己を知ることVS鬼人
こんばんは、相井らんです。
今回は主人公が自らの戦いの中で考え、強くなる様を描きました。最後まで読んでいただけると幸いです。
ソフィアと俺が上を目指してダンジョンを上っていると目の前に何か見える、、、、あれは【鬼人】だ。
「ノア、見えてる?あれは【鬼人】よね。確か結構強い魔物のはず、、、」
【鬼人】、、、見かけは角が額に生えただけの人間だが、その腰の刀の速さは音速を超えるという。
「ああ、【鬼人】は小型の魔物の中では最強クラスの力を持っているはずだ。奴の膂力は一般的な人間をはるかに超えている。多分、A級冒険者パーティーなら勝てないだろうな。」
【鬼人】は逆に言うと俺の力がどの程度なのか調べるのにちょうどいい相手になるはずだ。
もともと前衛じゃない俺が【勇者】カーライルと戦いをシミュレーションするいい練習相手になるだろう。
「進化したスキルの力を試してみたい。とりあえず、一人で戦ってみるよ。俺がやられそうだったら助けてくれないか?」
「分かったわ。」
そう言ってソフィアは半歩下がった。
【鬼人】も俺たちに気が付いたようだ。ゆっくりと一歩ずつ近づいて来る。
俺はナイフを構えて奴の様子を伺い、スキルを発動した。
「≪擬態≫!」
俺の背中からはカースドラゴンの羽が生えてくる。そして俺の目はソフィアの赤い目となり、その瞬間【鬼人】が放つ魔力が俺の目を刺激した。
うっ!俺が顔をしかめた次の瞬間!
【鬼人】の魔力が爆発的に上昇した!そして一歩で俺のまえまで踏み込みその腰に差してある刀を抜刀し、俺の胸元に放ってきた。
「ガアアア!!!」
【鬼人】の雄たけびとともに刀が近づいて来る。
バンッ!!俺は背中の羽で空気をたたきバックする。俺は奴の威力を抑えることで何とかナイフで奴の刀を抑えようとする。
「うっ!」
何て威力だ。俺はうめき声を漏らした。だが全力の踏み込みで刀を振るった【鬼人】は次の一撃を放つまでに数舜の時間が必要だ。
好機!
「≪擬態≫!」
グンッ!俺の両腕が【鬼人】の太く、まがまがしい腕になる。
よし、これで力の差が埋められたはずだ。
俺の変貌に警戒したのか【鬼人】はすぐに2撃目を放たず、様子を見て来る。
「ふう≪擬態≫が見たものをコピーできるようになってなかったらやばかったな。」
そんなことを言いながら改めて鬼人を見る。でかい。2m50位あるんじゃないだろうか。これリーチの差で不利なんじゃ、、、、
そんなことを考えていると再び【鬼人】の魔力が高まる。
ズン!
右袈裟切り!これを俺は体を半身にして避ける!そして次の跳ね上げるような一撃をナイフで受ける!
ふっと俺の体が浮く。腕力が同じでも体重は違うのだ!
ニヤリと【鬼人】が笑った。
【鬼人】の刀が俺の首を狙って放たれる!
【鬼人】は自分の勝利を確信しているようだ。だが、今度は俺の番だ!!俺はニヤリと笑った。
「甘い!!」
ブン!俺はわずかに羽を震わし、浮いている体を沈め地面すれすれまで近づけた。
俺の頭の上を刀が通り過ぎる。俺は地面を蹴った。
「おおおおおお!!」
グサッ!俺のナイフが【鬼人】の胸元に根元まで沈み込んでいる。
「ガァ!?」
【鬼人】は地に付した。俺の勝利だ。
「やったじゃない、ノア!」
「ああ、ありがとうソフィア」
俺はソフィアに礼を言いながら、今の戦いについて考える。
やはりそうか、基本的に≪擬態≫スキルで能力が同等でもそれ以外の要素、体重や剣技によって実力差が出てしまうな。これは今後の課題だな、、、。
だが、羽を利用した空中での体勢移動と魔力眼を通した相手の行動予想は役に立つな。
普通の人にできない体勢移動は相手の不意を突けるし、鬼人が攻撃を放つ直前には魔力が爆発が見えた。
「あなた、すごく強いのね。思っていた以上だったわ。正直人間は個の力では他の魔物や魔族に劣るもの、もっと苦戦すると思っていた。」
俺が戦い方の運びについて考えているとソフィアが声をかけてきた。確かに人って種の限界値って低いんだよな。
「ああ、確かにな。でもソフィアには苦戦していないように見えたかもしれないけど、結構怖かったんだぜ。
でも今回の戦闘で分かったことは大きかったよ。」
「ん?」
ソフィアが首をかしげる。
「【カースドラゴン】の羽を使った不規則移動、ソフィアの目による行動予測、そして【鬼人】の身体能力を使えば、人の限界を超える戦闘能力が得られるってことだ。」
そういう俺の言葉にソフィアも同意する。
「確かにそうね。私も数十年生きてきたけどあなたみたいな戦い方する人を見たことがないわ。」
「おっ、ソフィアに褒められるとうれしいよ。ありがとう。ところで話しは変わるんだけど、、、、」
俺は少し疑問に思ったことを聞いてみた。
「何よ?」
「なんでここって【カースドラゴン】とか【鬼人】とか特級モンスター級の魔物がこんなにいるんだ?これ普通のダンジョンだったらボス級のモンスターだぞ」
「ああ、それは私と関係あるのよ。ここって未踏破ダンジョンだと思っているかもしれないけど元々はそうじゃないの。」
「えっそうなのか」
俺は仲間たちと未踏破ダンジョンを攻略したと思って喜んだことを思い出した。あれも随分と前のことのように感じるな。、、、ってそんなことを考えている場合じゃない今はソフィアの話だ。
「ここは政争に王位継承争いに負けた王族の|流刑地≪るけいち≫だったのよ。それで王族がダンジョンを抜け出して国内で争いが再発しないように門番を置いたの。それが【カースドラゴン】とか【鬼人】なのよ。普通あんなのとタイマンして勝てる人っていないからね。」
「いや、そんな強い魔物を従えられるなら、うちの国にも俺以外の【魔物使い】がいるはずだろう?しかもめちゃくちゃ強力な【魔物使い】が、、、」
「当然王国にそんな力はないわ。あの魔物は卵の頃や子供のころに捕まえらえてここに置かれたのよ。きっとコルネアはせっかく捕まえた強力な魔物を殺すのは嫌で、有効活用しようとしたのね。」
俺はソフィアの説明を聞いて腑に落ちた。魔物を幼いころからさらって成長した後に監視員として使うとはあのコルネア王なかなかあくどいこと考えるな。
そこで俺は一つの可能性に気が付いた。もしかしてコルネア王は俺が生きているのでは困るのではないのか?
俺が成長して強力な魔物を従えて自分に攻撃を仕掛けてくると思ったのではないか?
俺を窮地に追い込んだ黒幕ではないのか?
、、、確かめなくては。ソフィアからコルネア王の黒い過去を聞き俺の中に疑惑が生まれた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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