勝者の傲慢と敗北の足音
こんばんは、相井らんです。
ブックマークと評価が着実に増えております。今後とも励みますのでどうぞ応援よろしくお願いします。
さて今回の話ですが、はじめはカーライル視点で始まり、その後ノアの視点に移ります。ダンジョンを
抜けたノアはどれほど強くなったのか?そんなことを書きました。
次の話でついにS級冒険者を狩り始めます。
最後まで読んでいただけると幸いです。
俺、カーライルは王の前にひざまずいている。右には【弓聖】クレアが、左には【聖騎士】フレッドと【賢者】アイナがいる。
俺は声を張り上げる。
「コルネア王、無事ノアを墓所の最深部に残して来ました!」
俺の報告に対してコルネア王は鷹揚にうなづいて
「ああ、ご苦労だった。あのダンジョンは強力な魔物がいるからな。もはやノアが出ることはできないだろうな、ガハハハッ!」
俺は王様の命令の通りあの無能を殺したが、なぜそれをさせたのか聞いた。
「王よ、私たちとしましても長く旅をしてきましたが、ノアは役立たたずでした。確かに索敵能力があり、低級の魔物を使役することが出来ましたが、なんの役にも立ちません。何故あのような小物を私たちに殺させたのですか?」
「そなたらに言ったように、あいつの【魔物使い】の能力は我が人類の仇敵の魔族の力に近いのだ。我が王家の言い伝えには【魔物使い】や【死霊術師】といった他者を使役する能力者は王国に災いをもたらすものであるとあるのだ。あやつらの力が成長すると一国の軍隊に匹敵する勢力を単騎で作ることも可能だからだ。」
そんな風に語ったが、やはり、コルネア王はあいつの力を過剰に評価しているようだ。実際のあいつは腕力も魔力も凡百な冒険者でしかなかったからな。
「ではなぜ私たちを墓所と呼ばれるダンジョン内部にノアを残すように言ったのですか?」
「街中でS級冒険者が急にいなくなると怪しまれるだろう。その点ダンジョン内で死ねば死体も残らず、他の者もおかしくは感じないだろう。さらに墓所は抜け出すことの出来ぬダンジョンなのだ。昔私も権力争いをしていた小娘を幽閉したのだ。あそこは古くから公に殺すことが出来ないものを殺すのに用いられている場所なのだ。」
「コルネア王、教えてくださりありがとうございます。」
俺は深々と頭を下げた。横目で見るとひとりの従者が横の部屋から何か布にくるまれたものを持ってきている。
「【勇者】カーライル、ならびにその仲間【弓聖】クレア、【聖騎士】フレッド、【賢者】アイナよ。そなたらにS級冒険者として初めの仕事を達成した褒美を取らせる。まずはカーライル。」
「はっ!」
王に呼ばれた俺は前に行き、王のすぐ前に行き膝まずく。
「おぬしには王国に伝わる聖剣マールを与えよう。この剣は1日に一度、神の一撃に等しいと称される攻撃を放つことが出来る。今後その剣とともに王国の発展のために貢献してくれ」
俺は聖剣を受け取り、口上を述べた。
「他の者には後日、同等の王国の秘宝を与える。今日のところは以上だ。下がれ。」
俺達は退室した。
◆◆◆◆◆
俺達は城を出た後下町に行き酒場にいた。
「見ろよ!お前らこの聖剣の輝きを!今まで使っていた剣も業物だったが、これはその比じゃないぞ。この剣があれば特級モンスターでも一人で狩れそうだ。」
俺がコルネア王からもらった剣を掲げて自慢した。
「流石です!カーライル!あなたの剣はもはや他の誰もが追いつけるものではありません!」
横に座っているクレアが喜色満面で俺のことを誉めて来る。
俺達とは別にフレッドとアイナの話が盛り上がっている。
「あーあいいなぁ。俺達も早く褒美の品が欲しいぜ。」
「ねぇ~フレッドならどんな武器だって使いこなせるよ。もしかすると≪聖魔法≫の威力を高めてくれる魔石かもしれないわよ。」
「アイナはどんなのが欲しいんだ?」
「うーん。わたしは各種防御性能が高い聖衣か、魔法の杖がいいなぁ。それでフレッドをサポートするの。」
こいつらもどんな褒美がもらえるかわくわくしているようだった。
このカップル本当に仲いいよな。まぁ仲良くしてくれるのはありがたいからな。
俺達のS級冒険者としての滑り出しは最高だ。これも全部あいつのおかげだ。
「なぁみんな!正直ノアを捨てて正解だっただろ!あいつ1人がいなくなったおかげで俺たちは王からの信頼と伝説級の装備を身にまとうS級冒険者になれたんだからな!」
