れる。
美人であるが見苦しい。
「それじゃクレア、答えを上げよう。≪擬態≫!」
クレアが顔を上げる。彼女が見たのはノアの口許で揺らめく、黒い塊だった。
「≪カースブレス≫!」
「きゃあああああああああああああああ!」
クレアの悲鳴が夜の王都にこだまする。
ブレスがクレアの体に迫り、そこで彼女は意識を失った。
「じゃあな、クレアその炎の外傷は大したことがないが、それでもお前は体が燃えるように感じるだろう。心臓は締め付けられ、自殺を考えるほどになるだろう。」
コツコツコツと足音が王都にこだました。
その音は復讐者となった冒険者の存在を静かに、だがその異様な存在感を感じさせるものだった。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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