「はははは!本当にその通りだな!あいついても戦力にならなかったからな!」
「本当よ、フフフ」
フレッドとアイナも笑顔で同意する。
「僕もあいつをスカウトして仲間にしたときのことを後悔してましたからね。」
「おぉいうなぁクレアは!」
この女、結構良い身分出身のお嬢様のくせに口が悪いな。まぁ好きな口の悪さなんだがな。
ドッとフレッドが笑い、アイナが「もう可哀そうよ。」とにやけている。
あぁ本当にいい気分だ。
◆◆◆◆◆
同時刻、ノアとソフィアはついにダンジョンの外についた。
「フーやっと出れたぁ。もう丸2日もかかったぞ。」
「本当ね。魔物も強いのが多かったから仕方ないわ。」
「なんであんなに強力な魔物ばかりに合うんだよ。俺の≪探知≫スキルでも近くに行かないと分からなかったからな。」
俺は愚痴を言ったが思わぬ返答が来た。
「ああ、それわざとよ。普通あんなのと早々合うわけないじゃない。現にあなたたちのパーティーは無事最下層まで特級モンスターに会うわずに降りてこれたんだし。」
「ナニイッテンノ?」
しまったカタコトになってしまった。
「あなたの≪擬態≫スキルって強力な魔物に合うと強くなっていくでしょ。だからあなたの力を底上げするためにダンジョン内に放たれた番人を倒して回ったの。」
「ふざけんな!」
相変わらずふざけた少女だ。中身はババアだがな!
「あら、実際強くなれたからよかったじゃない。それに本当に勝てない相手は私の≪予知≫スキルで分かるから避けるわよ。」
確かにやばい状況にはならなかったが、コイツそんなこともしていたのかよ、、、
「あぁそうなんだ、、、、」
おれは力が抜けた。
「あなた今どのくらい強いのよ?」
ソフィアが聞いてきたので俺はステータスウィンドウを開けた。
「神よ我が力を見せよ!ステータスウィンドウオープン!」
「何度聞いてもダサい呪文ね。」
「うっさい」
そんな応酬をしながらステータスウィンドウを見る。
ノア
Lv:78
職業 :【魔物使い】
スキル:テイム Lv7
擬態 Lv7
サバイバル Lv6
俊足 Lv6
探知 Lv6
正直、ここでは俺がどの程度強くなったのかわかりにくいので≪擬態≫スキルの詳細を見た。
擬態Lv7→直接倒したことのない敵でも今までに見たものならば擬態できる。またスキルも行使できる。
スキル:カースブレス、飛行、魔力眼、攻撃魔法、死霊魔法、創造魔法、浮遊魔法、魔力制御、予知、剣術、
剛力、身体能力操作、超回復、分裂、痛覚無効
改めてみると強くなったな。ソフィア由来のスキルが多い気がするが、、、巨大なスライムを擬態して手に入れた超回復、分裂、痛覚無効はいざというときに役立つと思う。
実際手に入れたスキルでももともとの所有者の方がうまく使えたり、身体能力や武器の差によって思わぬダメージを食らう可能性もある。
いくら相手と同等のスキルを≪擬態≫で使えてもこのあたりを注意して戦う必要があるな。
俺のスキルを確認したソフィアは一歩下がった。
「ふーん、なかなか強くなったわね。あとダンジョン内の貴重なアイテムも回収できたからよかったでしょ。流石の私も物言わぬアイテムの場所はわからないからあなたの≪探知≫スキルに頼らせてもらったけど、、、」
「まぁそうだが」
そう言って俺は手に入れたアイテムを見る。俺はカーライル達に身ぐるみを剝がされてナイフしかもっていなかったが、今の俺の腰には中身がもともとのものより大きいマジックポーチと業物のナイフがあり、視認性低下の付与魔法のついた黒いコートを着ている。
「あなたが今身に着けているアイテムは20年くらい前にダンジョンに侵入した盗賊が身に着けていたものよ。その人は【鬼人】に殺されたけどね。」
「怖いこと言うなよ。」
俺は軽口をたたく、あの絶望からやっとここまで来た。
これからは俺があいつらを狩る番だ。待っていろよ。カーライル、クレア、フレッド、アイナ、、、、!
「それじゃ行こうか」
俺たちは王都への一歩を踏み出した。
「何悠長なことしてんの?空飛ぶわよ。」
俺の一歩目は踏み出せなかったようだ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ブックマークと評価をよろしくお願いします。